英国内の聖公会の聖職者や修道者約700人が、1992年以降30年余りの間に、カトリック教会に転会していたことが、英セントメアリーズ大学の最近の調査で明らかになった。この期間にイングランドとウェールズで叙階されたカトリック司祭の約3分の1は、聖公会の出身だったという。
調査の報告書(英語)によると、英国国教会、ウェールズ聖公会、スコットランド聖公会の英国内の3つの聖公会から、聖職者や修道者714人が、1992年から2024年までの33年間に、カトリック教会に転会していたことが、記録上確認または推認できた。このうち、16人は聖公会の元主教で、2人は継続聖公会(アングリカン・コミュニオン〔全世界聖公会〕から分離した聖公会)の元主教だという。
1992年は、賛否が分かれる中、英国国教会が総会で女性司祭を認める決議を行った年。これに対し、カトリック教会は一貫して、司祭を含めた聖職者を男性のみに限定している。
転会者の一人には、英国国教会の元ロチェスター主教マイケル・ナジルアリがいる。ナジルアリ元主教は、英国国教会が「道を見失っている」と批判して2021年にカトリック教会に転会し、同年に司祭に叙階された(関連記事:英国国教会の保守派重鎮、カトリックに転会)。
ナジルアリ元主教は、結婚やジェンダー、セクシュアリティーなど、カトリック教会が明確な教えを保持している全ての事柄について、伝統的な見解を持っている。その一方で、英国国教会はこうした問題に対し深く分裂した状態にある。
聖公会の保守派グループ「世界聖公会未来会議」(GAFCON)は最近、リベラルな立場に立つロンドン主教サラ・ムラリーが、英国国教会の首席聖職者であり、アングリカン・コミュニオンのトップでもあるカンタベリー大主教に、女性として初めて任命されたことを受け、カンタベリー大主教の権威を今後認めないとするコミュニケ(声明)を発表した。一方、カトリック教会とは合流せずに、アングリカン・コミュニオンとは別の「グローバル・アングリカン・コミュニオン」を設立すると宣言した(関連記事:聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に)。
報告書の共同執筆者であるセントメアリーズ大学のスティーブン・ブリバント教授(神学・宗教社会学)は、聖職者や修道者の聖公会からカトリック教会への転会は、女性司祭導入後に明らかに「急増」したと述べた。
ブリバント氏は、英国国教会からの離脱の背景には、さまざまな個人的理由があることを認めつつも、「1990年代の女性司祭に関する総会決議は大きな要因でした」と英デイリー・テレグラフ紙(英語)に語った。
また、もう一つの重要な出来事は、2010年に当時のローマ教皇ベネディクト16世が、英国を訪問したことだった。この訪問時には、19世紀の神学者ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿の列福式が行われた。ニューマン枢機卿は、カトリック教会に転会する前は英国国教会の司祭だった。ブリバント氏は次のように付け加えた。
「ニューマン枢機卿は、英国国教会とカトリック教会の双方にとって真の英雄です。しかし、こうした人々(聖公会からカトリック教会への転会者)の大半は、長く非常に個人的な旅路を歩んできたのです」
















