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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(15)近代の足音

2018年11月7日20時33分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

ヘボンが上海に行っている間に世の中は大きく変わっていた。英公使パークスは親日家で、阿波藩主蜂須賀斉裕に招かれて徳島に行ったり、江戸行きを計画して秘書官アーネスト・サトウを山内豊信に会わせたりして友好ムードを盛り上げた。彼はヘボンの『和英語林集成』の出版をことのほか喜び、彼の日本語研究と診療のためとして100ドルを寄付してくれた。

ヘボンの友人である宣教師フルベッキは、来日以来長崎に居を定め、多くの若者たちを教えていたが、佐賀藩の「致造館」で教えた大隈重信、副島種臣らは国際人として育ちつつあった。また海外の事情を知るために西郷隆盛、高杉晋作、坂本龍馬、木戸孝允らもフルベッキのもとを訪れて教えを乞い、アーネスト・サトウと意気投合した奉行所の役人伊藤俊輔、井上聞多らもしきりに話を聞きに来た。そのうちに「幕府が倒れる日も近い」といううわさがヘボンの耳に入ってくるようになった。

一方では、社会の変動とともに人心も不安定になり、物価高――特に米の値段が高騰していることから、各地で不穏な事件が起きた。江戸では一揆や「打ちこわし」が後を絶たず、そんな中から「新選組」や「見廻り組」といった武士の徒党が現れ、各地で流血沙汰が起きた。ヘボンはこのように日本社会に変革が近づく気配を肌で感じながら、友人や知人に『和英語林集成』を配った。これは日本人に対する友好の証しであった。

そうは言っても、国内での辞典の売れ行きは良くなかった。時期が悪いのと、価格が高いことが売れ行きを妨げた。イギリス製の用紙だけでも2千ドル、出版費は1万ドルかかっており、回収が難しかった。

出資してくれたウォルシ・ホールは商会が横浜大火で全焼しており、苦しい生活を強いられていた。クララは夫に黙っていたが、ヘボン家の金庫は空っぽで、生活はどん底に陥っていた。(どうすればいいのか?日本人のために、そして日本を知ろうとする外国人のために――彼らを結ぶためにこの和英辞典を作ったのに)。ヘボンは頭を抱えた。

そんな時、突然奇跡が起きた。一人の武士がヘボン家を訪れ、辞典を30冊まとめて買っていったのである。藩主は名乗らなかったが、遠国の大名と言っていた。不思議なことに、それ以来各地の藩主たちが競って辞典を買い求めるようになり、たちまち『和英語林集成』は売り切れてしまった。そして、2版、3版と版を重ねた。ようやくヘボンはウォルシ・ホールに、立て替えてもらった金と謝礼を含む1万5千ドルを返すことができたのだった。

第3版の時、日本語の平易化を唱えて「ローマ字会」を作っている人たちの要望でローマ字方式が取り入れられることになり、この版は「ヘボン式ローマ字」という名で日本人に親しまれるようになったのである。

ヘボンはその一方で、帰国してからも診療所の働きを再開。訪れる患者を、心を込めて診療、治療した。彼が帰国してから4カ月後の9月のある日のことである。人気役者として多くの人に親しまれている沢村田之助が芝居小屋の女将に付き添われて診療所を訪れた。彼は脱疽(だっそ)を患っていた。

「ダイジョウブデスヨ。切ラナクテハナラナイケド、別ノ足ヲツケテアゲマス」。ヘボンは彼を励まして、すぐに手術の準備を始めた。そして、麻酔をかけてから、右脚を股の付け根から切断し、ニューヨークから取り寄せた義足をつけた。

田之助は退院すると、義足をつけたままで再び舞台に出られるようになった。「ヘボン先生、ありがとうございました。芝居は私の命でございます。これでまたお客様に芸を見ていただけます」

彼は涙をこぼして喜んだ。その後再び脱疽が進み、両手両足を切らなくてはならなくなったが、彼はずっとヘボンを尊敬し、「神の医者」だと言っていたという。「ああいう神様みたいな方が来てくださったからには、日本の将来は明るいですよ」。芝居小屋の女将もこう言っていたという。

一方、幕府はこの頃瀕死の状態に陥っていた。命尽きようとする中にあって、開成所を基礎とした大規模な官立大学を建てようと努力していたのである。幕府は外国人教師を数多く雇い入れたいとの案を英公使パークスに申し入れ、そのための大金を用意していた。

しかしながら、翌年1868(慶応4)年になると、将軍徳川慶喜は山内豊信の勧めを受け入れ、朝廷宛てに政治一切を奉還したい旨を上奏。まだ少年である天皇の後に岩倉具視らが控えていてこれを受けた。これは「大政奉還」と呼ばれ、幕府は自らの手で300年にわたる権力に終止符を打ったのである。

かくして、1868年3月に天皇による五箇条の御誓文が読み上げられ、時代は明治となった。日本の夜明けである。

*

<あとがき>

世の中は近代に向かって少しずつ変化を見せていました。それにはヘボンの作った『和英語林集成』の影響も大きな力となっていたためでしょう。しかしながら、当初この辞書は国内において売れ行きはかんばしくなかったのです。

時期が悪いのと、価格がとても高かったためでした。この出版のための費用は1万ドルもかかっており、それがなかなか回収できませんでした。しかも、費用を立て替えてくれた恩人ウォルシ・ホールは横浜の大火で会社が全焼してしまったので、苦しい生活を強いられていました。ヘボンはわずかでも彼にお金を返したかったのにできませんでした。

この時、奇跡が起こります。遠国から一人の武士がやってきて辞書を30冊買っていったのです。それ以来、各地域の藩主たちが競ってこの辞書を買い求め、たちまち『和英語林集成』は2版、3版と版を重ねました。

この3版は「ローマ字会」の依頼を受けてローマ字方式が取り入れられ、日本中に広まりました。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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