ライフ・ホープ・ネットワーク通信(4)マイカ君の養親になったシンシア 塚本春美

2015年9月5日14時09分 コラムニスト : 塚本春美 印刷
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・・そんなわけで来日し、ある有名私立大学の講師をしながらの日本生活が始まり、あっという間の15年が過ぎ去りました。その間、シンシアの生活は激変の一途をたどります。

ライフ・ホープ・ネットワークを立ち上げてから、彼女は「愛の決心」という静岡にある同じようなボランティア活動をしているグループから彼女自身、特別養子縁組をして、3歳のマイカ君(聖書でいうミカ書の名)の母親になりました。今はシングルマザーとして養育にも励んでいます。マイカ君はとても優秀なご両親から生まれたと聞いています。しかし、親が優秀であるが故に、ダウン症という障害を持って生まれた子どもを育てる勇気が持てなかった悲しいケースです。

「愛の決心」ではちょうどその時、3人ほどの障がいのある子どもたちを同時に預かっていて、とてもスタッフだけでは行き届いたケアができない状態になりかけていました。マイカ君はその中の一人でした。それを見かねて、祈りに祈り、シンシアが頂いた主からの応答に彼女は従ったのです。

その事がきっかけで彼女自身も日本に帰化し、日本人としての国籍を持って育児に、活動に当たってくれています。このマイカ君を養子にする時も、膨大な書類の手続き作業がありました。彼女がもし何かあれば、次の後継者は? そしてその費用などは? との行政側の質問にも、彼女は真っ直ぐに受け止め、自身のすべての財産の贈与を彼にと契約もしています。もし彼女自身に何事かあればマイカ君の今後を見る後継者もきちんと立てています。そのような細部に至る手続きをもって、やっとマイカ君の養親になる資格を得たわけです。ダウン症で、日本人では誰も養親になる人がいなくて、当時の「愛の決心」のグループでは限界に達していた時なので、シンシアの養親になるという申し出は、まさに主からプレゼント、応答と受け止められたことだったと思います。

ダウン症として誕生したわが子を自分たちの子として認められなくとも、中絶をしないで産んでくださったことは感謝なことです。シンシアが大変な環境ながら、マイカ君を育てることに大きな愛情を持って喜んで奮闘しているのを見るのは素晴らしいことで、そのことを彼女は大きな恵みだと言っています。守られた命に感謝です。たとえ障がいがあったとしてもです。

一般に日本では、命がいつから始まるかという明確な規定がないように思われてなりません。命は、精子と卵子が体内で互いに一つになった時、すでに始まっているのに・・・。

ある訴訟事件の記事が思い出されます。妊娠3カ月ぐらいの女性だったでしょうか。彼女がタクシーに乗っていて、事故に遭いました。彼女自身もけがをしたのですが、さらに悲しいことに、胎内に宿っていた命が奪われたのです。車の衝突で流産してしまいました。この事で、保険関係で一切保証がなされなかったとありました。それは取りも直さず、胎内の3カ月の命は、命としてみなされていなかったということです。命がいつ始まり、いつ終わるのか。日本人の概念としてしっかり打ち出されてはいないのだろうと思わされました。

弁護士の方のサイトで、このような文が目に留まりました。妊娠中に事故に遭った場合のことに触れて、「妊娠中に、交通事故に遭った場合、赤ちゃん(胎児)の損害については、どうなるのでしょうか?」との質問でした。「民法には、権利義務の帰属主体について『私権の享有は出生に始まる』(3条1項)との規定があり、原則として、お腹の赤ちゃん(胎児)は、母親とは別個独立の権利義務主体とは認められていません」。・・・難しい言葉で、なんだかよく分からないような気がします。つまり、胎内の赤ちゃんが自動車事故に遭って命を落としても、何も保証はない。なぜならそれは一個人の命として認められてはいないから、ということなのでしょうね。

「残念ながら、お腹の赤ちゃん(胎児)が死んでしまった場合、交通事故が原因により、妊婦が流産をした場合には、残念ながら、先の民法3条1項により、胎児は、私権の享有主体である「人」とはみなされませんので・・・」とあります。胎児は人間ではない? 体内から出たら人として権利が主張できる? 果たしてそうなのでしょうか・・・。

一番弱い存在で何もできないという視点から、シンシアは、小さな胎内に宿る命を守ることがライフ・ホープ・ネットワークを立ち上げる大きな動機になったと話しています。

慰謝料の算定方法の個所でも大変ユニークな表現があります。「生まれた後の死亡と同様に、胎児の成長具合や夫婦間にとってどれほど望まれた子なのか、またその家族構成によって決まってきます」と・・・。「胎児の受傷をめぐる法律関係は、理論的にも難しいところがありますので、もしものときには、是非、専門家にご相談ください」とあり、様々な判断があるようです。しかし、親からすれば、病院での診察でドクターから何週目ですよと言われ、妊娠したと分かった時点から、子どもとして、人として受け入れています。まだ体が完全に整っていない、細胞のようだから、何週目だから人ではないとは言えないのではないでしょうか。精子が卵子に着床した時から、命は始まっています。

「見よ、子どもたちは主の賜物、胎の実は報酬である」(詩篇127:3)とあります。神様の不思議な、最高の作品が、すでに完成の情報をすべて蓄えて成長を始めているのです。

■ ライフ・ホープ・ネットワーク通信: (1)(2)(3)(4)

塚本春美

塚本春美(つかもと・はるみ)

兵庫県生まれ。1984年三重県四日市市で受洗。家族は夫と子ども3人。2006年、夫の転勤先で現在の本屋ぴりぽのビジョンを主からいただき現在に至る。ライフ・ホープ・ネットワークのボランティアカウンセラー。

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