入管収容所の非欧米クリスチャンとの面会ルポ(1)品川入管「家族と一刻も早く一緒に暮らせるよう祈ってほしい」

2020年1月8日11時44分 記者 : 井手北斗 印刷
+入管収容所の外国人クリスチャンとの面会ルポ(1)品川入管「家族と一刻も早く暮らせるよう祈ってほしい」
ドイツで難民として受け入れられたシリアのクリスチャン男性(写真:フェイスブック / Tabea Bü)

「クリスチャンもいるんですか?」「いるよ。いっぱい」。衝撃であるとともに、ちょっと考えたら分かりそうなことなのに想像すらしていなかった自分の浅はかさを恥じた。知人との会話から牛久や品川などの出入国在留管理庁の入国者収容所に、相当数のクリスチャンの兄弟姉妹が法的根拠や法定基準のほとんどない自由裁量の判断によって長期に収容され、収容者の人権が守られていないケースがあると知った。外国人の人権を守ろうとする弁護士や市民活動家、さまざまな教派のクリスチャンらが面会や差し入れをはじめとした大小さまざまな支援をしていることも知った。前々から聞いたことはあったが、詳しく事情を聞く機会は今回が初めてだった。

祈ると、神様がこれを知らせたのは自分をそこに送って彼らに会わせることで何かをされようとしているのではないかという思いが与えられた。東京都港区にある東京出入国在留管理局と、茨城県牛久市の東日本入国管理センターに行き、収容されている外国人クリスチャンの兄弟姉妹に会うことに決めた。

下調べ

ちょうどローマ教皇が難民の受け入れについて発言したことが話題になっていた。また、行く前に少しでも移民や難民とキリスト教の関わりを調べておきたかった。そこで自分の記録と他のクリスチャンの人たちの参考になるよう、ツイッター上でクリスチャンらがコメントしている内容や本紙既報の関連記事を集め、「難民の受け入れとキリスト教」としてまとめた。

クリスチャン向けの情報収集だったはずが、一般の人々の目にも少し留まったようで賛否さまざまな意見のコメントが数十個ついたので、キリスト教自体に対する批判への応答を主として返答する中で自分の信仰的立場や考えをキリスト教の世界観を前提としない人々に向けて説明する機会となった。

品川入管への訪問

事務所から山手線で品川駅はすぐ到着する。バスに乗り換える。品川の入管は当事者として何度か来たことがあったが、面会で行くのは初めてだった。今回入るのは見覚えのある出入り口ではない。MENKAIと表示された所から入った。

面会希望者は申請書を書いて提出しなければいけない。クリスチャンの被収容者に会わせてくださいと祈った。支援者の知人が把握している収容者の名前のリストからクリスチャンの名前らしき人、そしてできるだけ深い話をするために英語が公用語の国の出身者を探し出して申請書に記入した。品川入管の収容者リストには米国、EU、カナダ、オーストラリアなどの欧米諸国出身の人は一人だけで、牛久入管の収容者リストに欧米諸国出身者はなかった。入管に収容されている人は中東、アフリカ、東南アジア、南米など非欧米諸国の出身者が圧倒的に多いということだ。もう一つの特徴は非欧米諸国出身者の中でも中国と韓国の被収容者の割合は非常に少ないことだった。自国民に人権侵害をすれば黙っていないような国の出身者は被収容者にはおらず、相対的に日本との力関係が弱い国の出身者が被収容者になっているように見えた。

申請書を1階の受付に提出すると、エレベーターで上の階に行くよう指示された。エレベーターを降りると、目の前に写真撮影と録音を禁止する旨の張り紙があった。この階にはまた別の受付があり、そこに下の受付ではんこの押された書類を提出し、被収容者との面会を待った。

呼び出され、荷物をロッカーに預けるよう指示された。スマホ、カメラ、録音機の類を面会室に持ち込んではならないため、ロッカーに入れてから面会せよということだった。紙とペンは持ち込んでもいいらしいが、短い時間で心の深いところまで、信仰の深い世界まで行くには、会話、表情、ノンバーバルコミュニケーションに集中しなければいけない。手ぶらで行き、会話内容は頭で覚えようと決めた。

ロッカーに私物を入れ、面会室に入って待った。面会室は机とその上に伸びるガラスの壁で真っ二つに仕切られており、ガラスの隙間から会話だけができるように設計されていた。直接の物品の受け渡しや接触は部屋の構造上もルール上もできない。表面を見渡す限り面会室に監視カメラや録音マイクは見えなかった。

知人は、被収容者は人に会う機会がほとんどないから、人に会って話すだけでもうれしがると言っていた。人に会うだけで喜ぶような状況に直面したことも、そのような状況に置かれた人に会ったこともなかった。正直言うと、話をするだけでは何の助けにもならないような気がして、がっかりさせるのではないかと不安だった。その不安を打ち消してもらうように、また、何らかのご用に自分を用いていただけるように祈った。

まだ何のご用で自分がこの部屋に導かれたのか分からなかった。しかし、仕切られた部屋の向こう側のドアが開き、人が入ってきた瞬間、その不安はどこかに飛んでいった。本当にうれしそうに見える人が入ってきたからだった。

デイビッド・アクア兄弟

最初の面会で会ったのは、ガーナ出身のデイビッド・アクア兄弟だった。以下に、アクア兄弟と英語で対話した内容の記録を見ながら日本語に訳し要約したものを紹介する。

あいさつをし、自分がクリスチャンであること、話すために会いに来たことを伝えた。アクア兄弟は自分もクリスチャンであると言い、自分に会いに来てくれてありがとうと述べた。筆者はこれまで何があったのか聞かせてほしいと言った。アクア兄弟は両親ともにクリスチャンで、自分も自然とクリスチャンになったという。幼少時におじに連れられて妹と共にガーナから来日した。日本では職業訓練を受け、自動車の塗装の職に就いた。結婚し、子どももできた。来日してからはアッセンブリーズ・オブ・ゴッドの教会に通っていたという。

そのように生活していた矢先、アクア兄弟は突然何らかの役所から呼び出され、日本での滞在について申請したときに提出した書類に不備があると言われたという。申請書の保護者の欄に、おじと自分の関係が親子として記載されており、親ではない人物を親と記載してあったという不備を指摘されたとアクア兄弟は主張した。申請書を記入し、提出したのは彼のおじで、まだ日本語も知らない子どもだったため、自分は署名しかできなかったという。

そのような理由で入管はアクア兄弟を収容したという。収容後、アクア兄弟は書類の不備の責任はおじに帰するものであると主張し、在留特別許可を求めて裁判を始め、結果を待っている。自宅と収容所が離れていることもあり、家族との面会はたまにしかできない。数人の被収容者と同じ部屋に入れられており、一人一枚配布された薄いマットレス以外に自分の場所はない。もちろんプライバシーもない。

何を祈るべきかは自明である気もしたが、あえてアクア兄弟に祈りの課題を聞いた。アクア兄弟は「家族と一刻も早く一緒に暮らせる日々に戻れるように祈ってほしい」と言った。自分にできることは何かと考えた。「この祈りの課題を紙面で伝えなさい」と神が言ったように感じた。

入管被収容者が読むヨブ記

アクア兄弟は収容所の中で聖書を読んでいるという。聖書のどの箇所から励ましを受けたのかを聞くと、ヨブ記を挙げた。ヨブは特に悪いことをしてもいないのに、サタンが神に、ヨブを苦しめれば神を裏切るはずだと主張して、試練を与えることを神に許可される。神は、試練があってもヨブは神を敬うことをやめず、正しい道を歩むとヨブの信仰を信頼した。ヨブには悲劇が起こるがその理由は分からないのと同様に、アクア兄弟もなぜ神がこの状況に彼を置いたのか理由は分からないという。

「神様も私の痛みを共に感じていてくださるのだと信じます」。アクア兄弟は、この困難な状況下でも神に対する信頼を保つ姿を神に示し続けたいと言った。筆者は、アクア兄弟は自分よりよっぽど強い信仰を持っていると感じた。励ましに来たつもりが、獄中のアクア兄弟に励まされている自分がいた。

第2回【自由裁量の入管法と聖書に挟んだ娘の写真】へ>>

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