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み使いダニエル

(み使いダニエル・信仰者編)リエのものがたり 星野ひかり

2021年2月4日18時21分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル・信仰者編)リカのものがたり 星野ひかり+

リエはベッドに腰かけ、ライティングデスクを引き寄せて聖書とノートを開きました。開いたのは詩編・・・毎朝4時には目が覚めてしまうリエは、詩編を書き写しながら明かりのつく6時までの時間を過ごしていたのです。

ここは精神病院の閉鎖病棟。リエはずっと昔に、違う病院の閉鎖病棟に入院していたことがありました。その頃は今よりもずっと重い病状で、錯乱状態と言えるものでありました。今はその頃よりはずっと落ち着いた状態で、昔を懐かしみながらの入院生活は2カ月がたっておりました。

閉鎖病棟の雰囲気は嫌いではありません。古い病棟は窓の格子もアンティークのような面持ちで、まるで刑務所のように社会と隔絶されていて、看護師さんたちはよく働いて、食事に服薬、入浴と、規則的な毎日を与えてくれておりました。

2カ月前まで、リエは普通の生活を送っていたはずでした。信仰者の夫を持ち、夫に倣って教会に通い始めました。優しい夫の帰りを待って、手料理を食べさせて、枕を並べて眠っていました。昼には日差しの中で洗濯物をたたんで、週末には夫と教会・・・甘く穏やかな生活にたゆとうように、のんびりとした主婦生活を送っていたのです。

リエは2カ月前、日差しの午後にベランダの花壇の世話をしておりました。その時に、ふと ‘何か’ を壊したくなったのです。気付けばリエは次々と、花壇の花たちを根こそぎ引き抜き、ベランダから落としていたのです。わらわらと警察が押し寄せて、てんやわんやの騒ぎの中で格子のついた車に乗せられ、この病院に搬送されたのでした。

幸いけが人などは出なかったと聞きました。どうしてあんなことをしたのか、リエにはよく分かりません。ただ ‘壊したい’ という衝動が、とても純粋でどうしようもないものであったことだけはよく覚えておりました。

区切りの良いところを見つけて、ペンを置きました。間もなく明かりがついて病院が動き出す6時が来ます。リエはデスクの引き出しからたばこを取り出すと、病室を出てまだ暗い廊下をぺたぺたと歩きました。ガラス張りのナースステーションをのぞくと、看護師さんたちはあわただしく朝の薬の準備をしています。リエはジェスチャーで「もう6時」と伝えました。すると看護師さんは病棟内の明かりをつけて、喫煙所の鍵を開けてくれるのです。

病棟内の喫煙者たちがわらわらと集まりだして、あっという間に喫煙所は満杯。リエはたばこの煙を吐き出して、その煙の行く先をぼんやりと見つめました。昔、苦労して辞めたたばこでしたが、入院を機にまた始めてしまいました。他にやることがなかったと、夫には言い訳をしていますが、たばこを吸うと昔の自分に出会える気がするのです。昔の自分、昔の傷、まだ残っているかさぶたをあえて剥がしてその中の血を見つめるように、リエはたばこを吸うのです。

病棟には傷ついた人がたくさんいました。心だけではなく、爪で腕をかきむしって膿んでいる女性もおりました。言葉は交わさなくても、ここにいるみんなに神様を伝えたい気持ちが湧き上がります。

朝のたばこが終わると、着替えて部屋で朝食を待ちます。格子窓の向こうから鳥の声が聞こえます。朝食の後は服薬、あとは何にもすることのない、長い一日が始まるのです。

リエはカーテンを閉ざして薄明かりの中で、聖書を開き、書き写しました。病室で読む聖書は、まるで神様が直接語らってくれるように、近しく感じられるのです。毎週教会に通っていてもこんなに神様を近しく感じたことはあったでしょうか。リエは夢中で聖書を読み、書き写しておりました。

ダニエルはその傍らで、リエを見つめておりました。病室を七色の聖なる風で満たし、リエの部屋を聖別しました。そして、リエにみことばから本当の癒やしが与えられることを願いました。

「あなたが壊したかったものが何か私には分かります。何かを壊しさえすれば、過去の古傷の中に戻って、ずっと住んでいた自分の故郷に戻れるように思ったのでしょう」。ダニエルは悲しそうにつぶやきました。

リエの人生は結婚を機に変わりました。それはとても良いほうに。それまでのリエの暮らしは、社会的にも愛の上でも、行き詰まったものでした。人は、試練の多い人生の中に置かれると、光を諦めてしまうことがあります。光を諦めて、闇の中に、涙の一滴の中に、安息を覚えようとするのです。少なからずリエもそうでありました。痛みの中に、自分自身を傷つけた血の一滴の中に、慰めを得ていたのです。リエの場合、夫を持って、また信仰を持ち、一見幸せになったようにも思えたでしょう。しかし深い深いところでは、それまでの故郷と切り離されるような痛みがありました。

「壊したい」そうしたら戻れるような気がしたのです。ずっと長いこと自分の故郷としていたような痛みの中に。そこは一見誰も行きたがらないようなところでしょう。暗い闇のふちにあって、誰とも一緒に来られない、孤独なところなのですから。

(でもそこにあったの。)リエはか細くささやきました。(そこは暗くて寒いはずなのに、なぜか何かに包まれて愛されている気がしていたの。)(そして、その愛こそ神様であったのではないのかと、私は今調べているの。)

ダニエルはリエの頭を抱き寄せました。「その通りです。あなたが母の胎のうちで組み立てられているときより、あなたの髪の毛の一本すらいとおしみながら造られた主は、あなたから目を離したことなど一度もなかったのですから。あなたはそのまなざしを感じていた、幸いな主の娘であり続けたのです」

リエは胸のうちに響く声に呼応しながら、陶然として、聖書を書き留め続けました。

昼食の時間になると、夫は会社を抜け出して差し入れを持って病棟を訪れてくれました。夫が来る時間が近づくと、リエはナースステーションの前で待ち始めます。甲斐甲斐しく毎日同じ時間に通っては、リエの洗濯物を持ち帰り、洗ったものを手渡して、また大切なたばこを差し入れてくれました。

夫の献身は今に始まったことではありません。結婚当初から今に至るまで、どんどん夫はリエを愛し守ることを生きがいとしたのです。

夫と話せる時間はわずかでした。そして口下手な夫でありました。それでもそのまなざしからは、リエを理解したいとする思いがあふれ出ているようでした。

結婚してから今日まで、まるで夫は光の当たるほうへと手招きしてくれるようでした。神様の存在を教え、教会の兄弟姉妹たちとの交わりの輪にも加えてくれました。早くリエがつらい過去を忘れるように、最大限の慈しみをもって接してくれたのです。もう社会的に孤立して、行き詰まることもないし、愛の不在におびえることもないんだと、訴えかけるようでした。

「こっちにおいで」と明るいほうへと手招きする夫にリエは、「私はいやよ、そんなにまぶしいところは目がつぶれてしまう」と嫌がりました。それでも徐々に夫は木漏れ日の差すほうへと導いていったのです。

リエは訴えることでしょう。「きっとまた壊したくなるわ」。夫はきっとこう言うでしょう。「そうしたらまた建て直せばいい」と。

夫と共に教会に行ったある日、リエは学びの会で、エリヤが荒野に逃げ込んで、神様に死を願った話を聞きました。息も絶え絶えなエリヤのもとに神様はみ使いを遣わして、エリヤに焼いたパンと水を与え十分な休息と癒やしを与え、ホレブの山まで導いたというお話です。リエはその帰り道に夫を見つめ、エリヤに遣わしたみ使いのように、神様は必要な助けを必ず与えてくださることを確信したものでした。

3カ月の入院の期間が終わり、リエは家に帰されました。医師からは1カ月は安静にするようにとくぎを刺され、入院生活で飲んでいた薬も引き続き出されました。夫は入院生活のたくさんの荷物を運んでくれて、2人共だって久しぶりの我が家に帰ったのです。

部屋は一見片付いておりましたが、台所のシンクは黒カビが生え始め、部屋の角には埃がこんもりと溜まっていました。「これじゃあ安静になんてできやしないじゃない」。リエは不満そうにつぶやくと、さっそくスポンジを持って台所を磨きにかかりました。

「よくもここまで汚せるわね」。夫は情けなさそうに「これでも頑張ったんだがなあ。やっぱりリエちゃんがいないと俺はダメだな」と言いました。「そうよ」。つっけんどんにそう言いながら、リエは涙をぬぐいました。夫はそれに気付いてリエに寄り添い抱き寄せました。「おかえり」

ダニエルは2人の暮らしをこれからも見守ってゆくつもりです。リエが暗闇のとりこにならないように、光のまばゆさに目をそらしてしまわぬように・・・。だって、リエの本当の故郷は天の御国であって、その国はこの世界中の宝石を集めてもこぶし一つにもならないほどに、光り輝きさんざめく世界であるといわれているのですから。

そして信仰者たちの胸には、その光が宿っており、この暗闇の世界の中で輝きながら、御国のやがて来ることを知らせるために生きているのだといわれるのです。天から主の大軍のラッパがとどろき鳴り渡るとき、世界は新しくされるため、生みの苦しみを通ります。その光のまばゆさに、到来する愛の全きことに、人々は耐えきれずに耳をふさぎ目を覆い、身もだえすることでしょう。

心のうちに闇を抱えたままであっては、信仰者であっても神様の光を直視することはできないのかもしれません。神様の光のまばゆさに、愛のあまりの尊さに、顔を背けずに生きられるよう、リエも一歩一歩歩んでいます。

いつか心のうちが、全き光で満たされるよう、信仰者たちも己の心の暗闇と闘い続けているのです。きっと誰もが・・・。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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