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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(14)世界を結ぶ言葉

2018年10月17日11時02分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

そのようなわけで、ヘボンは辞書を日本で印刷することをほとんど諦めていた。そんな時、ブラウンが1人でコツコツまとめていた『会話ノート』が、彼を尊敬する商人W・ケズィックの出費でもって1冊の本にまとまった。ブラウンは、その原稿を上海の印刷所に送ってみたところ、実に美しい本になって戻ってきた。

「ヘボンさん、あなたの作った辞書を上海で印刷してみたらどうでしょう?」。ブラウンは、こう勧めた。「上海の印刷所は技術的に進んでいます。英公使オルコックも、日本研究の本をあそこで出したとか。宣教師のフルベッキも上海の印刷所をよく訪ねるそうです。あそこの技術は大したものだと言っていました」

ヘボンの決意は固まった。彼がクララに相談すると、彼女も随行してくれることになった。ヘボンは自分たち夫婦の上海出張を本国の伝道本部に届けた後に出航の準備に取りかかった。

バラ夫妻は留守中のことをすべて引き受けてくれ、またブラウンやタムソンも聖書翻訳の仕事を自分たちで進めておくと言うのだった。こうして1866(慶応2)年10月18日、ヘボン夫妻は岸田吟香を伴って横浜を出航した。

上海に着くと、長老教会の印刷所「美華書院」があり、そこの技術がかなり優れていることをかねてから聞いていたので、ヘボンと吟香は連日通いつめた。主幹のアメリカ人、ウィリアム・カンブルは、親切に何かと世話してくれた。

彼は吟香に5ミリ角の日本文字を書かせ、これを基に木で母型を作り、鉛活字を鋳造した。「先生、わが国の文字が初めて鉛の活字になるんですね」。吟香はうれしそうに言った。

カンブルは、優秀な技術者だった。彼は漢字、ひらがな、カタカナの活字を次々と作って見せた。ヘボンが、「英文の中でも大文字の上にアクセント記号をつけてほしい」と注文すると、彼は苦労しながらあれこれ試していたが、作ることができた。こうして1カ月以上かかったが、注文の活字がそろった。

次に、これらの活字を組み合わせ、ローマ字、漢字、カナ、英語の順に並べていく。中国人の植字工は、日本語漢字と共にひらがなを対応させるのに音を上げた。5人がかりで1日1ページ。彼らはカナを知らないものだから、「ン」と「ソ」を混同し、別の所にくっついたりしている語もあった。

やっと出来た校正刷りを見ると、間違いだらけ。行間も不ぞろいだった。こうして、やっとAの項が出来上がったとき、ヘボンは気苦労と過労のために倒れてしまった。そして、赤痢と熱病を同時に患うことになった。

1866(慶応2)年10月20日のこと。日本で留守を守っている息子のサムエルが、横浜の大火を知らせてきた。火元は末広町の肉屋で、ウォルシ・ホール商会も全焼。日本人町大半と外人寄留地の4分の1が灰になってしまった。「横浜アカデミー」も焼失した。

バラ夫妻は家財の一切をなくした。ヘボン家では、サムエルが父の原稿と書物を持って避難した。

1867(慶応3)年に、ついにヘボンの辞書『和英語林集成』は完成した。これは厚さが5センチ、700ページにも及ぶ立派なものだった。製本が終わり次第、日本に送ってもらうように頼み、ヘボン自身は取りあえず、数冊持って帰ることにした。

日本で版木だけ彫ってもらって上海に持参した彼の著書『真理易知』も刷り上がったが、美しい出来栄えだった。こうして、ヘボン夫妻と吟香は5月17日上海をあとにした。

『和英語林集成』は、ヘボンがまだ上海にいる間からすでに日本国内で評判になっていた。タムソンと同じ頃来日したチャプレン・ベーリーは『万国新聞』の中で大きく報道。またある評論家は、「2つの世界が結びつくのを目前に見る気がする」と言って彼のわざを称賛したという。

この辞典のページを開いた人は、そこに並ぶ採録語の多様さにまず驚かされる。見出しはローマ字で掲げ、カタカナと漢字を並べ、用語には活用を簡単に示し、品詞を記している。また、語の意味をやさしい英語で説明し、引用例まで示しているのである。

ヘボンは採録した単語の大部分で、人々との日常的な会話に用いられる語を使った。そうすることで、この辞典が日本人の普通の言葉であることを示したのである。

ヘボンは日本人の生活をつぶさに知ることでこの言葉の最も深い意味を捉え、それをこの上なく美しく表現したのである。これはすでに辞書の領域を越え、万人の心と心を結ぶ贈り物であった。

*

<あとがき>

もしヘボンが日本人であったとしたら――それでも「和英辞典」を作ることは大変なわざであったと思います。彼はアメリカ人で、しかも人生の大半を日本で送るうち、ほとんど片言でしか会話ができませんでした。

そんな彼が、日本人もできないような偉業を成し遂げたのです。彼は何よりも日本人を愛し、日本が鎖国から抜け出し、国際国家となれるよう手助けしたいと願っていました。そして、彼らが人生の基盤を聖書に置き、豊かで幸せな人生が送れるように、折に触れては福音を語りました。

彼の「和英辞典」の母体となったのは、日常生活において人々と交わした会話を書きつけた手帳(単語帳)でした。このコミュニケーションから、驚くべきわざが生まれたのです。

日本人は初めて辞書を持つことによって、外国の優れた文学や思想に触れることができ、世界に向けて視野を広げることができたのです。実にコミュニケーションは愛そのものであります。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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