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津和野「乙女峠」―殉教の記憶と償いの思いを未来へ

津和野「乙女峠」―殉教の記憶と償いの思いを未来へ(3)住民の感情と交流、そして列聖運動へ 山岡浩二

2015年10月23日21時25分 執筆者 : 山岡浩二
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関連タグ:乙女峠まつり遠藤周作福者聖人
津和野「乙女峠」―殉教の記憶と償いの思いを未来へ(3)住民の感情と交流、そして列聖運動へ 山岡浩二+
乙女峠まつり

カトリックの作家・遠藤周作は、殉教の地「乙女峠」の訪問を目的として津和野を訪れたことがあり、その時の印象を「津和野」というエッセイにまとめている(発表は1962=昭和37年7月)。その中に、当時の津和野藩の立場や事情について感想を述べた次のような一文がある。

「津和野藩としても、こうした拷問をやるのもおそらく本意ではなかったであろう。(中略)津和野は多くの学者や芸術家を出している場所である。理には理をもって、という気持ちは役人や藩主にもあったのだろうが、それが不可能とみるや問題の解決を急ぎすぎたのかもしれぬ」

津和野の者が言えば、ある種、弁解がましく聞こえるかもしれないが、これにはある程度の真実を含んでいるように思う。藩士ばかりではなく、直接迫害に手を出さなかったとはいえ、知っていながらどうすることもできなかった地元の人々の心情もある程度は察することができる。黙認・沈黙することで、どこか迫害の片棒を担いでいるという罪悪感は拭い去れないのである。そうした感情にある種の免罪感を与えてくれたのが、ビリヨン神父が勇気をもって津和野で開催した「光琳寺のキリシタン講演会」だったことは前述した通りだ。

また、津和野で誕生から10歳までを過ごした文豪・森鷗外が、膨大な著述の中で津和野のキリスト教徒迫害について、一切触れていないことがしばしば話題になる。津和野で迫害が繰り広げられた期間、鷗外は6歳から9歳だった。幼いとはいっても幼児期から「神童」と騒がれた彼が、それを知らなかったり、事情を理解できなかったとは思えない。鷗外が迫害事件に触れなかった理由については、先学のさまざまな意見や考察がある。ここでは、そのうち二つを紹介しよう。

まず一つは、キリスト教徒を直接吟味した藩士の中心的人物の中に、鷗外の恩師の実兄がいたためではないか、という説がある。この恩師と森家は緊密な親戚でもあり、鷗外は幼時のみならず、この恩師を生涯にわたって尊敬し親交していることから、この恩師への気兼ねがあったのではないか、という見方だ。(山崎国紀著『森鷗外―基層的論究』など)

また、もう一つの見方として、ドイツの元フンボルト大学教授兼元ベルリン森鷗外記念館長のクラウス・クラハト氏が、著書『鷗外の降誕祭(クリスマス)―森家をめぐる年代記』に次のように記している。

「(筆者注・鷗外がキリシタン迫害に関して)生涯、沈黙し続けた背景には、国家権力の道具化、故郷の人びとの見て見ぬふりや諦念、無力感、そして何よりも津和野人としての罪悪感、羞恥心からとする考察もある」

クラハト氏は、恩師や親戚関係に基づく「気兼ね」や「配慮」よりも、知識人として、また津和野人としての「罪悪感」「羞恥心」をより重視した見方を支持している。

こうした津和野住民の心情の一方で、キリスト教徒と地元住民の交流に関する意外なエピソードもある。改宗者の一部が藩内に居住を許されたことは前述したが、そうした折、「虹ケ谷」という集落に移った改宗者が、地元の人に牛乳に高い栄養価があることを教え、搾乳の方法まで伝えて牛乳の飲用を奨励したという話が伝わっている。これが事実なら、津和野における牛乳飲用の発祥は「虹ケ谷」ということになりそうだ。

また、城下に近い天神山の麓に、キリスト教徒が開墾した土地があり、古くは「キリシタン畑」の地名も残っていたというが、現在では、この地名を記憶している人はなく、その位置も不明となっている。

最後に、現在進行しつつある話題を紹介したい。それは「列福列聖運動」である。列福列聖運動とは、バチカンのローマ教皇に対して、乙女峠で命を失った殉教者を「福者」、さらには「聖人」として、宗教的に認可してもらうことを目指す運動である。2013年の乙女峠まつりにおいて、広島司教区の前田万葉司教が正式に宣言したことから、運動が本格的にスタートした。現在では、日本のカトリック教会全体の運動として認知され、約10年後の認可を目指して、今後さまざまな運動に取り組むこととなっている。

この運動には、津和野町民の理解とサポートが欠かせないといわれている。これまで紹介してきたように、「乙女峠」や「乙女峠まつり」、さらには歴代の津和野カトリック教会神父は、宗教の違いを乗り越えて、町民に深く愛されてきた。しかしその一方で、津和野町内には、立派な教会があり、大規模な野外ミサを伴う乙女峠まつりが挙行されているにもかかわらず、驚くほどカトリック信者が少なく、約10軒ほどだといわれている。このことからも、津和野のカトリック文化は、従来から信者以外の町民が共に支えてきたことがうかがわれる。

また、観光の町でもある津和野町にとって、乙女峠がカトリックの聖地に認定されることは、大きな経済効果も期待できる面もあることから、町民の多くがこの運動に理解と協力を表明している。具体的には、2014年10月、一日も早い認定を希望する趣旨を記した、津和野町民約千人の署名が広島司教区に届けられた。発起人は津和野町商工会長と津和野町観光協会長である。署名呼び掛け対象地区の人口は、3000人だったので、3分の1の町民が趣旨に賛同・署名したことになる。これは「宗教」による「町の活性化」の好例になるのではないだろうか。今後展開される運動のあらゆるステージにおいても、町民の協力と連携が図られていくことが期待されている。(終わり)

■ 津和野「乙女峠」―殉教の記憶と償いの思いを未来へ: (1)(2)(3)

◇

山岡浩二

山岡浩二

(やまおか・こうじ)

1956年、島根県津和野町生まれ。大学4年間を東京で過ごした以外は、全生涯を津和野で暮らしている。32年間勤めた津和野町役場を2011年に退職し、現在は郷土史や鴎外文学を研究。津和野町観光協会副会長、津和野の自然と歴史を守る会副会長。中国・浙江大学城市学院客座教授として、同大で年に1度日本文化などの講義も行っている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:乙女峠まつり遠藤周作福者聖人
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