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日本人に寄り添う福音宣教の扉

日本人に寄り添う福音宣教の扉(3)冠婚葬祭の中で祈る日本人 広田信也

2016年9月22日21時34分 コラムニスト : 広田信也
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関連タグ:広田信也ブレス・ユア・ホーム

かつて私の祖父母が相次いで亡くなった際、父親がわが家に大きな変化をもたらした。祖父母を葬るために墓をつくり、家族で墓参りを繰り返すようになったのだ。さらに、住いの片隅に仏壇を持ち込み、僧侶が定期的に来ては読経を上げるようになった。信仰心とは全く縁のないように見えていた父親の大きな変化だった。

祖父は、日本の紡績業を支えた技術者で、転勤を繰り返していたこともあり、九州にあるはずの実家とは疎遠であった。家に受け継がれた宗教もなく、墓参りも仏壇の前に集まる習慣もなかった。そのような家庭に育った父親が、祖父母の死を契機として、実家の宗教が浄土真宗であることを調べ上げ、その習慣の中で法事を繰り返すようになったのだ。

法事の本来の意味は、仏教において釈迦の教え(仏法)を知るということ。つまり、仏法の要点・肝要を知ることであったが、その後、法事・仏事・法会などの儀式祭礼などの仏教行事一般のことをいうようになり、日本では、次第に供養のことを指すようになり、その後一般的に死者を弔う儀式を指すようになっていった。

しかしながら、現代社会においては、故人を弔うことが建前になっているものの、親戚一同顔を会わせ、故人に感謝し、お互いを思いやることに大きな意味があると考えられるようになった。父親にとって浄土真宗や僧侶は、共に祖父母を偲ぶために選んだ道具にすぎなかった。

第1回「信仰心を表現できない日本人」で述べたが、江戸時代から第2次世界大戦の終わるまで実に350年ほどにわたって、個人的な信仰を表現しないことの大切さを学んだ日本人は、習慣として認められてきた冠婚葬祭の形に合わせて祈りをささげる知恵を身につけてきた。

日本の冠婚葬祭は多様である。多くの人が参加する初詣から、生前においては、お宮参り、七五三、結婚式、地鎮祭、さまざまな祭りなど、主に神道を基本とした通過儀礼があり、亡くなってからは、葬儀から延々と続く仏教式の法要の習慣がある。日本人は、背後にある宗教にかかわらず、このような習慣の中で祈りをささげてきたのだ。

また、冠婚葬祭の中で、普段なかなか顔を合わせることのできない親戚と顔を合わせ、故人が設けてくれた親族とのつながりを体験することは、親族で構成される「家」という共同体に所属している自分自身を確認することにもなる。私の祖父母のように、「家」のつながりから離れてしまう者もいるが、代が変わると再び伝統的な冠婚葬祭によって絆が守られていくことが多い。共同体の中に生きる日本人にとって、冠婚葬祭は大切なものなのである。

一方、キリスト教会においては、個人主義的な傾向の強い欧米の宣教師の影響を受けたこともあり、個人の信仰を告白することを大切にし、伝統的な冠婚葬祭に関しては、偶像礼拝の要素を指摘し、問題のある儀式などを避けるように指導してきた。信仰心を個人的に表現しないことの大切さを学び、習慣的な冠婚葬祭の儀式の中で祈りをささげてきた日本人にとっては、難しい対応が要求されたのである。全員が同じ儀式に参加することによって共同体の絆を確認してきた人々の中には、驚異と映る可能性もあった。

よくキリスト教への批判として、家族、先祖を大切にしていないといわれる所以(ゆえん)は、日本人の大切にしている冠婚葬祭、特に仏教式で行われる葬儀、法事において、伝統的に行われている行為、儀式を避けていることによると推察できる。

確かに偶像礼拝の要素のある冠婚葬祭をそのまま受け入れることには問題がある。しかし、冠婚葬祭の中に存在する、祈りをささげる場としての機能や家族親族の絆を深める役割をも否定することになるなら、キリスト教は日本人にとって受け入れ難いものと映るだろう。

現代社会では、冠婚葬祭の背後にある仏教や神道に触れる機会は少なくなった。形骸化した宗教は、共同体の絆を確かめる手段としても使いにくい道具になりつつある。伝統的な冠婚葬祭はともかく、新しい冠婚葬祭では、宗教を背景とすることがほとんどなくなった。大切な記念の式典においても、宗教色を排除して精いっぱいの黙祷をささげるしかない場面が数多く存在する。

このような日本人のために、キリスト教が使いやすい道具を日本文化に合わせて提供できるようになりたいものである。宣教はその土地の文化に寄り添うことから始まる。初代教会が長年にわたって築かれたユダヤ文化の枠を超えられなかったとき、神様がペテロに見せてくださった幻は、異邦人文化に寄り添うことを促すものだった。ペテロにとっての異邦人文化は、触れたことのない異教の産物であった。

しかし、私たちが教会文化に安住しているならば、同じ民族であるにもかかわらず、日本文化に寄り添う道が絶たれることになる。私たちも日本人の心に寄り添い、教会の外にある日本文化の中で、彼らの祈りを天のお父様に取り次ぎたいものである。寄り添う中に福音を語るチャンスは何度も訪れるに違いない。

「すると、再び声があって、彼にこう言った。『神がきよめた物を、きよくないと言ってはならない』」(使徒の働き10:15)

 「さあ、下に降りて行って、ためらわずに、彼らといっしょに行きなさい」(使徒の働き10:20)

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◇

広田信也

広田信也

(ひろた・しんや)

1956年兵庫県生まれ。80年名古屋大学工学部応用物理学科卒業、トヨタ自動車(株)入社。新エンジン先行技術開発に従事。2011年定年退職し、関西聖書学院入学、14年同卒業。16年国内宣教師として按手。1985年新生から現在まで教会学校教師を務める。88~98年、無認可保育所園長。2014年、日本社会に寄り添う働きを創出するため、ブレス・ユア・ホーム(株)設立。21年、一般社団法人善き隣人バンク設立。富士クリスチャンセンター鷹岡チャペル教会員、六甲アイランド福音ルーテル教会こどもチャペル教師、須磨自由キリスト教会協力牧師。関連聖書学校:関西聖書学院、ハーベスト聖書塾、JTJ宣教神学校、神戸ルーテル神学校

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:広田信也ブレス・ユア・ホーム
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