Skip to main content
2025年10月21日17時48分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
わが人生と味の道

わが人生と味の道(12)舌をもって、味づくりをする 荘明義

2015年8月28日17時17分 コラムニスト : 荘明義
  • ツイート
印刷
関連タグ:荘明義

私が「味づくり」ということに関心を持ち、その勉強を始めたのは、14歳でコックの見習いを始めたときでした。朝店に入ると、野菜の下ごしらえ、包丁を研ぐこと、そして皿洗いなどの仕事が待っていました。この皿洗いは半年間続きました。初めのうちはよく叱られ、怒鳴られたので何度も辞めようと思ったのですが、そのたびに母に励まされて、どうにかこうにか続けることができました。

そのうちに、私の中に、しっかり仕事を覚えて料理のプロになりたいという意地のようなものが芽生えてきました。その陰には親身になって料理を基礎から教えてくれた陳建民先生への感謝の気持ちもあり、こんなに素晴らしい師匠に教わるなんて光栄なことだ――という思いがあったからでした。私はコツコツと皿洗いをしながら、客が残した料理のタレが皿についてくるのを見て、ふと思いました。

(そうだ。自分の舌で客の食べた料理の味を吟味することができるじゃないか)

そこで私は、お皿についたそのタレをなめて、味を自分の体の中に叩き込みました。もちろん、食べ残しの皿はきれいな状態で戻ってくることはありません。タバコの灰が載っていたり、ティッシュペーパーが載っていたり――と、汚らしいものもありましたが、私はタレをなめ続けました。

そのうちに、私はウェイターやウェイトレスなどに頼んで、新しい料理、自分がまだ味を覚えていない料理などが出るときは、その皿の中味を捨てずにそのまま下げて持ってきてもらうようにしました。客が食べた後だから料理は冷めていて、ほとんど残っていない場合もあります。でも、なめることによってその料理の冷たい状態を覚えることができたのです。

また私は、客が残した料理を味・種類別に分けてボウルの中に取っておき、それを冷蔵庫の中に入れておきました。ウェイターやウェイトレスたちは帰ってくると賄いの料理だけでは満腹にならないので「何か作って」と私に頼みます。そこで私は、冷蔵庫をあけて同じような食材を寄せ集め、それを温め直して彼らに出してやりました。こうしたことは、私が料理の味を一つ一つ覚えていく上でとても助けになったのです。

「珍しい料理とか、新しい料理が入ったお皿はなるべく重ねないようにしてください」。私は彼らに前もって頼んでおきました。彼らはとてもよく協力してくれました。それで私は彼らのために、そうして取っておいた料理を温め直して、おいしい賄い料理として出してあげる――ということをしたのです。こうしたことがあって、私はこの店のウェイターやウェイトレスたちととても親しくなり、厨房での仕事も楽しくなってきたのです。

次に見習いに課せられた仕事として「鍋洗い」があります。鍋にはその料理の味がついているので、温かい、出来たての味をなめることができます。その料理を食べることができなくても、鍋についた味をなめることによってその料理の味が分かりました。

さらに私は、料理人が料理を作っているときに、その中に入れる調味料を覚えるためにメモするということもやりました。そして、出来たての料理を盛ったあつあつの鍋をなめることによってその味を記憶していったのです。そのうちに、賄い料理を交替で作らせてもらえるようになったときは、胸が躍ると同時に緊張感で全身が震える思いでした。苦労して味を記憶し、蓄えた知識を自分で料理し再現するのです。そして出来上がった料理を料理長に吟味してもらい、「まあ、いいだろう」と言われたときのうれしさは、今も忘れることができません。こうして、見習いに入った当初はつらいものに感じられた「皿洗い」や「鍋洗い」を通して、私は味の基本というものを一生懸命に勉強したのでした。

「料理は見て覚えろ」ということがよく言われます。私は新しい料理や珍しい料理が作られるとき、先輩コックのやることをじっと側で見ていました。中には意地の悪いコックもいましたから、彼が作るのを側で見ていると、「おいっ、ちょっとタバコ買ってこい」。そう言って遣いに出すのです。

急いで用を済ませて帰ってくると、もうその料理は仕込みが終わっている――ということがよくありました。もちろん、当時は「見て習う」ということが常識で、手取り足取り教えてもらうことはめったにない時代でした。だから、技術は盗むもの、自分の目で覚えるものだったのです。目で覚えるためには、自分の用事を先に済ませ、すべてが終わってからでなくては先輩のやることをじっと見ることはできません。そのためには、正確に手早くということも要求されました。特別な料理の献立があるようなときには、休みの日にも私は厨房に入ってその料理を見せてもらうということもやりました。

このようにして、私は自分の舌をもって一生懸命に料理の味を覚え、勉強することができました。こうして覚えた味は、すべて今の私の料理の元になっていることを思います。それのみならず、現在の自分の生活の一環ともなって役に立っているのです。

(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)
(15)(16)(17)

◇

荘明義

荘明義(そう・あきよし)

1944年中国・貴州省生まれ。4歳のときに来日、14歳で中華料理の世界に入り、四川料理の大家である故・陳建民氏に師事、その3番弟子。田村町四川飯店で修行、16歳で六本木四川飯店副料理長、17歳で横浜・重慶飯店の料理長となる。33歳で大龍門の総料理長となり、中華冷凍食品の開発に従事、35歳の時に(有)荘味道開発研究所設立、39歳で中華冷凍食品メーカー(株)大龍専務取締役、その後68歳で商品開発と味作りのコンサルタント、他に料理学校の講師、テレビや雑誌などのメディアに登場して中華料理の普及に努めてきた。神奈川・横浜華僑基督教会長老。著書に『わが人生と味の道』(イーグレープ)。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:荘明義
  • ツイート

関連記事

  • 思慮を得る者は自分を愛する者(4)目に見えないものにこそ目を留める 神内源一

  • こころの手帳(16)両親と不安―「ありのまま」と「あるべきもの」― 浜原昭仁

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(4)神は永遠に味方する

  • 律法と福音(6)律法と罰 山崎純二

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • 現代における「御言葉の飢饉」 法規制や不足で1億人のキリスト教徒が聖書入手できず

  • 都合の悪いお言葉(その1) マルコ福音書10章1~12節

  • 冷めた心に注意しよう! 万代栄嗣

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • ヨハネの黙示録(8)テアテラ教会の御使いへ 岡田昌弘

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(249)聖書と考える「御社の乱れ正します!2」

  • 焦りは禁物 菅野直基

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(233)宣教は主の備えから始まる 広田信也

  • 花嫁(35)古い人を脱ぎ捨てて 星野ひかり

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • 中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

  • 冷めた心に注意しよう! 万代栄嗣

  • 【インタビュー】ブトロス・マンスール世界福音同盟新総主事 「平和をつくる者、それが私の使命」

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(233)宣教は主の備えから始まる 広田信也

  • 「アジア太平洋伝道会議」2027年に開催決定 50カ国・地域から2500人が参加へ

  • イスラエルとハマスが和平合意、生存人質20人全員解放 キリスト教界から歓迎の声

  • ヨハネの黙示録(8)テアテラ教会の御使いへ 岡田昌弘

  • チャーリー・カーク氏の妻、殺害者を赦す 「キリストはそうしたし、夫もそうする」

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • チャーリー・カーク氏の妻、殺害者を赦す 「キリストはそうしたし、夫もそうする」

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 米メガチャーチ牧師、当時12歳の少女に性的虐待 罪認め6カ月収監へ

  • 「ジーザス・ムーブメント」指導者チャック・スミス氏のディボーションブック邦訳出版

  • 日本キリスト教病院協会第5回総会 人材確保や人材育成などを討議

  • 「ザ・チョーズン」がギネス記録、イエス・キリストの生涯描いた長編連続ドラマ

  • 英国国教会トップのカンタベリー大主教に初の女性、ムラリー主教の任命を国王が承認

  • イラク人難民のキリスト教徒、フランスでライブ配信中に殺害される

  • 中国東部で教会活動に対する大規模取り締まり、キリスト教徒70人以上拘束

編集部のおすすめ

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 教団・教派超えて神の平和求める 戦後80年で「日本国際朝餐祈祷会」初開催

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.