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み使いダニエル

(み使いダニエル・信仰者編)タエのものがたり

2021年4月1日18時27分 コラムニスト : さとうりょうこ
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(み使いダニエル・信仰者編)リカのものがたり+

大都会の真ん中の、夜景のきれいなカフェテリアに、タエは一人でおりました。夜中の2時を過ぎても、街はネオンにあふれて活気に満ちて、人は道を行き交っておりました。白を基調としたモダンなカフェで、アイスミルクティーにシロップをたくさん入れて甘くしたものを少しずつ口に含みながら、タエは聖書を開いておりました。

都会の夜は、不思議な魔力で満ちています。ここでは誰もが、物語の主人公のよう。タエも、短くカールした髪を垂らして、都会の女にふさわしく着飾って、カフェテリアの明かりの下で聖書を開いているだけで、舞台の登場人物であるかのような甘美な錯覚に陥りました。時折、用もないのにレストルームに行っては自分の顔が輝いていることを確認して、満足して席に戻り、また聖書を開きました。

「私は神様に愛されている」。タエは、そう思いました。まるで、きらびやかに光り輝く、都会の夜を支配しているような気分です。まだまだ崩れ落ちることはない、堅固な城のように、都会はさまざまな人の思いに燃え立ちながら、活気づいておりました。そのただ中で神の言葉を読み、時に祈る自分はまるで神様の使者のように思えるのです。

聖書は素晴らしい書物でした。この書物には、世界の始まりから、終わりまでのことが描かれているのです。人の罪の深さ、王国の成り立ちと神様の力の働き、終焉の日のこの世界への神様のさばきに至るまで描かれているのです・・・。まるで、この世界の秘密の鍵を手にしたような気がします。

「私には、この世界で隠されていることを知ることが許された」。その思いに、タエの胸は高鳴りました。輝くネオンの空の先に、今にも雷鳴がとどろいて、十字の光が夜の暗がりを引き裂くのが見えるような気がします。

タエは、父親ほどに年の離れた夫を持っておりました。夫は優しく、タエが心のままに生きることを許してくれる人でした。今頃、夫は一人で眠っていることでしょう。タエは今夜も「聖書を勉強しに行きたいの」そう思い立ったように告げて、家を出ました。夫は「十分に気を付けて、できるだけ早く帰るように」と言って、夜中の外出だって許してくれます。気まぐれで、思い立ったことは何でもしてしまう、子どもじみたタエを受け入れ、タエが信仰を持ち教会にも通いだしたことも、喜んでくれておりました。その日学んだことを子どものように話すタエを、父親のように優しく見つめてくれるのです。タエは、夫のことを時折「パパ」と呼んでいました。タエにとって、夫は父親に求めたかったものを求められる相手でした。夫も、「妻と娘が同時にできたようだ」と言ったものです。

この夫は、タエの3度目の結婚の相手でした。タエは20代に一度、30代に一度結婚しており、娘も育ったあとで50代になってから、3度目に結婚した人でした。結婚をするにも、子どもを持つにも、タエの心は自分自身がいつも飢え乾いており、幼いままでありました。そのため、娘にだって満足に母親らしいことをしてやれたか分かりません。娘は、結婚して遠くに住んでおりましたが、連絡をよこすこともほとんどないありさまでした。タエの心は、妻になろうと、親になろうと、水色のソーダ色のゼリーの中に生きるような、幼い頃の夏休みを求め続けておりました。何にも責任を持たず、無邪気にスカートのレースのフレアーを踊らせて、移ろいきらめく七色の季節を楽しんでいたいと思い続けてきたのです。

そして、その思いをかなえてくれるような夫と、3度目の結婚で出会ったのです。子どもを一人で育てるために、床につくばって清掃の仕事をしたことだってありました。人並みに苦労をしてきたと自負する分だけに、自分の人生をいつか取り戻したいという思いを持ち続けてきたのです。

聖書の中でも、石打ちの刑にされようとしている女に、またサマリヤの女に、罪の女と書かれた女に、なぜか心引かれました。心にひどい飢えがあって、深い罪に陥らずにいられなかった女たちは、まるで自分自身のように思えました。そして、そんな女たちを深く憐れみ愛されたイエス様に甘えるように「私も罪びとであります」と泣き崩れて、信仰を告白したのです。イエス様はタエの犯してきたどんな罪も、慈しみのまなざしで赦(ゆる)してくださるようでした。そして優しくタエを起こして「もう罪を犯さないように」とほほ笑んで言ってくださったのです。罪を犯して、行き詰まるのもタエ自身です。罪を犯すことに良いことなど一つもないのだ、とイエス様はタエに教えるようでした。そしてタエのために「もう罪を犯さないように」と愛深くおっしゃるイエス様に、涙をぬぐいながら「はい」と答えられたのです。

それでも、日々小さな罪を犯します。夫をぞんざいに扱ったり、つい八つ当たりをしたり、愚にもつかないうわさ話に時間を費やしたり。毎夜、寝る前に、神様の前に一日の罪を告白して、許しを請うことの繰り返しです。そんな不出来なタエの歩みも、神様は許し見守ってくださいました。神様は、人が罪を犯さないものになれるとは、思っておられないのかもしれません。ただ、神様と十字架にすがって生きる者を、親がその懐の中に入る子どもを決して拒まず愛でるように、慈しんでくださるのです。

タエはよくできた子どもではありませんでした。それはタエ自身もよく分かっておりました。でも、神様は不出来な子からは特に目を離せないかのように、タエを守ってくれたのです。その愛が、どんなにうれしくあったでしょう。それは、人間の世界ではどんなに得たくても得られなかった、愛の世界でありました。

「主よ、わが心はおごらず、わが目は高ぶらず、わたしはわが力の及ばない大いなる事とくすしきわざとに関係いたしません。かえって、乳離れしたみどりごが、その母のふところに安らかにあるように、わたしはわが魂を静め、かつ安らかにしました。わが魂は乳離れしたみどりごのように、安らかです」。詩編の131篇にタエは線を引きました。タエの心は、この聖句のように安らいでおりました。

パタンと聖書を閉じると、バッグの中に荷物をしまってカフェを出ました。まだ町は夜に包まれており、ビルの向こうには、月が薄雲の中で輝いておりました。都会の瘦せた木々も新緑を芽吹かせ始めており、夜はまだ寒くとも、春の訪れを感じました。

家に帰ると、夫はすやすやと眠っていました。タエも着替え、布団をめくると夫の隣にそっと入りました。

脱ぎ散らかした服でいっぱいのような過去に、タエは思いをはせました。傷つけた娘、犯した過ち、迷惑をかけて去っていった友達。今さら片づけようがないほどに、散らかった過去を想うと胸が締め付けられました。「取り返せるものなら・・・」と、タエは声を鎮めて顔を覆い、泣きました。

気が付けば、窓の向こうから鳥のさえずりが響き始めており、眠ったのかずっと起きていたのか、分からないままに朝を迎えました。不思議な白い朝でした。部屋の中にも霧が立ち込めているように、白い光で朝が満たされておりました。

隣を見ると、夫はもう起きているのか、おりません。タエもガウンを引きずり、リビングに向かいました。キッチンには人の気配がありました。朝の弱いタエの代わりに、よく夫は朝食を作ってくれるのですが、今朝もリビングの白い丸テーブルの上には、トーストとゆで卵とコーヒーが用意されておりました。カーテンから差し込む光がまばゆすぎて、夫の姿がよく見えません。

「パパ?」タエは夫を探すように呼びました。すると、ふくよかな優しい声で「聖書の勉強で疲れただろうから、よく食べなさい」とキッチンのほうから語られました。それは夫の声でもありましたが、どこか懐かしい‘誰か’のようでもあったのです。

タエはコーヒーを口に含みました。鼻にツンと入る芳醇(ほうじゅん)な香り、口の中を満たすほろ苦いコーヒーは、まるでこの世の飲み物とは思えない深みを持っていました。トーストも、いつもとは違うように思えました。厚切りのパンに染みたバターが、口の中を蜜のように満たします。

「パパ?すごくおいしいわ」。部屋が光で煙ります。その靄の中で向かいに座ったのは、夫のようで、夫ではありませんでした。それはいつか出会った、あの麗しい天使様であったのです。

「おいしいなら、それは良かった」。天使様はそう言って、頬杖をついてタエを見つめておりました。タエはドキドキとしながら、コーヒーを飲み込みました。すると天使様は、タエの短くカールされた前髪をそっと撫ぜて言ったのです。

「娘よ。そして、妹よ。もう罪を犯さないようにしなさい、とイエス様がおっしゃられたように、ただ前だけを見つめて歩みなさい。すると、不思議と過去も片付いてゆくものなのだから」。そう言った天使様のほほ笑みは、どんな絵画でも描けないほどに麗しく、美しかったのです。

タエは目に涙をためて、呆然とその姿を見つめていました。鳥のさえずりが響いています。まるで天国で朝を迎えたように、心の霧は晴れてゆきます。‘本当の朝’というのはこんなにもすべてを一新する力があるのだと知るように、タエの心は光で満たされました。

まばゆい光がほどけてゆきます。先ほどまで煙っていた部屋が少しずつ、輪郭をあらわにしてゆきました。するとタエの前にいるのは、天使様ではなく、優しくほほ笑む夫でした。

「コーヒーのおかわりはいかがかな」。夫はそうほほ笑みました。タエは夢からさめたような、それでも夢の続きにいるような気持で「今日のコーヒーはすごくおいしい」とカップを差し出しました。

夫はカップを持ってキッチンに向かいました。「いつもありがとう」。タエは心からそう言いました。それは夫に・・・そしてタエを守る大いなるものに・・・。

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◇

さとうりょうこ

1978年生まれ。埼玉県在住。2013年、日本ホーリネス教団久喜キリスト教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、加須市の東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、我孫子バプテスト教会に転籍し、夫と猫と3人で暮らしながら教会生活にいそしむ。フェイスブックページ「さとうりょうこ 祈りの部屋」。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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