最近、死について考えた 藤崎裕之

2018年7月12日23時04分 執筆者 : 藤崎裕之 印刷
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この短い期間に死を思い知らされました。それは7人もの死刑執行による死であり、自然災害による多数の死である。それらは私の心を打ち砕き、大いに痛め続けています。

私が死刑廃止を意識したのは中学生の時でした。ですから45年くらい前です。何がきっかけだったかというと、ラジオである人の死刑執行のニュースを聞いたことでした。とても心が動揺し、また心が締め付けられるように痛んだのです。その人の名前と事件名が紹介されましたが、まったく記憶のない事件でした。ただ死刑が執行されたというニュースが淡々と語られたことは覚えています。まったく感情のこもっていない声に、とてつもない恐ろしさを感じたのです。

それまで死を意識したことはありませんでした。死を身近に経験していなかったからでしょう。「今日、誰かが死んだ。いや処刑されたのだ」。その事実だけが心の中に飛び込んできたのです。それから図書館に行って死刑の仕方や死刑判決を受けた人たちの写真や事件についていろいろと調べました。今に比べれば死刑判決は至って珍しい時代でした。死刑判決を出すということにとても慎重な時代であったと思います。執行数も少なく、年に1人か2人でした。

将来死刑は廃止されるだろうと本気で考えていました。その理由は、日本が何においてもお手本にしているアメリカで長らく死刑がなされていなかったからです。当時はすでにヨーロッパでは死刑が廃止された国も多かったと記憶しています。ところが、そのアメリカで死刑が復活しました。それはギルモア事件として歴史に残されている連続殺人の犯人に対するものでした。それを機に、アメリカでは死刑が頻繁に行われるようになりました。日本はアメリカに倣うように死刑判決や執行の数が増えていきました。

私が死刑に反対するのは表面的には信仰的な理由ではありません。誰かが処刑されるという事実に私の心が耐えられないからです。それはなぜだろうと考えるのですが、結局は45年余り前のラジオのニュースから受けたショックが癒えていないからです。私の心は人が死ぬということにとても弱いのです。しんどいのです。たとえそれが100歳を超えた人の眠るような死であれ、どういう理由であっても、死を受け止めるのはしんどいのです。

この「しんどさ」は神から与えられたものかもしれません。そうでないかもしれません。少なくとも私にとって「死」は、神によって定められたものであっても、「罰」としてくだされたものではありません。聖書は、キリストによって死は敗北するのだと伝えています。私はそこに込められた深い意味を、わが人生において追い求めているのです。

しかし、「死」に対する痛みと「しんどさ」は、自分自身の「死」においてのみ終わりを告げるのでしょう。キリスト教の信仰には「キリストと共に死を過ぎ越していく」希望があります。それは逆側から見れば、命への尊厳と尊敬であろうと考えます。いかなる「死」に対しても心が痛み続けることは、信仰者として決して無駄な歩みとは思いません。故に命への尊敬を持って死を悼みつつ、死刑確定者の刑執行に反対します。しばし私たちの国全体が「死と生」を共有しつつ、死刑停止という決断をできないのかと私は問います。

藤崎裕之

藤崎裕之(ふじさき・ひろゆき)

1962年高知市生まれ。明治から続くクリスチャン家庭に育つ。88年同志社大学大学院神学研究科卒業。旧約聖書神学専攻。同年、日本基督教団の教師となる。愛知、北海道で地域伝道に従事する。オホーツク、道南過疎地での伝道から多くを学んだ。「小さな教会を諦めない」ことをモットーにしている。日本基督教団正教師。

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