殉教のススメ~「小さな死」が宝となる~ 関智征

2016年11月5日21時28分 コラムニスト : 関智征 印刷
関連タグ:関智征

1. 小さな死のススメ

「仕事でミスして、昇進できなかった」「信頼していた人に裏切られた」「大切な人をなくした」

このような「何かを失う体験」は、私たちの心を傷つけます。自分が大切にしているものほど、それを失ったときの喪失感は大きくなります。

私自身、学生時代に全身全霊で打ち込んだにもかかわらず、部活でレギュラーになれなかったとき、心にポッカリ穴が開いたような状態になりました。

上智大学の神父アルフォンス・デーケンさんは「別れは、小さな死だ」と言っていました。

別れだけでなく、失恋や挫折など、自分が何かを失った経験、得られなかった経験は、「小さな死」と呼ぶことができます。

失う経験、失敗や挫折は、誰もが避けたいものです。 しかし、喪失体験は、私たちの宝となる、と聖書は語っています。

2. キリスト者は殉教者

聖書によれば、私たちは殉教者として「死ぬ」と書かれています。

「あなたがたの上に聖霊が下ると、あなたがたは力を受ける。エルサレム、ユダ、サマリヤおよび地の果てまで、私の証人(殉教者)となる」(使徒1:8)

実際に、キリスト教の歴史の中で、多くの殉教者が出ています。

わが国でも、豊臣・徳川政権の時や第2次大戦中に、クリスチャンへの迫害がありました。

例えば、豊臣秀吉によるキリシタン弾圧により「日本二十六聖人」の1人であるルドビコ茨木は、若干12歳で殉教しました。

茨木は、みじめな姿で街中を引き回される中、ある有力者から「キリシタンの教えを捨てるなら、そなたを助けよう」と声を掛けられました。

しかし、茨木は「(この世の)つかの間の命と、永遠の命を取り替えることはできない」と助けを断った、ということです。

幸い、現在の日本は、キリスト教への迫害や弾圧はありません。

3. 毎日、殉教

では、私たちがキリストの殉教者となる、とはどういうことでしょうか。

「古い自分」が死ぬ、ということです。

古い自分が死ぬとは、 エゴや自己中心、そして自分の「罪」に日々死ぬ、ということです。

確かに、挫折や喪失は、つらい。しかし、私たちが苦しむとき、キリストも共に苦しまれます。喪失体験により、私たちはキリストと共に、古い自分に死にます。そして、新しい命に生かされるのです。

例えば、仕事から家に帰ったとき、疲れているにもかかわらず、お皿を洗ったり、子どものオムツをかえたりして妻に仕える。

自分自身の時間や労力を他の人のために使う。そのように私たちは、毎日の生活の中でも「小さな死」を体験しているわけです。

「小さな死」は、やがて来る自分自身の死への準備でもあります。同時に「小さな死」は、現在も、家族の関係を変え、学校、職場を変える力を持っているのです。

<<前回へ     次回へ>>

関智征

関智征(せき・ともゆき)

ブランドニューライフ牧師。東京大学法学部卒業、聖学院大学博士後期課程修了、博士(学術)。専門は、キリスト教学、死生学。論文に『パウロの「信仰義認論」再考ー「パウロ研究の新しい視点」との対話をとおしてー』など多数。

ブランドニューライフ

関連タグ:関智征

関連記事

クリスチャントゥデイからのお願い

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。記事の一つ一つは、記者や翻訳者、さらに編集者の手などを経て配信されているものです。また、多くのコラムニストや寄稿者から原稿をいただくことで、毎日欠かすことなくニュースやコラムを発信できています。

この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、読者の皆様にはぜひ、祈りと共に、毎月定期的にサポートする「サポーター」として(1,000円/月〜)、また単発の「サポート」(3,000円〜)によって応援していただきたく、ご協力をお願い申し上げます。支払いはクレジット決済で可能です。申し込みいただいた方には、毎週のニュースやコラムをまとめた申込者限定の週刊メールマガジンを送らせていただきます。サポーターやサポートの詳細、またクレジットカードをお持ちでない方はこちらをご覧ください。


コラムの最新記事 コラムの記事一覧ページ

新型コロナウイルス特集ページ

人気記事ランキング

おすすめのコンテンツ【PR】

コラム

主要ニュース