
聖公会の保守派グループ「世界聖公会未来会議」(GAFCON=ガフコン)は16日、カンタベリー大主教の権威などを否定し、世界各国・地域の聖公会で構成される「アングリカン・コミュニオン」(全世界聖公会)とは別に、新たに「グローバル・アングリカン・コミュニオン」を設立すると宣言するコミュニケ(声明)を発表した。
GAFCONは2008年、同性愛者の主教按手(あんしゅ)や同性婚に反対する聖公会の保守派がエルサレムに集まり、「エルサレム宣言」を発表して結成された。GAFCONの指導者らは、アングリカン・コミュニオンの主流派が聖書の教えから逸脱していると考え、長年にわたり懸念を示してきた。
そうした中、今年7月には、英国のウェールズ聖公会で、レズビアンであることを公言している女性のチェリー・バン主教がウェールズ大主教に選出された。また、今月初めには英国国教会のトップであり、アングリカン・コミュニオンのトップでもあるカンタベリー大主教に、同性カップルの祝福を支持する立場を示してきたサラ・ムラリー主教が、女性として初めて選出された。
GAFCONは、両主教の選出に対して、いずれも否定的な見解を示しており、アングリカン・コミュニオンからの決定的な分裂を意味する今回のコミュニケは、これらに続いて発表された。
コミュニケは「未来が到来した」(英語)と題され、GAFCONの首座主教会議議長を務めるローラン・ムバンダ大主教(ルワンダ聖公会首座主教)の名義で出された。アングリカン・コミュニオンの改革という、エルサレム宣言で表明した使命を果たすため、GAFCONの首座主教らが集まり、8つの項目を決議したとしている。
その中で、アングリカン・コミュニオンの「4つの器」とされるカンタベリー大主教、ランベス会議(全世界聖公会主教会議)、全聖公会中央協議会(ACC)、首座主教会議を、「アングリカン・コミュニオンの教義と規律を守れなかった」として拒否すると宣言。「最終的な権威としての神の誤りなき言葉を放棄し、(同性愛や同性婚を否定した)1998年のランベス決議第1条10項を覆した修正主義のアジェンダを主張する人々と交わりを持ち続けることはできません」とし、「私たちは今、グローバル・アングリカン・コミュニオンです」と打ち出している。
その上で、グローバル・アングリカン・コミュニオンの下にある管区(聖公会)は今後、ACCを含め、カンタベリー大主教が招集する会議には参加しないとしている。また、ACCに対し金銭的に協力することも、ACCから金銭的な協力を受けることもないとしている。
さらに、綱憲にカンタベリー大主教座や英国国教会との交わりに関する言及がある管区については、綱憲を改正し、それら全てを削除することを奨励している。この他、グローバル・アングリカン・コミュニオンに加わるには、エルサレム宣言に同意する必要があると説明している。
一方、これらはアングリカン・コミュニオンの「再編」だとし、「初めからそうであったように、私たちはアングリカン・コミュニオンから離脱したのではなく、私たちがアングリカン・コミュニオンなのです」と述べ、自らの正統性を主張している。
コミュニケによると、来年3月3~6日にナイジェリアの首都アブジャで開催されるGAFCONの主教会議で、グローバル・アングリカン・コミュニオンに関する協議が行われ、その設立を祝うという。
アングリカン・コミュニオンは、日本聖公会を含めた42管区と、カンタベリー大主教の管轄下にある5つの特別管区からなり、世界165カ国・地域以上に広がる聖公会の信者8500万人をまとめている。
GAFCONの公式サイト(英語)によると、このうち9管区(南スーダン、ナイジェリア、ウガンダ、ケニア、コンゴ、ルワンダ、南米、ミャンマー、チリの各聖公会)の首座主教がGAFCONの積極的な支持者で、GAFCONの管区とみなされている。また、米国聖公会とカナダ聖公会から独立して設立された北米聖公会と、ブラジル聖公会(IEAB)から分かれたブラジル聖公会(IAB)もGAFCONの管区とされ、他に複数の支部がある。