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み使いダニエル

(み使いダニエル・信仰者編)コータのものがたり 星野ひかり

2021年3月18日19時59分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル・信仰者編)リカのものがたり 星野ひかり+

人はどれほどみじめなものだろうか。
人はどれほど恥ずべき土くれだろうか。
みじめな愛から生まれてきた。
みじめな愛を故郷として、父母のもとから生を受けた。
同じように生きている。神から顔を背けて。

コータは初めてできた恋人と、また些細なことでけんかして、別れ話を切り出しました。恋人は、物を投げつけて暴れていました。髪を振り乱して泣きわめく恋人を、コータは冷たい瞳で見つめていました。(憐れなものだな。ただ一人になりたくないだけじゃないか。)そう思っていたのです。

「一人になりたくない」・・・その思いだけで、コータの父母はとっくに破綻していた関係を続けていたように思えていました。そこには尊敬や信頼といった尊き感情などみじんも感じられなかったのです。コータの父はよく母をなじり、時に叩きのめしても、母を離しませんでした。また母もそんな父から何をされようとも、離れようとしませんでした。「別れようとしても、情があるのよ」。母は、ことあるごとにそう言いました。それを聞くたびに、むしずの走る思いをしました。

育った家は、父母のけんかのたびに出来たふすまの穴や壁のひび、割れたサッシも直されたことはなく、コータの心をその家同様に、荒んだものに育てました。早く家を出たい一心で、まだ若いうちに建造物の解体の世界に入りました。来る日も来る日も重機を操り、今まで誰かが暮らしていた家を、また大きなビルを壊しました。そこにかつて人の暮らしがあり、また賑わいがあったはずの建物を、ただのがれきとしていくのです。在ったものを崩し、砕いて、粉々にして、それだけが仕事の毎日が、コータの心を一層乾いたものへとしていくようでありました。

老年の先輩たちに連れていかれたスナックで、今の恋人と出会いました。熟年の婦人が一人で切り盛りしている、小さな暗いスナックでした。そこにたまたま手伝いに来ていた婦人の姪は、愛情に飢えて人懐っこく、彼女からコータへ情熱的なアタックがあって、すぐに付き合い始めました。しかしコータには人を大切にする術も、そもそも‘愛’について何も分からないままでした。

コータは夜な夜な聖書を開き、読んでいました。それは、ずっと昔に母親が、破綻した暮らしの救いを求めて買いあさったものの一つでした。聖書には愛について書かれているとうわさに聞いておりました。‘真実の愛’というものが本当にこの世にあるのなら、それはここにしか書かれていないような確信を、なぜか持っていたのです。だって、そこには男女の愛のことはほとんど記されていないのですから。コータの知る愛とは、男女のものでしかありませんでした。しかし聖書の世界に出てくる愛といえば、神様との父子のような愛、または師弟のような愛、同じ神様を信じる者同士の兄弟愛・・・憎しみや裏切り、失敗もありながら、神のみもとに導かれる、それはあまりに麗しく、非現実的なものでありました。

聖書の世界、その祈りや賛歌も、コータの住む世界からはかけ離れたものであったのです。だからこそ、この神様を信じる以外に道はないような、切迫した思いがありました。この道以外に自分が命を保っていられる道はないと、コータは思っていたのです。

「またあの子に別れ話をしたそうじゃないの。泣いて電話があったわよ」。そう言ってウイスキーをグラスに注ぐのは、彼女の伯母のスナックの主人、‘ヨウコ’でした。コータは一人でよくここに飲みに来るのです。「ご迷惑ばかりかけてます」。コータはそう言ってウイスキーを頬張りました。

「何がそんなに不満なの?」ヨウコは困った顔をして、「あの子は親の愛情を知らないようなところがあるから、大変なのは分かるわ・・・」と言いました。「それは俺も同じですから」。コータはそう言ってうつむきました。頭の中によぎるのは、洗濯物がうず高く積もって、片づけられることもなかった実家の食卓の様子です。まるで毎日がれきの中で食事をしているようであり、コータは解体現場にいつも実家の食卓を思い出すのです。

「お祈りしましょうよ」。そう言って身を乗り出して、ヨウコは胸元からペンダントをまさぐりだしました。ヨウコの宝物の、十字架の刻まれたペンダントです。ヨウコはそのふくよかな柔らかい手で、コータの手を握り祈り始めました。「天の神様、どうか私たちの心の傷を癒やしてください。そして私たちを、愛の分かる者にしてください。イエス様の尊き血潮に感謝して、この祈りをおささげします」。「アーメン」とつぶやいて、心から求めていました。‘助けてください’と。

コータの家庭は、がらくたのように壊れてしまっておりました。母親は心を病んで入院し、父親は荒んだ家に取り残されて、お酒を浴びて暮らしているようでした。そのこともコータの心を苦しめていたのです。「いつか3人で教会に行きましょう。私もいつまでもこんな仕事は続けられないし、あなたたちも、きっと教会で結婚したら幸せになれるわよ」。ヨウコは陽気に励ましました。教会なんて行ったこともないくせに、そこに行けば神様の国があるかのような、強いあこがれを抱いていたのです。そんなヨウコのみじめさが、コータは好きでした。

ある雨の日の仕事場は、母親の入院している病院のそばでした。コータは昼休みに母の病院を訪ねました。まとわりつくように暖かい、なんだか不思議な霧雨が、包み込むように降っていました。雨雲に覆われた空の下で、白い巨大な病院が光り輝いているようでした。エレベーターの入り口で受け付けを済ませて、母の入院する病棟に上がってゆきました。白い壁に白いベッドの並ぶ病棟には、絹糸でできたような歌声がどこからか聞こえてくるようでした。母の病室のベッドは空で、コータは母親を探しました。すると、食堂の脇のベンチで、薄曇りから差し込む光を浴びて、母が歌を歌っていたのです。母は疲れ切ったように痩せており、光に向けられた横顔は、とても美しく見えました。

母はコータに気付くなり、「私の赤ちゃん」そう言ってコータに手を伸ばしました。コータは母にほほを撫ぜられ、悲しくはにかみました。母の目はまるで幼子のようにあどけなく、澄み切っており、その瞳の先に何か本当に美しいものを見ているかのようでした。

その時、「来てたのか」と懐かしい声がして振り向くと、父の‘ケンジ’が立っておりました。驚きました。家で酔いつぶれてばかりいるはずの父親が、見たこともないような優しい笑みで、母の描いた絵をパウチにしてもらったとうれしそうに話すのです。

「これで濡れても大丈夫だ」。そう言って母の描いた絵を見せます。それは、美しい天使様と虹色の光の波を色鉛筆で描いた絵でした。その絵は美しいだけではない力で、コータの心に迫りました。(知ってる)この天使様を、僕は知ってる。なぜかそう思ったのです。そして母はこんな世界に生きているんだ、と思いました。

「幸せだね」。そうつぶやくと、父親は笑いました。父親は砕かれたように、弱く優しくなっていました。その姿に、コータは「情があるの」と言っていた母の言葉を思い出しました。

「情か・・・」そう声なくつぶやいて、コータは仕事場に戻りました。母の描いた天使様の世界の絵が、心から離れませんでした。その日も、夕方5時までひたすら重機に乗って建物だったものを砕いていました。でもなぜでしょう、心には温かいものが滲むようでありました。まるで母の絵の中に、世界があるような気がするのです。

がれきの山を見渡すと、(たとえ壊れても、終わりじゃない)そうどこからか声がするようです。その声は、まるでどこかで出会っている天使様の御声のように、コータの心に響き続けました。このがれきの山の中にも、やがて新しい景色が生まれることでしょう。新しい人の暮らしが、そこに生まれるのがまるで見えるようでした。

人は罪を犯しやすく、その心も脆いものです。つまずくたびに、破綻するたびに、壊れたと思うたびに人生が終わっていたならば、命は幾つあっても足りません。私たちの足は、神様の御手によって、何度でも立ち上がれる強さをもってつくられているのですから。

その晩、不思議な夢を見ました。コータは真っ白な光の世界におりました。光の波間に空も花も木々も、色の粒を放って輝いており、すべての命が混ざり合い、慈しみ合うようにつながっているような景色でした。コータはそこに、幼子の姿をして立っていました。すると白い衣を着た背の高い天使様が、コータを見下ろしているのです。天使様は、瞳からまばゆい光の粒をこぼしながら、コータを見つめておりました。天使様の優しいまなざしの光が、心に染み込んでゆくことを感じました。天使様は、何も言葉を言わなくとも、すべてを分かり合える、そしてずっと知っていた兄のようであったので、コータは何も言う必要もなく、ただ自然と手と手をつなぎました。(知ってる。)天使様のまなざしは、そう言っているようでした。コータの苦しみ、悲しみ、涙の道のり、そのすべてを(知っている)ただ、そう言っているようでした。

幻を見ていたように目を覚まし、窓から光が差し込んでいるのを見ました。それは、まるで天の世界の御手のように、コータを抱きしめるようでした。

それから3カ月の時がたった頃、コータはヨウコと彼女と3人で、初めて小さな教会を訪ねました。ヨウコも彼女も意気込み過ぎたお洒落をしており、教会には不釣り合いなほどでした。

「イエス様に誓って、結婚式を挙げたいんです」。3人から、真面目な顔でそんなお願い事をされて、牧師はうれしそうに笑っていました。「それではまずは、聖書から結婚について学びましょう」と聖書を開き、「まず、人は男と女につくられました。2人がもはや1人ではなく、一体となり生きてゆくようにね・・・」と話してくれたのです。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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