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パウロとフィレモンとオネシモ

パウロとフィレモンとオネシモ(11)「オネシモの以前と今」(3)―パウロがオネシモに見ていたもの― 臼田宣弘

2020年3月5日17時05分 執筆者 : 臼田宣弘
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関連タグ:フィレモンへの手紙臼田宣弘

前回までにお示ししてきましたが、フィレモン書の内容に関して、私は「オネシモ非逃亡奴隷説」に立っています。私がこの説に立つようになったのは、新約学者・田川健三氏による訳著『新約聖書 訳と注4』の中の「フィレモンへ」を読んだことが発端です。そこの序論には以下のように記されています。

古い重要な写本は単に「フィレモンへ」。ただしB(ヴァチカン写本)は残念ながらフィレモン書の部分が失われているから、わからない。やや後のものでは「フィレモンへ。ローマから書かれた」。ずっと後の大多数の写本では「フィレモンへ。ローマから奴隷オネーシモスによって書かれた」、ほか。一つだけ、十四世紀の小文字写1881番が「奴隷オネーシモス」ではなく、「逃亡奴隷オネーシモス」としている。オネーシモスを逃亡奴隷扱いする間違った解説がついに写本の中にまで入り込んだ例。ただしたった一つの写本だけ。

田川氏はこのように書いておられ、やはり逃亡奴隷説には否定的です。私は、田川氏がフィレモン書について論じていることすべてには同意できませんが、この部分については納得しています。おそらく、聖書以外にあった奴隷逃亡の話を基にしてできた、古い時代の「逃亡奴隷オネシモ説」が、田川氏の言われるように、一つの写本のタイトルにまで入り込むほどに、後代にまで伝わっていったというようなところが、「逃亡奴隷オネシモ説」の真相ではないかと考えています。

さて、「オネシモは逃亡奴隷だったのか」ということをも考えてきた、集中構造の「FとF´」(オネシモの過去と今)のテキストの考察の最終です。

F 10 監禁中にもうけたわたしの子オネシモのことで、頼みがあるのです。11 彼は、以前はあなたにとって役に立たない者でしたが、今は、あなたにもわたしにも役立つ者となっています。

F´ 18 彼があなたに何か損害を与えたり、負債を負ったりしていたら、それはわたしの借りにしておいてください。19a わたしパウロが自筆で書いています。わたしが自分で支払いましょう。

5. オネシモは結局どういう存在であったか

今回は集中構造分析の後半であるF´の部分を中心に見てみたいと思います。「彼があなたに何か損害を与えたり(していたら)」とあります。「損害を与える」は一般的には不正による損害のことを指します。「していたら」は、「エイ デ / εἰ δέ」という用法が使われています。仮定文の用法です。この部分は「オネシモがフィレモンから盗みを働いた」という説の根拠とされる箇所です。しかし、本当に盗みを働いていたならば、「エイ デ / εἰ δέ」という仮定文では書かないでしょう。「彼が与えている損害は、わたしの借りにしておいてください」となるはずなのです。

ただ私は、「オネシモがフィレモンに損害を与えていなかった」と断言することまではできません。なぜかというならば、「フィレモン書に書かれていることは基本的には成就している」と考えてもいるからです。この書が聖書に残されたのは、手紙の内容が成就しているからではないでしょうか。もしもパウロがフィレモン宛ての手紙に書いたことが100パーセント成就しているならば、「わたしパウロが自筆で書いています。わたしが自分で支払いましょう」とも書いているのですから、この損害についてフィレモンに支払いをしていると考えられるとも思うからです。本コラムの第9回でお伝えしましたように、「オネシモは主人との間に、おそらく何らかの問題が生じた奴隷で、パウロに仲裁を依頼した」という、ゲルト・タイセン説やチャールズ・B・カウザー説を私が捨てられない理由もそこにあります。いずれにしても「逃亡奴隷」は考え難いと思います。

仮定文のもう一つの、「負債を負ったりしていたら」は何でしょうか。主人フィレモンに何か借りがあったとしたらということでしょうか。あるいは、フィレモンに対する両親の負債をオネシモが負っていたということも考えられます。いずれにしても、「損害を与えたり」よりはさらに、オネシモ自身の負の問題ではないと思います。そしてこれも、「していたら」という仮定文であるのです。ですから18節から、「オネシモは悪者であった」と断定するような考察はできません。

しかし、「オネシモが主人フィレモンに対して負を持っていたのか」という問いは、私にとって、フィレモン書において最も答えの遠い問いであり、これからも考えていかねばならない問いではあります。ただ、オネシモが過去にフィレモンに対して何を負っていたにしても、パウロに「わたしパウロが自筆で書いています。わたしが自分で支払いましょう」と言わしめたほどに、パウロに気に入られる者となったということはいえるでしょう。それは、オネシモが「宣教者パウロ」をそうさせるほどの存在であったということであり、今や、オネシモもまた宣教者へと立たされることを予感させるものです。

さて、オネシモという奴隷は結局どういう存在であったのでしょうか。私の考えていることを箇条書きにしてみます。

① 逃亡奴隷ではなかった。
② 家の教会所属の奴隷であったことから、洗礼は受けていたであろう。
③ パウロに目を留められるほどの教養ある人物であった。「オネシモ」は「有用な者」の意。
④ パウロの元で信仰的に大きな変革がなされた。
⑤ 負があっても、パウロがそれを払うと言うほどに、オネシモを必要とする状況が生じていた。

このようなところではないかと思います。私は、フィレモン書を読んだ最初の頃は、この書のオネシモと、後代の偉大なエフェソの監督オネシモが結び付きませんでした。それは別人であろうと思わされていました。しかし、今は両者がしっかり結び付いています。10節の「監禁中にもうけたわたしの子オネシモ」とは、パウロがオネシモの将来に、宣教者であるパウロ自身の姿を見ていたが故の言葉であるといえるのではないでしょうか。(続く)

※ フェイスブック・グループ【「パウロとフィレモンとオネシモ」を読む】を作成しました。フェイスブックをご利用の方は、ぜひご参加ください。

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◇

臼田宣弘

臼田宣弘

(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:フィレモンへの手紙臼田宣弘
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