働くことに喜びがありますか?~信仰による労働の変革~(4)労働の具体的定義と内容 門谷晥一 

2014年10月11日06時00分 コラムニスト : 門谷晥一 印刷
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4.労働の具体的定義と内容

以下の議論の参考のために、ここで労働に関する定義について簡単に述べる。

労働は人間として果たすべき本分または使命とみなす時にそれを職分という。またそれが役割的任務のもとでなされる場合にはそれを職務といい、社会生活の中での資格と義務の体系として位置づける場合にはそれを職業という[6]。労働は人間の行うすべての働きを含み、必ずしも会社や企業等で働くことを意味しない。それは家事やボランティアの働きなどをも含むものである。職業はそれによって暮らしが成り立つ労働だけを意味し、労働の一部である。これは英語のOccupationに対応している。この労働が本来神聖なものであることは、永遠の神の御子イエス・キリストが大工の作業場で働かれたこと(「『この人は大工ではありませんか。マリヤの子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではありませんか。その妹たちも、私たちとここに住んでいるではありませんか。』こうして彼らはイエスにつまずいた」(マルコ6:3))及び使徒パウロが天幕作りの職を持っていたこと(「パウロはふたりのところに行き、自分も同業者であったので、その家に住んでいっしょに仕事をした。彼らの職業は天幕作りであった」(使徒18:2~3))が証ししている[4]。

召しが神の呼びかけや御旨や命令に対して敏感に反応し、応えていくことであるとすれば、労働はその召しに応えて主のものであるこの世を管理する任務に就くことである。神が造られたものは、人も草も木も動物も全て良かった。神は人に豊かに恵まれた世界の管理を任されたのである。神は創造した世の中を人間に委ね、「耕すこと」と「守ること」を私たちの使命とされた[2]。いわゆる世界管理の使命。職業はこの世界管理の一部である。創世記の御言葉「神はまた、彼らを祝福し、このように神は彼らに仰せられた。『生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地を這うすべての生き物を支配せよ』」(創世記1:28)から、神は人間にこの地を治め、良く利用するように支配権をお与えになったこと、それゆえ意識するとしないとを問わず、すべての人のためにこの世界を住み心地の良い場所にすることは、被造物を愛しておられる創造主なる神への奉仕であることは前述した。

このような働きの結果を文化という。それによって、人間は、地上の資源を利用し、家を建て、食物と福祉を確保し、能力と技術を開発し、自分にとっても他の人々にとっても役に立つ世界を築いていく。それが、文化と建設的な働きである。働くすべての人は文化を建設する働きに参与している。もし文化が創造的な働きであるとするならば、芸術は、音楽、絵画、形の領域での創造的な働きである。思考の領域での建設的な働きは「科学」と呼ばれる。科学は人間の創造的思索と研究によって達成される働きである[11]。

中世カトリシズムでは、神がそれぞれの職業を定められたのだから、人は与えられたままの職業にとどまるべきであるとされ、すべての職業は階層的に受け止められた。聖職者の仕事など宗教的なものが最高で、世俗の仕事はそれより劣り、後者の中では、理性的なものは高く、肉体的なものは低く位置付けられた[10]。宗教改革において、それまでのカトリックの見方とは全く異なる見方が生じた。ほとんど例外なく、宗教改革者たちはこう主張した。どんな労働も等しい価値があり、等しく神に喜ばれるものであると[4]。ルターは、神は摂理によって各人にそれぞれ社会における役割を与えて、その働きをするようにしてくださったと教えている。カルヴァンも、労働の勧めにおいて人後に落ちなかった。わけても、彼は有益な労働を強調した[4]。

創世記の御言葉の中には様々な労働が記されている。例えば「アダはヤバルを産んだ。ヤバルは天幕に住む者、家畜を飼う者の先祖となった。その弟の名はユバルであった。彼は立琴と笛を巧みに奏するすべての者の先祖となった。ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅と鉄のあらゆる用具の鍛冶屋であった。トバル・カインの妹は、ナアマであった」(創世記4:20~22)、「さて、ノアは、ぶどう畑を作り始めた農夫であった」(創世記9:20)。このように労働には昔も今も変わらず実に色々の種類があるが、私たちは、日常的な労働と宗教的な労働は領域が異なるだけであり、むしろそれら各々の労働が、世俗的なレベルなのか霊的なレベルなのかが重要であることを覚えなければならない。

参考文献

[1] 林晏久編(2004年)『刈り入れの時は来た―ビジネスマン・壮年者伝道ハンドブック』いのちのことば社
[2] 山崎龍一(2004年)『クリスチャンの職業選択』いのちのことば社
[3] 唄野隆(1995年)『主にあって働くということ』いのちのことば社
[4] ジョン.A .バーンバウム、サイモン.M .スティアー(1988年)『キリスト者と職業』村瀬俊夫訳、いのちのことば社
[5] 唄野隆(1979年)『現代に生きる信仰』すぐ書房
[6] 山中良知(1969年)『聖書における労働の意義』日本基督改革派教会西部中会文書委員会刊
[7] 大谷順彦(1993年)『この世の富に忠実に』すぐ書房
[8] H.F.R.キャサーウッド(1996年)『産業化社会とキリスト教徒』宮平光庸訳、すぐ書房
[9] 鍋谷憲一(2005年)『もしキリストがサラリーマンだったら』阪急コミュニケーションズ
[10] 宇田進ほか編(1991年)『新キリスト教辞典』いのちのことば社
[11] カール.F.ヴィスロフ(1980年)『キリスト教倫理』鍋谷堯爾訳、いのちのことば社
[12] マックス・ヴェーバー(1989年)『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』大塚久雄訳、岩波書店
[13] 小形真訓(2005年)『迷ったときの聖書活用術』文春新書
[14] ケネス.E.ヘーゲン『クリスチャンの繁栄』エターナル・ライフ・ミニストリーズ発行
[15] D.M.ロイドジョンズ(1985年)『働くことの意味』鈴木英昭訳、いのちのことば社
[16] ルーク・カラサワ(2001年)『真理はあなたを自由にする』リバイバル新聞社
[17] 遠藤嘉信(2003年)『ヨセフの見た夢』いのちのことば社
[18] 唄野隆(1986年)『主に仕える経済ライフ』いのちのことば社
[19] E.P.サンダース(2002年)『パウロ』土岐健治、太田修司訳、教文館
[20] エドウィン.H .パーマー(1986年)『聖霊とその働き』鈴木英昭訳、つのぶえ社
[21] 松永真里(1994年)『なぜ仕事するの?』講談社
[22] 厚生労働省編(2005年)『労働経済白書(平成17年版)』国立印刷局発行
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[24] ロナルド・ドーア(2005年)『働くということ』石塚雅彦訳、中公新書
[25] 共立基督教研究所編(1993年)『聖書と精神医学』共立基督教研究所発行
[26] 生松敬三(1990年)『世界の古典名著・総解説』自由国民社
[27] 東方敬信(2001年)『神の国と経済倫理』教文館
[28] バンソンギ(2005年)『キリスト教世界観』CBMC講演会資料
[29] ジョン・エドムンド・ハガイ(2004年)『聖書に学ぶリーダーシップ』小山大三訳、ハガイ・インスティテュート・ジャパン発行
[30] William Nix (1997) "Transforming Your Workplace For Christ" , Broadman & Holman Publishers
[31] ミラード.J.エリクソン(2005年)『キリスト教神学』(第3巻)伊藤淑美訳
[32] 国際ハガイセミナー資料(2005年、シンガポール開催)
[33] ダニエル・フー「Goal-Setting」、国際ハガイセミナー資料(2005年、シンガポール開催)
[34] ヘンリー・シーセン(1961年)『組織神学』島田福安訳、聖書図書刊行会
[35] ジョージ.S.ヘンドリー(1996年)『聖霊論』一麦出版社
[36] 安黒務(2005年)『組織神学講義録、人間論及び聖霊論』関西聖書学院
[37] ヘンドリクス・ベルコフ(1967年)『聖霊の教理』松村克己、藤本冶祥訳、日本基督教団出版局
[38] ピーター・ワグナー(1985年)『あなたの賜物が教会成長を助ける』増田誉雄編訳、いのちのことば社
[39] ケネス.C.キングホーン(1996年)『御霊の賜物』飯塚俊雄訳、福音文書刊行会
[40] ポール.J.マイヤー(2003年)『成功への25の鍵』小山大三訳、日本地域社会研究所
[41] 国内ハガイセミナー資料(2004年11月、名古屋開催)
[42] 三谷康人(2002年)『ビジネスと人生と聖書』いのちのことば社
[43] 平野誠(2003年)『信念を貫いたこの7人のビジネス戦略』アイシーメディックス
[44] 『バイブルに見るビジネスの黄金律』(2004年、いのちのことば社マナブックス)
[45] 『バイブルに見るビジネスの黄金律2』(2006年、いのちのことば社マナブックス)
[46] ウィリアム・ポラード(2003年)『企業の全ては人に始まる』大西央士訳、ダイヤモンド社
[47] 「キリスト教主義打ち出すクリスチャン企業」(『リバイバル新聞』2005年5月22日号)
[48] 「フィジーのリバイバルを収録」(『リバイバル新聞』2005年)、及びDVDビデオ「海は鳴りとどろけ」(2005年、プレイズ出版)

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門谷晥一(かどたに・かんいち)

1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。

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