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み使いダニエル

(み使いダニエル)アキラのものがたり(上) 星野ひかり

2020年7月2日20時00分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル)リカのものがたり 星野ひかり+

ブブブブブ・・・鈍く携帯電話の目覚ましが鳴りました。ここは大都会のそびえたつビルの中にある、ネットカフェの一室でした。黒い壁で仕切られた、一畳半にも満たないアキラの部屋です。ビルの外は、白けた朝が広がって、空にはカラスたちが飛び交っておりました。しかし、ネットカフェは一日中夜の中にあるように、ささやかな灯りがともっては、ここに住む者たちを太陽のまぶしさから守ってくれるようでありました。

空腹を覚えたアキラは、薄いブランケットをよけると扉を開けて靴を履き、ドリンクバーへと向かいます。さまざまなポタージュの粉末の中からカボチャとジャガイモの粉を選んでカップにお湯を注ぎました。クルトンをたくさん入れて、炭水化物の補給です。イチゴミルクとバナナミルクも注ぎます。糖分だって貴重です。これがアキラにとって大切な、無料で食べられる朝食でした。

トレーがいっぱいになったら、こぼれないように部屋に戻り、熱いものは息を吹きかけ冷ましながら飲みました。

都会は動き始めました。電車は規則的なダイヤで運行し、働く人たちを乗せて大都会を回ります。道は小綺麗なスーツや制服を着た人々で徐々に賑やかになってゆきます。そんな人々の暮らしから遠く離れた所に、このネットカフェはあるようでした。まるで違う時間が流れるように、ここはいつも静かで、穏やかで、暗闇の中にある、まるで深海のようでありました。

アキラがここで暮らしはじめて、数カ月がたっていました。それまでは非正規でありながらも飲食店で働いて、部屋を持って暮らしていたのですが、うまの合わない同僚との関係に行き詰まり、仕事に行けない日が増えました。もらえるお金も徐々に減り、家賃を滞納しはじめると、すぐさま退去を求められました。引っ越し代も捻出することはできなかったため、必要なものだけをバックパックに詰め込んで、アキラは家を出たのです。

ネットカフェから仕事に行くこともありましたが、ここに暮らしているうちに、家財を置いて逃げてきた負い目を感じるようになり、人々のまなざしから逃げるように仕事にも行かなくなったのです。

ナイトパックの時間が終わると、公園などで過ごしました。ベンチに座って太陽の光を浴びながら、ぼんやりと街を見つめました。働く人、買い物をする人、みんな行く場所も帰る場所もあるようです。

「自分はもう一度、あちら側に戻ることはできるのだろうか」。そんなことを思いました。お財布を開いて目を落として、数枚のヨレヨレの千円札を見つめました。まるでそのお金こそが自分の価値を示しているようでアキラは背中を丸めました。「このお金が無くなったら、食べることも電車に乗ることも安心して眠ることも、できなくなってしまうんだ」。この世界においてお金とは、“生存権”のようでした。そびえたつビル群がその存在感を増して唸っています。(そうだ、お前はもはやこの世界の一員ではないのだ)と。

世界が波のように遠のいてゆくようです。目には見えない孤島に一人ぼっちで、目に映る街並みは蜃気楼のようでした。

アキラの目の前を通り過ぎてゆく陽炎のような人の波は、それだけでアキラを傷つけました。自分を無視し、苦しみにも目を留めず、ただ行きすぎるだけで十分に人の残酷性を示しているように思いました。「どこに行けばいいのか」。まるで人に嫌われて逃げ惑う野良犬のように、そうつぶやきました。

胸の奥から音がします。トク、トク、トク・・・その音は確かに自分が生きていることを教えます。トク、トク、トク・・・アキラにはもう食べ物を買うお金もなくなりつつあるにもかかわらず、その音はまだ、生きることを望んでいました。

日暮れ間近・・・冷たい風が吹いてきます。アキラはジャンパーに首をすくめて、立ち上がりました。ずっと同じ姿勢で座っていたため、足がよろめいてうまく立つことができません。(だれか、助けて)心は最後の一滴を振り絞るように、叫びました。

この大都会の雲の上、ダニエルはその体を大きく広げ、街の至る所から聞こえてくる叫びを受け止めておりました。悲しげな瞳から、涙がぽろぽろこぼれます。涙は地に落ちる前に霧となり、空気に溶けてゆきました。人々はその空気を感じ取ってふと立ち止まり、(今、誰かが私を想っているような気がする)と、思い出の中にある愛を思い出したりしていました。

雲の上にはあめ色に、または銀色に輝いたみ使いたちが空を埋め尽くすほど飛び交っており、ダニエルは行き交うみ使いと、目を合わせてその行く先を確かめ合いました。孤独に震える少女のもと、死ぬことを恐れて歌を口ずさんでいる老婦人のベッドへと、寝る間も惜しんで働いている子持ちの女の作業場に・・・み使いたちは降り立って、一人一人を見つめ、または語り掛けておりました。人々は、神様がそんなふうに人を愛しておられることなど信じまいと、頑なに自分の力で生きようとしておりました。その思いが神様を、み使いたちを悲しませました。(あなたは一人ではない。)(あなたは決して、放り出されるようにこの世に生まれたわけではない。)(世界は粒子の一粒まで、愛であることを、その先には神様がいることをどうか分かってほしいのだ。)そういう願いが世界にこだましているにもかかわらず、そっぽを向いて自分の力で頑張り続ける人間たちが、神様と、み使いたちの悲しみでした。神様は、エデンの園で、アダムとイブが神様の前から身を隠して今日まで、「あなたはどこにいるのか」と私たちの一人一人を待ち続けているのですから。

もう、ここに泊まれるのも今日で最後になるでしょう。アキラのお財布はついに底をつきそうでした。アキラはネットカフェの小さな部屋で、胎児のように膝をかがめて寝ておりました。ブランケットを2枚かけても肌寒く、明日からの暮らしを思うと身震いしました。先ほどまで、インターネットを使って炊き出しの行われている場所を調べ、ノートに記しておりました。炊き出しでは、毛布や服ももらえるそうです。今までテレビで見ていた炊き出しの列に、まさか自分が並ぶ日が来ようとは思ってもいませんでした。

アキラは空腹と同じくらい強い飢えが、おなかからこみ上げてくるのを感じました。(寂しい。)昔アキラと笑い合った友達や、いつかいた恋人のことを思い出しました。その懐かしい顔ぶれの誰一人も、アキラがこんな所でうずくまっているとは思っていないことでしょう。そのことが無性に寂しかったのです。

アキラの瞳から、絞り出すような涙が一滴流れたとき、不思議です・・・誰かがアキラの手を握ってくれたように感じたのです。愛と呼んでもいいような、温かなぬくもりが、突然小さな部屋を満たしたのです。

暗闇の中に無数の光があふれ、その光は美しいみ使いの輪郭を照らし出しました。

アキラは幻を見ているのだと思いました。しかしこんなに美しい幻なら、ずっと見ていたいと思いました。言葉が響きました。それは音としてではなく、アキラの心臓を打ちながら、直接語られるようでありました。

「心の貧しい人は幸いです。天の御国はその人たちのものだからです。悲しむ者は幸いです。その人たちは慰められるからです・・・」(マタイ5:3、4)

その言葉は、煮えたぎる血のように熱く、アキラの血管に流れ込んでくるようでした。天の御国・・・そんな所があることをなぜか信じられるようでした。そして、自分がお財布の中身だけではなく、心も貧しいものであることに気付かされるようでした。

美しいみ使いは、アキラの心臓に直接語り掛けました。「そう・・・あなたの心は貧しさに悲鳴を上げています。しかし、真にあなたを富ませてくださるお方がこの世界におられるのです。その方をお探しなさい」

アキラはまばたきもせずに涙を流し、息も絶え絶えに答えました。「はい」

ダニエルはうなずくと、決して凍えることのないように、オーロラの光を帯びた見えない毛布をアキラにかけてやりました。アキラは体の芯から温まって、気が付けば眠りの中に落ちていったのです。

アキラは翌日、ノートに記した住所を頼りに、炊き出しの公園を目指しました。長い列が出来ており、初めてのアキラにもすぐに分かりました。身なりの貧しい人たちが、豚汁とおにぎりを受け取ると、たむろをして笑顔を見せていました。アキラは久しぶりに、温かいものを食べていることに気付き、「おいしい」とついつぶやきました。

ボランティアの人たちが大きな十字架を担いで数人で歌を歌っており、耳を傾けると「天の国」のことを歌っていることに気付きました。アキラは懐かしい故郷の歌を聴くように、その歌に耳を澄ませて、目に涙を浮かべました。

歌が終わるや否や、アキラは歌っていた一人のもとに駆け付けて、「天の国への行き先を、僕にも教えてください」そう聞いておりました。

天の国・・・神様が住まわれ、み使いたちに守られた天の国は本当にあって、それはこの世界のすべての宝石を集めても、拳一つにもならないくらいに美しい所だというのです。そこには明かりはなく、神様ご自身が明かりのようにその世界を照らしているというのです。季節ごとにそれはおいしい果実が実り、その樹液は人の心も体も癒やすといわれます。そこに住む者たちはお互いを自分よりも尊いものとして愛し合い、それは麗しく暮らすのだというのです。

神様は呼んでいます。「あなたはどこにいるのか?」切なる響きで今も呼んでおられ、み使いたちがこの世界に働いています。失われた神様の、娘息子を招くために、今日も光の中をあめ色にまたは銀色に輝きながら、世界を飛び交っているのです。

「私はここにいます」。あなたがそう応えるならば、ほら、あなたの横にみ使いが招きに来たことを感じるはず。心の耳を澄ませば、きっと聞こえてくるはずです。神様から流れでる、音楽のような招きの声が・・・。

・・・それから2年後、アキラはささやかな部屋を持ち、介護職員として日々奮闘しておりました。人生は、今度こそ幕が下りると何度も思っても、そのたびに新しい幕が開きます。「もう終わりにしたいんだ」。そんな願いも神様は、なかなか聞き入れてくださいません。きっと、祝福と光にあふれた人生にいつかたどり着いてほしいと、神様が願っているからでしょう。

介護職員になったアキラは、さて、今度こそ祝福の光の中で生きているでしょうか・・・。次はアキラの新しい一幕をお話させていただきましょう・・・。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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