日本人に寄り添う福音宣教の扉(86)潜水艦用エンジンが未来を拓く? 広田信也

2019年12月28日19時09分 コラムニスト : 広田信也 印刷
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私の机の上に、クリアファイルに保管された1枚の紙切れが、もう30年以上もずっと置かれている。職場も変わり、環境は随分変わったが、この紙切れだけはずっと私の目の届くところにある。

それは、潜水艦用ディーゼルエンジンの概要を示す技術レポートのコピーだ。今はエンジニアを辞めて国内宣教師となり、仕事の分野が全く変わってしまったが、いまだに私の心を引きつけて離さない。

地球温暖化対策の取り組み

地球温暖化問題は最近、特に話題に上るようだが、環境技術に関わっていた私には、若い頃からかなり絶望的な課題のように見えていた。

私の業務は自動車の排気ガス浄化技術の開発だったが、二酸化炭素については扱える技術がほとんどなかった。いつか二酸化炭素を排出しないエンジン(内燃機関)開発を始めたいと願いつつも、手掛けることは容易ではなかった。

二酸化炭素を吸収できないか?

二酸化炭素は安定した酸化物なので、還元して炭素と酸素に戻すことは無理だろう。しかし逆に、さらに酸化を促進して液体や固体にしてしまうことはそれほど難しくない。現に、海水は多量の二酸化炭素を保有しているし、金属と化合して金属酸化物になっている固体(石灰岩など)は自然界にもたくさんある。

しかし、エンジンから排出される大量の二酸化炭素をその場で吸収してしまうようなことはどだい無理だろうと、はなから真剣に考えていなかった。

潜水艦エンジンは二酸化炭素を全量吸収している

ところが、一部のエンジニアにとっては常識だったと思うが、潜水時間の長い潜水艦用エンジンは、なんと第二次大戦のころより二酸化炭素を全量吸収していたのだ。私の机の上にある紙切れはその技術レポートだった。

今では原子力潜水艦の登場によって、海面に浮上することなく長距離潜航ができるようになったが、燃料を空気中の酸素を用いて燃焼させる内燃機関を使用している限り、酸素の吸入と二酸化炭素の排出は避けて通れない。

酸素を吸入するためには、頻繁に浮上する必要が生じてくる。当然、戦時中であれば、敵の戦艦から攻撃の対象になってしまうので、浮上することなく長距離潜航できるエンジンの開発は重要課題だったに違いない。

このような状況下で開発された潜水艦用ディーゼルエンジンは、液体酸素を装備し、必要な酸素を吸入してエンジンを稼働させ、発生した二酸化炭素のみを排気ガスから全量吸収して、その他の成分をもう一度エンジンの吸気側に送り込む技術を採用していた。私にとっては、まさに目からうろこであった。

実際に手掛けるのは容易ではない・・・

しかし考えてみれば、実際の自動車にその技術を採用できたとしても、大変なデメリットを背負うことになる。まず、二酸化炭素の吸収材を開発し、搭載しなければならない。そして、排出する二酸化炭素を全量吸収すると、おそらく消費した燃料の3~4倍ほどの重さの固定化された二酸化炭素の塊が残ることになる。

潜水艦用エンジンは、吸収した二酸化炭素を加熱してもう一度二酸化炭素に戻し、圧縮して水中に排出しているが、今回の場合は排出しないで自動車内に溜め込んでいくしかない。

40リットル(30キロ程度)の燃料を消費すると、100キロほどの必要のない固体か液体の塊が出来る。たとえ無害といえども、どこに捨てるのか? あるいは再利用するのか?

走行中にどんどん二酸化炭素の塊が溜まって重くなる車を買う人がいるのか? そんな車を開発したいと言っても誰も応援しないだろう。予算もないだろう。などなど考えては、結局手掛けることができなかった。

気付けば30年以上の月日だけが流れてしまった。「仕事は自ら発案し、上司に申し出て実行せよ!」と、入社当時の上司に言われたことを思い出すが、実行しなければ時間だけが過ぎてしまうことを、机の上にある技術レポートは語り掛けてくる。

私を遣わしてください!

前職を離れ8年余りが経過した。いまだに上記のような技術課題が脳裏から離れない。しかし、今は多くの後輩たちがそれぞれのアイデアを実行に移す時である。きっと彼らが良いものを開発してくれるだろう。

国内宣教師となった私には、神様が日本宣教という新たなビジョンを下さった。そして前職と同じように、さまざまな宣教手法のアイデアが生まれてきた。

財源がない! 人がいない! 時間がない! 能力がない! 体力がない! いくらでも言い訳はできるだろう。昔も今もあまり状況は変わらない。ただ、今の私には、将来を見据えて祈る時間がある。神様の御旨に沿った祈りをさせていただきたいものだ。きっと、紅海が裂けて新しい道を歩むような心躍る時が来るのだろう。

もし、今の時代に手掛けることができるなら、今から30年たった頃、私は既に天に召されているだろうが、これらの働きの幾つかは大きな実を見せてくれているに違いない。机の上に30年も置かれたままになることは決してないだろう。そんなことを思いながら、日本人への祝福を祈りつつ、クリアファイルに納められた1枚の紙切れを教訓として眺めている。

私は主が言われる声を聞いた。「だれを、わたしは遣わそう。だれが、われわれのために行くだろうか。」私は言った。「ここに私がおります。私を遣わしてください。」(イザヤ書6章8節)

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広田信也

広田信也(ひろた・しんや)

1956年兵庫県生まれ。80年名古屋大学工学部応用物理学科卒業、トヨタ自動車(株)入社。81年トヨタ自動車東富士研究所エンジン先行開発部署配属。2011年の定年退職まで、一貫してクリーンディーゼル新技術を先行開発。保有特許件数500件以上。恩賜発明賞、自動車技術会論文賞などを受賞。1985年キリスト教信仰に入信し、現在まで教会学校教師を務める。1988~98年、無認可保育所園長。2011年関西聖書学院入学。14年同卒業。ブレス・ユア・ホーム(株)設立。16年国内宣教師として按手を受ける。現在、富士クリスチャンセンター鷹岡チャペル教会員、六甲アイランド福音ルーテル教会こどもチャペル教師、須磨自由キリスト教会協力牧師。

ブレス・ユア・ホーム

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