FINE ROAD(49)西村建築設計事務所シリーズ③日本福音ルーテル教会宣教百年記念東京会堂

2017年5月24日18時26分 コラムニスト : 西村晴道 印刷

西村建築設計事務所シリーズ③
日本福音ルーテル教会宣教百年記念東京会堂
テーマ
説教と聖礼典「バッハの教会」
主要用途 教会 事務所 牧師館 竣工 1996年6月
所在地 〒169-0072東京都新宿区大久保1-14-14
構造 鉄筋コンクリート(一部鉄骨)造3階建
延床面積 1252・37㎡(378・84坪)
設計者 西村建築設計事務所 代表 西村晴道
施工者 前田建設工業株式会社

FINE ROAD(49)西村建築設計事務所シリーズ③日本福音ルーテル教会宣教百年記念東京会堂

宣教百年記念の会堂として

日本福音ルーテル教会宣教百年記念東京会堂(以下、東京教会)は、佐賀に宣教が始められての百周年行事の1つとして新宿、新大久保に建設された。元の教会は戦火に遭い、かなりの部分を焼失したが再建され、ツタの絡まるチャペルとして地域に愛された教会だった。日本福音ルーテル教会全体としての会堂が欲しいという念願があり、記念会堂の計画と合流して、東京教会を建て替えることになった。

東京教会は、宣教百周年記念会堂として、多くの先生方が教会建築について神学的に検討を重ね、日本福音ルーテル教会の1つのモデルを作った唯一の教会だ。礼拝堂は「神の家族の家」として静かな祈りの空間にするため重厚なデザインと色調に、会衆席は聖卓を囲み共に交わる型になど、一つ一つ話し合いで決めた。その設計に携わることができたことを、深く感謝している。

設計競技で5社の中から選ばれ、1992年から設計に入り、途中でバブル崩壊のため一時凍結という事態になったが、95年6月着工、翌年6月、鉄筋コンクリート造3階建(一部鉄骨造)、総工費約6億円の記念会堂は、多くの方の祈りに支えられ、5年がかりで完成に至った。

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細長い敷地形状を生かし、賑やかな大久保通りのことも配慮して、礼拝堂は奥まった2階に配置した。入り口から、心を静める参道のようなくねった外階段を上っていくと2階コンコースロビーに導かれ、礼拝堂へと続く。

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外観スケッチ

建築委員会は全体教会、東教区、東京教会の3者から名だたる牧師、学者というメンバーで構成された。

会堂建築に関して世界のルーテル教会は、各教会が独自に神学的に建設してきた。日本も同じくそれぞれの教会に委ねられてきたが、これを機にルーテル教会として1つの方向性を出すためのプロジェクトとなった。ルター学者の徳善義和先生が建築委員長として神学的建築指針をまとめてくださった。

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通りに面する外壁には、祈りの手を表したゴシック的デザインを組み込み、世界のために、町のために祈る存在とした。東京教会は今日も新宿の町に福音を宣べ伝えている。

2階礼拝堂 世に勝つ「聖なる空間」を

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礼拝堂は、壁を屏風状のコンクリート打ち放しとし、聖壇壁面に凹凸タイルを貼り、音が乱反射するように天井は9メートルの高さで吸音材を主体とした仕上げ材を使用、床は当初カーペットとしていたが、途中で床暖房を取り入れた板張りにした。壁の一部を、音響調整のために材質を取り替えることができるよう配慮して施工してある。

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聖壇については、聖卓を中心に、聖壇側から見て右側に神の右手として説教台と福音書朗読の場、左側に神の左手として福音書以外の聖書朗読の場が基本だ。ルーテル教会では、聖餐式は全会衆が順に聖壇前へ進み出て受けるので、聖壇に広いスペースが要求される。聖餐準備のために聖壇脇に厨房としての役目の準備室を配置した。聖餐器具の洗浄・保管場所、また礼拝当番の祈祷場所になる。準備室の前に牧師のトイレ付控え室を設けた。

「聖壇の位置は東または南とし、共に交わる会衆席を設ける」が設計条件だ。

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ステンドグラスと十字架は一体としてドイツのクロンク氏に依頼した。氏は父の代からのステンドグラス・マイスターであり、大学で美術を学ばれた方だ。正面左から「癒やし」「復活」「派遣」「祝福」の4つのテーマが表現されており、十字架はその中央に床から立ち上げることに考えが一致した。

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竣工時

母子室は、礼拝において1つの流れの中にあることを大切にし、直接礼拝堂に出入りできるドアを設けた。また、同時通訳室もある。

内装に関しては、明るい色合いの礼拝堂という希望も多くあったが、委員会としては「世に勝つ」空間、集会所ではなく礼拝する厳かな場とした。色彩的に落ち着いた濃いブラウン系の重厚感のあるものにし「人の温かみ」を持った「聖なる空間」の創出に努めた。

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バッハはルーテル教会の音楽家であり、東京教会は「バッハの教会をつくろう」との要望があった。最近音響の専門家に測定を依頼したところ、残響1・9秒と、教会音楽には最適な空間であるという結果が出た。

竣工6年後の2002年、念願のパイプオルガン(ドイツ・シュッケ社制作)が設置され、名実ともにバッハの教会が完成した。

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2階礼拝堂背面
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2階礼拝堂エントランス廊下
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1階集会室
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竣工時1階玄関ホール

パイプオルガンのシュッケ社

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シュッケ社のシュルツ社長と

パイプオルガンのシュッケ社のシュルツ社長には、ベルリンの新しい教会の案内などでお世話になった。その後、世界一のベル・カリヨン製造会社、オランダのロイヤルアイスバウツ社を紹介していただき、世界最大のスウィングベル(重さ37・5トン、直径3・7メートル、高さ3・8メートル)を鋳造することができた。これも東京教会からつながる縁だ。巨大なベルは御殿場高原時之栖エリア内の富士山を望む丘の上にそびえ立っている。

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御殿場高原時之栖スウィングベル
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ロイヤルアイスバウツ社の最近のプロジェクト ノートルダム寺院の9つの鐘、パリに凱旋帰国
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東京教会の牧師で、牧師ROCKSではベースボーカルを担当する関野和寛氏(左)

東京教会の関野和寛牧師司式のもと、末娘の結婚式を挙げることができ、本当に感謝している。

建築のことで招かれ、いろいろな教会に出席する機会が多くある。建築をしようという教会は、大変活発で何か特長のある礼拝を行っている。建築完成後も信徒の力に建物の力が加わり、よき伝道をしている。東京教会も多くの人が集い、会堂を十分に生かしたさまざまな活動をしており、大変うれしく感謝している。

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西村晴道

西村晴道(にしむら・はるみち)

1948年、靜岡県生まれ。一級建築士。法政大学工学部建築学科卒。住友建設株式会社入社・退職し、アメリカ合衆国ソービック建築設計事務所短期留学を経て、1984年、西村建築設計事務所開設。現在に至る。ルーテル学院大学第10回リード賞(キリスト教芸術分野)受賞。日本福音ルーテル静岡教会会員。著書に『FINE ROAD―世界のモダンな教会堂をたずねて』(イーグレープ)。

【西村晴道・連絡先】
メール:har72nishimura@tbz.t-com.ne.jp

■ 一級建築士事務所 西村建築設計事務所ホームページ
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