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「負けるが勝ち」と「負けても勝ち」 佐々木満男

2019年8月17日11時52分 コラムニスト : 佐々木満男
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「負けるが勝ち」

子どもの頃、祖父と一緒によく将棋を指した。初めのうちはまったく歯が立たず、負けてばかりいて悔しい思いをした。そのうちに時々勝てるようになり、夢中になって将棋にのめり込んだ時期があった。祖父はわざと負けてくれたことに後で気が付いた。

後年、私は小学生の息子に将棋を教えて一緒に指すようになったが、時々負けてあげていた。息子は次第に自信をつけて将棋に熱中するようになった。将棋の本を次々に買い込み、専用の本棚に50冊以上並べ、それを数冊持ってトイレに入るといつまでも出てこないので、家族が困ったことがある。

そのうち、千駄ヶ谷にある将棋の総本山・将棋会館の将棋道場に通い、将棋を趣味とする大人たちを相手に他流試合をするようになった。将来はプロの棋士を目指して、有段者になるために正式に将棋の「級」を取って上がっていった。

私も息子も中学受験が近づくと忙しくなって将棋から離れてしまったが、将棋の勝敗体験はその後の2人の人生にとても役立っている。

勝てるのに相手のために負けてあげる。キリストは十字架につく前に血の汗を流してもだえ苦しんで祈った。天の父に願えば、直ちに天使の軍団が送られてきて、ご自分を殺そうとする者どもを一瞬にして滅ぼすことができたが、自らの意志で十字架刑という究極の敗北の道を選んでくださった。そのおかげで、私たちは罪がゆるされ神の永遠の刑罰を免れた。

「負けるが勝ち」とは、愛による犠牲の勝利である。

「負けても勝ち」

絶対に勝てると思って一生懸命戦っても負けることがある。Aさんは立て続けに3件の裁判に敗訴した。本当はAさんが正しいのに、3件とも証拠不十分で負けてしまったのだ。「勝訴を信じてあれほど祈りに祈って戦ったのに、なぜ負けたのだろうか?」。弁護した私も信じられなかった。

Aさんは会社と個人の自己破産を申請せざるを得ない状況に追い込まれた。同時に、夫婦関係も悪化し、別居に追い込まれた。これまで離婚は絶対しないと頑張ってきたが、妻の強い離婚要求に応じざるを得なくなった。

「もうダメです。これ以上戦えません!」。公私ともに破たん寸前のAさんは電話口で声を震わせて泣いた。信仰によって数々の試練を乗り越えてきたAさんから聞いた初めての弱音であった。再出発のためにはやむなしと、破産と離婚の両方の手続きの準備に入った。

数カ月後、Aさんから明るい声で、「もう破産することはやめました!」という連絡が入った。

「えっ、破産しないで債務はどうするのですか?」。「新しい仕事でもうけて全部払います」。敗訴後に模索してきた新規事業が軌道に乗りはじめ、大きな収益が見込めるようになったのだ。

「とても素晴らしい奇跡が起きました!」。数日後またAさんから喜びの報告を受けた。「私がこの事業をする目的は、その利益で都心に大きなキリストの教会を建てることです」と新規事業の共同経営者から話されたという。Aさんはその時まで、彼がクリスチャンであるとは知らなかった。実は、Aさんも都心に大きなクリスチャン・タワービルを建てたいと願い、長年にわたり祈ってきた。

「場所はどこですか?」と聞くと、なんと、Aさんが建設を予定していたまさにその場所であった。「あまりのショックで鳥肌が立ち全身が震えました!」。お互いに意気投合してタワービル建設も共同で取り組むことになった。

「離婚はどうするのですか?」と聞くと、「信じられないことですが、あの頑なな妻が、初めて私に頭を下げて、『子どもたちのために戻ってきてください』と懇願してきました」と言う。

「父よ、どうしてわたしをお見捨てになったのですか?」と叫んで、キリストは十字架で殺されたが、3日後に神の力によって死から復活し、私たち信じる者に永遠の命を与えてくださった。

「負けても勝ち」とは、神による死から復活への勝利である。

◇

佐々木満男

佐々木満男

(ささき・みつお)

弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL. M)。インターナショナルVIPクラブ東京大学顧問。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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