米国の福音派はトランプ氏を支持しているのか? 実は意見が真っ二つ

2019年12月26日11時01分 印刷
+ドナルド・トランプ
ホワイトハウスで報道陣の取材に応じるドナルド・トランプ大統領=11月4日(写真:ホワイトハウス / Joyce N. Boghosian)

米国では福音派がドナルド・トランプ大統領を支持している、というニュースは言いすぎだ。

トランプ氏支持で知られる米リバティー大学のジェリー・ファルウェル・ジュニア学長は19日、自身のツイッター(英語)に、2016年の大統領選時、米国内の福音派でトランプ氏を支持しなかったのは、「17%程度」しかいないリベラルな福音派だけだったと投稿した。しかし、これは間違っている。

福音派のトランプ氏支持について最も多く引用される数字は「81%」だ(関連記事:白人福音派、トランプ氏に勝利手渡す 81パーセントが支持)。おそらくこれがファルフェル氏の念頭にあったのだろう。しかし、この数字には多くの条件が付いてくる。1つは、この「福音派」には白人しか含まれていないこと。2つ目は、福音派を自認する人しか含んでいないこと。つまり、日曜日に教会に行かず、福音主義的信仰を持たない人も「自分は福音派だ」と自認さえすれば含まれている場合がある。3つ目は、投票しなかった人は調査対象に含まれておらず、彼らが分母に含まれていないこと。そして最後に、この数字は出口調査に基づいたものであり、世論調査として信頼性が劣るということである。

これらの要因を加味すれば、昨年掲載したクリスチャンポストの記事(英語)で説明したように、トランプ氏を支持する米国内の福音派はよくて半数、 あるいは半数以下ということもあるだろう。

これを理解すると、米政治専門サイト「ポリティコ」と米調査会社「モーニングコンサルト」が行った最新の合同世論調査(英語)で、43%の福音派がトランプ氏の弾劾に賛成したという結果がもっと納得のいくものとなる。

この調査では、トランプ氏の弾劾について、34%の福音派が強く賛成、9%がやや賛成、4%がやや不賛成、49%が強く不賛成だった。これらの数字から、米国の福音派は、ファルフェル氏や他の人々が提唱するよりも、トランプ氏についてもっと意見が分かれていることが分かる。(この合同世論調査では、福音派の定義、また福音派に非白人も含まれているのかが明記されていない。問い合わせをしているが、返答があり次第情報を更新する)

前述のファルフェル氏のツイートは、米福音派誌「クリスチャニティー・トゥデイ」のマーク・ガリ編集長が、トランプ氏の弾劾を呼び掛けたことで起きた複雑な状況が背景にある。この議論の中で、福音派の大多数の意見を代表すると主張する多様な声が上がった。

クリスチャニティー・トゥデイ誌でトランプ氏の弾劾を呼び掛ける論説(英語)を掲載した翌20日、ガリ氏は米CNNのインタビュー(英語)に応え、自分の意見に同意しない福音派を「極右」だとレッテルを貼った。

一方、トランプ氏はツイッター(英語)で、同誌に「極左の雑誌」とレッテルを貼る投稿をし、ガリ氏の論説に応じた。

同誌を創設した故ビリー・グラハム氏の息子であるフランクリン・グラハム牧師は、「(クリスチャニティー・トゥデイ誌は)最もエリート主義のリベラルな福音主義者らを代弁している」と書いて、同誌を批判した。

ベストセラー作家のテレビ伝道者であるジェンテズン・フランクリン牧師は、クリスチャンポストに掲載した寄稿(英語)で、ガリ氏の論説は「一人の意見にすぎない」「米国における今日のキリスト教(クリスチャニティー・トゥデイ)の価値観や心を反映するものでは決してない」と書いた。

米プロテスタント最大教派である南部バプテスト連盟の元議長であるジャック・グラハム牧師はツイッター(英語)で、クリスチャニティー・トゥデイ誌は「ますますリベラルになってきており、保守的なクリスチャンと教会との歩調を乱しており、彼らの実態を把握していない」と主張した。

米宗教月刊誌「ファースト・シングス」で編集主任の一人を務めているカトリック信徒のマシュー・シュミッツ氏は、米ニューヨーク・ポスト紙に掲載した寄稿(英語)で、クリスチャニティー・トゥデイ誌の編集陣が「福音主義者であることを機能的に停止している」と書いた。シュミッツ氏はその理由として、同誌に寄稿を掲載している多くの若手執筆者が「(保守派政治コメンテーターの)タッカー・カールソンのトーク番組に出演するよりむしろ、(リベラルな)ザ・ニューヨーカー誌とフリーランス契約したいと強く願っている」からだと述べている。

クリスチャニティー・トゥデイ誌の社長へ宛てた共同書簡で、200人近い福音派指導者は、トランプ氏を支持する福音派の声を代弁していないとして同誌を糾弾し、次のように述べている(関連記事:福音派指導者200人近くが署名、共同書簡で米クリスチャニティー・トゥデイ誌を非難)。

「もちろん、貴誌が以下の署名者に代表されるような福音派の声になろうとするのか、しないのか、決めるのはあなたの出版方針次第です。そしてまた、あなたの出版物をインターネット上、または印刷物で、読んだり、広告を出したり、購読したりするのは、私たち、あるいは私たちのような福音派次第です。しかし、歴史的に私たちは、あなたの読者でした」

そして、ファルフェル氏は前述のツイートで、クリスチャニティー・トゥデイ誌は「社会的福音を何十年も宣布してきた、17%程度しかいないリベラルな福音派の一部だ。その正体がバレた!」と述べている。

誰が正しいのだろう? 誰も正しくはない。もしくは皆が正しい。それは個々人がどう見るかによる。福音派はあまりにも多様で、誰であっても一個人によって大多数を代弁し得るものではない。福音派に教皇はいないのだ。

米カルヴァン大学のリスティン・コーブズ・ドゥメズ准教授(歴史学・ジェンダー学)が今年1月に発表(英語)したように、福音主義というものを考えるより良い方法は、「さまざまな福音主義」が存在するのを認めることだ。

ドゥメズ氏は、「福音主義は神学的なカテゴリーの一つなのだろうか? もしくは文化的な動きなのか? 白人の宗教ブランドなのか? 多様でグローバルな運動なのか? もしかして、その答えが『それらすべて』だったらどうするのか?」と問い掛けている。

そして、米政治学者ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』におけるナショナリズムに対するアプローチを引き合いに出しながら、次のように述べている。

「実際には、さまざまな福音主義が存在しているのです。そしてそれぞれは、異なった中心点と境界線を伴って想像されているのです。われわれが、もし福音主義というものを、一つの想像された宗教共同体だと捉えるなら、もし福音主義というものを、本質的に限定され、よそ者と内輪とで隔てられたものとして想像するなら、われわれは権力の問題については入念な注意を払わなければいけません」

同様に、米南カリフォルニア大学の宗教市民文化研究センターによる報告書「米国の福音主義の多様性」(2018年11月、英語)では、以下の5種類の福音主義が存在すると議論されている。

  • トランプ福音派(Trump-vangelicals、造語):積極的に意見を表明し、現在、最も目立っている福音派のグループ。
  • 新原理主義者の福音派:トランプ福音派と神学的、政治的に同程度保守的だが、自身の支持する政策達成へのアプローチは純粋主義的。
  • i福音派(iVangelicals、造語):主に福音派のメガチャーチで広く見られる。教会として大衆文化にアプローチするのに非常に秀でており、教会の政治的な見解が論争を呼ばないように心掛けている。
  • 神の国的クリスチャン:地域社会と多様な関係性を構築し、政治的・宗教的所属にかかわらず地域職員らと協力して人材開発を進めることで、この地上における「神の国」の建設に焦点を当てている。保守的というよりもリベラルな傾向がある。
  • 平和と正義の福音派:貧困や人種差別、男女同権、移民政策改革、刑事司法改革、戦争や軍事主義、環境保護などの活動に取り組んでいる牧師やNPO指導者、教授、活動家の緩いつながり。

しかし、これらのうちどれも福音派全体を代表するものではない。

トランプ氏支持のことに話を戻せば、ジェリー・ファルフェル・ジュニア、ジェンテズン・フランクリン、フランクリン・グラハム、ジャック・グラハムの各氏の主張は皆、福音派の一定層の利益を代表しているといえる。しかし、それはマーク・ガリ氏とて同じことなのだ。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。一部、加筆・省略など、変更している部分があります。

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