英政府は3日、英国国教会の首席聖職者であるカンタベリー大主教に、ロンドン主教サラ・ムラーリー(63)を任命することをチャールズ国王が承認したと、ホームページ(英語)で発表した。ムラーリー主教は、来年3月に正式に就任する。
カンタベリー大主教は、16世紀に英国国教会がカトリック教会から独立する以前から存在する職位(カトリック時代はカンタベリー大司教)で、初代は597年に就任した聖アウグスティヌス。ムラーリー主教は第106代となり、女性が就任するのは、この1400年余りの歴史で初めて。
カンタベリー大主教は、英国国教会だけでなく、世界165カ国に合わせて約8500万人の信者がいる、各国の聖公会で構成されるアングリカン・コミュニオン(世界聖公会)のトップでもある。
ムラーリー主教は1962年、英イングランド南東部サリー州生まれ。16歳の時にキリスト教信仰に導かれる。看護師となり、ロンドン市内の公立病院に勤務。99年には当時最年少の37歳で、英政府の看護分野における最高位の顧問的立場にある看護長官に抜擢され、約5年務めた。
その傍ら、98年から神学校で学び始め、2001年に執事、02年に司祭叙任。15年に主教として按手(あんしゅ)を受け、エクセター教区の補佐主教であるクレディトン主教に。18年から、英国国教会において第3位の職位にあるロンドン主教を務めていた。看護師時代に結婚しており、成人した子どもが2人いる。
サラ主教は任命を受け、次のように語った。
「キリストのこの新しい召命に応じるに当たり、私は、十代の頃に初めて信仰を持ったときから自分を突き動かしてきた、神と他者に対する奉仕の精神をもって、これに臨みます。看護師としてのキャリアとキリスト教の聖職者としての働きを通して、私はこの旅路のあらゆるステージで、人々や神の優しい促しに深く耳を傾けること、また、人々をつなぎ合わせ、希望と癒やしを見いだせるように働きかけることを学びました」
「私が純粋に願っていることは、英国国教会が福音への確信を深め続け、イエス・キリストのうちに見いだされる愛を語り、それが私たちの行動を形作るように励ますことです。そして私は、英国、またアングリカン・コミュニオンのあらゆる教区において、神と地域社会に奉仕する何百万人の人々と共に、この信仰の旅路を分かち合うことを楽しみにしています」
「これは大きな責任だと分かっていますが、神が常にそうしてくださったように、私を支えてくださるという平安と信頼をもって臨みます」
英国国教会の発表(英語)によると、今後の手続きとして、カンタベリー大聖堂の参事会による投票がクリスマス前に行われる予定。この投票を通じて、ムラーリー主教は正式に被選大主教となる。その後、来年1月28日にロンドンのセントポール大聖堂で選出を承認する式典が行われ、法的にカンタベリー大主教となる。3月にカンタベリー大聖堂で就任式が行われ、第106代カンタベリー大主教としての職務を開始する。
ムラーリー主教の任命は、前任のジャスティン・ウェルビー大主教(69)の辞任に伴うもの。ウェルビー大主教は昨年11月、教会関係者の男性(故人)が50年近くにわたり、計約130人の少年や青年らに児童虐待を繰り返していた事件を巡り、適切な対応を怠ったとして批判を受け、辞意を表明。今年1月初めに正式に辞任していた。
その後、英国国教会、アングリカン・コミュニオン、カンタベリー教区の代表者らで構成されるカンタベリー大主教指名王立委員会(CNC)が、今年2月から選考プロセスを始め、ムラーリー主教を指名していた。ウェルビー大主教の辞任後、カンタベリー大主教としての職務は、英国国教会の次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルが大半を担い、ムラーリー主教もその一部を担っている。