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み使いダニエル

(み使いダニエル・信仰者編)ヨウコのものがたり

2021年6月10日16時44分 コラムニスト : さとうりょうこ
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(み使いダニエル・信仰者編)リカのものがたり+

田舎町の薄暗い路地裏の、小さなスナックの電飾は置き忘れられたように今日も灯っておらず、ほこりがかぶり始めていました。木目調の扉には張り紙がしてあり、「しばらくお休みさせていただきます」とペン字で書かれておりました。

その扉を、さぞ重そうに開いて出てきたのは、50代も半ば、一人身のヨウコでした。このスナックの主人であった女性です。ヨウコは大きなじょうろを持って、表によく茂っているアイビーに水をやり始めました。所々に顔を出している赤と白のチューリップにもよく水を飲ませました。

一通り水やりが終わると、じょうろを壁に立てかけて、スナックの中に戻りました。薄暗い店内の革張りのソファに大きなお尻をどっしり座らせ、小さな窓から差す光を頼りに、読みかけの求人雑誌にまた目を落としました。水を一杯飲み干すと、勇気を出して携帯電話を握りしめます。「もしもし、恐れ入ります。求人雑誌を見てお電話をさせていただいたのですが・・・」

ヨウコは物心ついた頃には、酒席で働いておりました。今の今まで、この仕事以外したことがありませんでした。男たちと共に酒を浴びて、笑い、歌い、涙して、働いてきました。安いドレスで身を飾り、厚い化粧で心の暗がりを隠すようにして、働いてきたのです。しかし、今ヨウコは決してきらいではなかったこの仕事を辞めようと決意していたのです。

それは、ヨウコの胸元に輝く銀細工のロザリオ・・・イエス様がヨウコをそのように導いたからにほかありませんでした。イエス様という尊いお方を、ほとばしる愛で慕う今、ほかの男性に酒を注ぐことを続けることはできなかったのです。

ヨウコの心にみことばが響きます。「愛おのずから起きるときまでは、ことさら呼び起こすことも、さますこともしないように」(雅歌2:7)。ヨウコはその言葉に呼応しました。「もう起きてしまいましたわ、イエス様。私の愛を止められるものが、もはやありましょうか」と。

ヨウコは店を閉めて後、イエス様がお与えになった ‘教会’ の扉を火照る心で開きました。「この扉の先には、聖書の世界があるはずだ」そう信じて、身なりを慎ましく整えて踏み出したのです。ヨウコは洞穴のように世間から隠れた暗い所でみことばを読み、身を寄せ合って愛し合う兄弟姉妹の世界を想像しておりました。しかし、実際の教会はあまりに立派で、まぶしすぎるほどに光にあふれ、底抜けに明るい賛美が響いていました。

皆、身なりも美しく、素敵な車に乗っており、立派な経歴を持っている人ばかりのように思えました。ヨウコは己を恥じて身をかがめずにはいられません。たいていの人は優しくヨウコを迎え入れてくれました。優しい声色で話しかけてもくれましたし、兄弟、姉妹と声を掛け合い、共に牧師先生のお話を聞きました・・・。しかし、一人一人の顔がまるで、きれいなお人形の展覧会のように見えるのです。ヨウコは毎週、孤独のうちに教会から帰りました。

「自分の居場所さえ感じられない、ここが、イエス様が愛された ‘教会’・・・」そう思っては落胆しました。それでも、イエス様がお導きになった教会に、通うことを辞めることはできませんでした。

雨の日が多くなり、アジサイが道端に咲き始め、雨粒を浴びてキラキラと輝き始めました。ヨウコは肥えた体にぴちぴちのピンクのジャージを着て、灰色のワゴン車に乗り込んでおりました。新しい仕事を始めて2カ月がたっておりました。自宅で暮らす、介助の必要なご老人の家を回って、掃除や入浴や食事作りを手伝う訪問ヘルパーの仕事です。今日も3軒、汗だくになってご老人をお風呂に入れて、台所を借りて何品も食事を作った帰りです。

雨の夕暮れでした。空は厚い雲が幾重にも重なって、いろいろな濃度の灰色に染められておりました。車を運転する先輩は、コンビニに車を停めると、少しの休憩をくれました。ヨウコは車を降りて、火照った体を冷ますために、カップアイスを買いました。

アイスを木の匙(さじ)ですくい舌に乗せると、甘いミルクのアイスクリームが口の中に広がります。「おいしい」と子どものように喜ぶヨウコを、先輩は笑いました。大きな水筒に入った冷たいお茶を喉に流し、アイスを食べ終わって、コンビニに空になったカップを捨てに行きました。傘も差さずに雨を浴びて、空を見上げました。灰色の雨雲の隙間から、オレンジ色の夕日が差し、光の筋が幾本も地上に伸びておりました。しばらく見とれて、目を落とすと、向こうからどこかで見た男性が歩み寄ってきたのです。その男性は不思議なほどに背が高く、女のように美しく、大きなこうもり傘を差しており、顔立ちはよく見えませんでしたが、ヨウコのことを、それは慕わしく見つめていたのです。

それは、昔、恋仲になった客の一人のようにも思えるし、はたまた光の筋でできたみ使いのようにも見えました。その方は、こうもり傘をヨウコに傾けると、この世のものではないような優しい響きで聞きました。「みじめじゃないかい」。ヨウコは驚き、そして笑いました。その方はまた聞きました。「疲れていないかい」。ヨウコは笑顔で首を振りました。

「うん、私、みじめでも疲れてもいないわ。自分が誇らしいほどよ」。そう言うとヨウコの目に涙が浮かびました。その方は静かにうなずくと、「あなたの心を守りなさい、命の水はそこから流れるからである、と主が言われる通りですよ」。まるで、慕わしい兄のようにそう言いました。その時、雲が陰り、オレンジ色の夕日は雲の中に隠れました。もう一度目をやると、目の前には誰もおりませんでした。

夢を見ていたかのようにぼんやりとして、車に戻ると、先輩は不思議そうにして「どうかした? あと1軒だから頑張りましょう」。そう言ってエンジンをかけました。

その晩、今日の幻にヨウコは思いをはせていました。そして自分が言った言葉を思い出しました。「自分が誇らしいほどよ」そう、ヨウコは確かに言ったのです。ヨウコはペンと紙を用意しました。教会で、牧師にイエス様を信じるようになった道のりを皆の前で話すように頼まれながらも、ずっと考えもせずにいたのですが、なぜか今夜なら、それを書ける気がしたのです。

「私は永らく、イエス様を心配させ、涙させ、時に怒らせながらも、そのお心に気付かずに、罪の深みに酔いしれて生きて、歩んでまいりました・・・」。ペンを走らせると、まるでイエス様が黄金の油のような光で包んで、共にいてくださる気がしました。イエス様を想う気持ちがとめどなくあふれ、ヨウコはイエス様への愛を告白する手紙のように、ペンを走らせ続けたのです。イエス様を前にして、隠さなければならないことなど何もないように思えました。イエス様を愛したとき、どんな過去も汚れも、誉れに変わることを知りました。イエス様は深い闇の中に沈み、病んでいた自分のためにこの暗い地上にお生まれになり、十字架にかかられたのですから。

その晩に書いた証しを、教会の皆の前で読み上げる日がやってきました。その日はよく晴れ渡っており、教会の窓という窓から真白い光が差し込んで、会堂が煙るほどでした。

教壇に立ち、4枚もの紙につづった証しを読み始めたヨウコの足は、震えておりました。しかし読み進めるごとに、教会が祈りであふれてゆくことを感じました。それは、兄弟姉妹たちの祈りでありました。兄弟姉妹たちの祈りの響き渡る中で、ヨウコの震えは収まりました。読み終えたときに、会堂が震えるほどに「アーメン」と、主を褒めたたえる声が響いたのです。

教壇の上から見渡した兄弟姉妹たちの顔は、不思議でした。それまできれいなお人形の展覧会のようだとさえ思っていた人たちが、それぞれふくよかで熱い心を持っている人間だと見えることができたのです。

幾人かの姉妹がヨウコの証しを褒めてくれました。その姉妹たちの顔は、もうきれいな人形ではありませんでした。それぞれに苦しみや悲しみのしわが刻まれた豊かな表情をしており、十字架を背負ってイエス様を愛するものでありました。ここは街の中にある明るく立派な会堂だけれど、まるで洞穴の中にあるように世間から隠れて身を寄せ合って愛し合う、イエス様の造られた教会でありました。まるで目からうろこが落ちるように、同時に涙も流れました。そんなヨウコの肩を抱いてくれる姉妹もおりました。

路地裏の小さなスナックは、ほこりのかぶった電飾も取り除けられて、禿げた看板も剥がされました。木目調の扉には「閉店いたしました。永らくご愛顧いただきましたこと感謝いたします」と張り紙が張られておりました。

ここに、小さな喜びもありました。悲しみもありました。ヨウコは茶色いくたびれたソファに座り、賛美を歌っておりました。小窓から差し込む光が踊り、共に神様を賛美するようでありました。リュックを背負ったら出勤です。今日は暑くなるでしょう。大きな水筒を忘れずに、運動靴の靴ひももきつく結びなおしました。

扉を開けて外に出るヨウコの顔は、輝いておりました。こんなに晴れた日なのに、大きなこうもり傘を差した人とすれ違い、ヨウコは不思議そうに振り返りました。しかし、かげろうのようにその姿は消えていました。「不思議ね」。まるで神様に語りかけるように、そう言ってほほ笑みました。

ここは全能の神様の支配する世界ですから、どんな不思議も起こるでしょう。心の目を開けば、神様の息吹でつくられた幾億ものみ使いたちが世界中にいることが、見えるかもしれません。さあ、夏の始まりに、草木も花もぐんぐんと、伸びよう、伸びようとしています。

まるで神様が「伸びよ、伸びよ」と言葉をかけて育てるようです。ヨウコも夏の初めの草木のように、伸びやかにステップを踏みました。「年甲斐もなくスキップして、恥ずかしい」。そう思いながらも心が躍ってしまうのですから。

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◇

さとうりょうこ

1978年生まれ。埼玉県在住。2013年、日本ホーリネス教団久喜キリスト教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、加須市の東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、我孫子バプテスト教会に転籍し、夫と猫と3人で暮らしながら教会生活にいそしむ。フェイスブックページ「さとうりょうこ 祈りの部屋」。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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