生かされていることへの感謝を分かち合おう がん哲学外来お茶の水メディカル・カフェ

2015年12月10日16時13分 記者 : 坂本直子 印刷
生かされていることへの感謝を分かち合おう がん哲学外来お茶の水メディカル・カフェ
講話をする順天堂大学医学部の樋野興夫教授。樋野教授の講話は、今まさにがんと闘っている人たちや、がんで愛する人を亡くした人たちを慰め、力づけている=5日、お茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)で

第43回がん哲学外来お茶の水メディカル・カフェが5日、お茶の水クリスチャンセンター8階チャペル(東京都千代田区)で開催された。「クリスマス・スペシャル」として開かれた今年最後のカフェには、約80人が集まり、生かされていることへの感謝や励ましを共有し合った。

がん患者やその家族らが対話できる場として、北海道から九州まで現在約80カ所で持たれている「メディカル・カフェ」。その中でもモデルとして中心的な役割を果たしているのがお茶の水メディカル・カフェだ。毎月欠かさず開いてきたカフェも、来年4月で丸4年を迎える。

同カフェで恒例となっているのが「樋野講話」。メディカル・カフェが開かれるきっかけとなった「がん哲学外来」を提唱し、実践する順天堂大学医学部の樋野興夫教授による講話は、今まさにがんと闘っている人たちや、がんで愛する人を亡くした人たちを慰め、力づけている。

この日の講話で樋野氏は、同カフェが毎月継続して開かれていることを称賛した。「臓器はどれも継続していて、止まることがない」と継続の大切さについて語り、「(循環する血液のように)水流に逆らうことなく生きる。そういう人生になるといいね」と話した。

また、宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」のモデルとなったクリスチャンの斎藤宗次郎に触れ、自身をひどく迫害する村人たちのために尽くした斎藤の姿を見て、宮沢はこの詩の最後のフレーズで「サウイフモノニワタシハナリタイ」と歌ったのだと述べた。樋野氏は、「人は人との比較の中で悩んでいる。だから、『そういうものに私はなりたい』と思える尊敬する人物を人生のモデルとすると、誰かと自分を比べることがなくなり人生が豊かになる」と語った。

続けて、イエス・キリストが馬小屋で生まれたことに言及し、「ゴミの中で生まれた、これは大切なことで、真実はゴミの中にある。どんなに苦しくても外を見る。人間も外に出れば必ず出会いがある」と話した。「いいものはゴミの中で輝く」「病気であっても病人ではない」。まさに「言葉の処方箋」といえる格言が、次々と続いた。

最後に樋野氏は、「『これしかない』という本物に出会うと、あれもこれもと悩まずに済み、人生が楽になる」と「本物」と出会うことの大切さを説き、「『本物』は心に残り、心に残るものは一人で沈黙していても心に働く。だから、友達や自分に関心を持ってくれる人がいないとしても、『本物』を持っていれば、決して孤独にはならない。これが『真実』」と締めくくった。

生かされていることへの感謝を分かち合おう がん哲学外来お茶の水メディカル・カフェ
樋野氏の講和に耳を傾ける参加者たち。講和後の「分かち合い」は、隣のホールで行われた。

講話後、同カフェの総合司会を務めるお茶の水クリスチャンセンター副理事長で、お茶の水メディカル・カフェ代表であり牧師の榊原寛氏は、「イエス様がお生まれになった時の様子が記されている聖書の箇所で心をとらえるのは、『彼らのいる場所がなかった』というところです」と語った。「家族も、友達も、同僚も、周りにはたくさんの人がいるのだけれど、自分の身の置き所がないという孤独をじわじわと感じることがあるでしょうか」と問い掛け、「キリストもまた居場所がないという現状の中でこの世に来られたことを思うと、自分と同じレベルにおられるお方がいる、あるいは自分と同じ立場でいる仲間がいる。こういったことを思うと、孤独ではないと思えます。そう思える仲間が、私たちのメディカル・カフェの仲間・家族なんだなと思ったりします」と述べた。

榊原氏は、同カフェのファシリテータであり看護師として働いている女性のメールを紹介した。この女性は、数年前にがんを発症してカフェに来るようになり、クリスチャンとなった。数日前に両足にしびれが出てしまい急きょ入院し、抗がん剤の治療を始めたという。しかし、榊原氏の元に届いたメールには、この日のカフェに参加できないことを残念に思っていること以外は、すべてのことが感謝と喜びにあふれた内容で、「バブテスマを受けて本当によかったと感じている」とあった。

榊原氏は、女性からのメールに「皆さんに寄り添っていただき一人ではないと思い、カフェで人のためにと奉仕していることが、思いがけず自分が救われていることに気が付いた」とあり、「このことは逆説のように感じるが、最小限のことでも、何か他者のためにできることを頑張れば、それが自分に帰ってくることがある」と話した。

この後に行われた「分かち合い」では、幾つかのグループに分かれ、お茶とお菓子(この日はクリスマスケーキ)を囲みながらそれぞれの思いや体験を語り合い、最後に報告の時を持った。「今にがんでないことで肩身が狭くなる時代になる」とのユーモアたっぷりな言葉や、「病気によって人は生かされている」といった積極的な思い、「情報交換を通して力を与えられる」「ここに来ると前向きになれる」といった感想などを分かち合った。

こういった分かち合いの進行や取りまとめをするのは、同カフェを通して育ってきたファシリテータたちだ。ファシリテータは、参加者の様子をその都度把握して課題や問題を早期に発見し、会場が常に居心地の良い場所になるよう整えている。

がん患者やその家族だけでなく、最近では、不登校や人間関係に悩んでいる人もよく訪れるようになったという。同カフェは、社会の中でつらさや痛みを抱えた人たちにとって、まさに「来るべきところ」となっている。

生かされていることへの感謝を分かち合おう がん哲学外来お茶の水メディカル・カフェ
ミニコンサートで演奏するバイオリニストの大倉サラ氏(写真右)とピアニストの吉田恵氏(同左)

「クリスマス・スペシャル」のこの日は、特別にミニコンサートが開かれた。東京を拠点に、室内楽、オーケストラ奏者として活躍するバイオリニストの大倉サラ氏と、クラシック音楽だけでなくゴスペルの指導にも当たっているピアニストの吉田恵氏が、3曲のクリスマス・キャロルと、サラサーテのツィゴイネルワイゼンの演奏を披露した。アンコールの拍手に応えて、聖歌「キリストにはかえられません」を奏でると、会場は大きな拍手に包まれた。

次回のお茶の水メディカル・カフェは、ニューイヤースペシャルとして来年1月9日(土)午後1時から、お茶の水クリスチャンセンター8Fチャペルで開催される。

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