【緊急提言】新型コロナウイルス感染症に対応するために

2020年4月14日22時06分 執筆者 : 千葉敦志 印刷
+【緊急提言】新型コロナウイルス感染症に対応するために
広い園庭のある保育園 ※写真はイメージです。(写真:Usuyoke)

はじめに

連日連夜報道されている通り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ついに新規感染者数の多い7都府県に対して「緊急事態宣言」発令という新たなステージに突入しました。緊急事態宣言が発令された地域では、企業活動を含む多くの活動が自粛を求められる状態となりました。さて、では、それ以外に該当する職種はどうすれば良いのかということが課題となっています。

そうした中で、厄介なことが明らかになりました。留置所や老人介護施設の入居者などの感染している事例が報告されています。これらの施設は、閉鎖性と相まって、感染症に対しては非常に高い防御力を持っていると考えられてきたのですが、このような施設からの感染事例が報告されるということは、誰がどこで感染してもおかしくはないということを意味しており、もはや、新型コロナウイルスは私たちの身近に潜んでいるということを示しています。

このことは、非入所系施設である通所系施設にとっては、衝撃的な事実です。毎日通ってくる利用者がどこかで感染し、施設で感染を広げてしまう可能性が高いからです。もし感染を見抜けなかったら、もし気付かずに感染拡大を招いてしまったら、という悩みで押しつぶされそうになっている、保育所など通所系の福祉施設の職員の方々のお役に立てばという思いで、今回、緊急に提言を行うことに致しました。

新型コロナウイルスについて知ろう

新型コロナウイルス感染症の致死率は、3パーセントぐらいだとみられていますが、これも治療設備、薬剤の使用など状況が異なるため、データとしては未確定ということがいえます。しかし、発症者100人に対して3人が亡くなるという状況は衝撃的であることは確かです。

新型コロナウイルスは、その初期症状などにおいては、インフルエンザやいわゆる風邪とほぼ変わらないようです。一方で、これが発見を遅らせる原因ともなっています。国や自治体が言っているような「発症から4日以上続いたら相談」というケースでは、重症化してから検査するということになってしまいます。一方で、無自覚症状でも伝染するともいわれており、すべての人が可能な限り濃厚接触を避ける、もしくは接触を限定するということが求められています。

先日、緊急事態宣言が発令された折、他人との接触を8割削減することなどが呼び掛けられたのはその影響ということになります。しかし、もはや感染経路が追えない状態になってきており、特に先述の通り、感染症に対しては原則、閉鎖空間として扱われている施設からの感染事例が報告されるということは、誰がどこで感染してもおかしくはないということを意味しています。今後、国や都道府県などの自治体では、対象を絞って行っていた新型コロナウイルスの検査の要件を緩和し、より広範囲に行うことへ方針転換する可能性も示唆されているほどです。

まずは利用者に協力を依頼しましょう

施設側はこれまでの情報や状況から当然のごとく危機感を強めています。そして、現場ではそのことが原因となり、利用者に対しての過度な警戒感を抱くことが少なくありません。逆に言えば、それに直面する利用者もそれを敏感に感じ取り、逆の意味で警戒感を抱くようになります。これを放置するのは百害あって一利なしです。協力し合わなければ乗り切れません。ですから、なるべく早い段階で、書面をもって協力を依頼します。

保育園を例に、一つ文例を作ってみましたので参考になさってください。

〇〇保育園 保護者の皆様

新しい年度が始まり、入園式、進級式を迎え、お子様たちも、期待と希望に目を輝かせて毎日の園生活が始まりましたが、一方で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、近隣地域でも感染者が確認される事態となっております。感染症に対しては閉鎖空間とされていた入所施設での感染の事例なども報告されており、感染防止の手立てが、非常に難しいことを示しています。現在、〇〇保育園でも保育業務に対して、様々な見直しを行っているところですが、当たり前のことが難しい状況となっていることを思い知らされています。

〇〇保育園ではこれまで「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇」という理念のもと、保護者様お一人お一人の状況、お子様お一人お一人の状況に可能な限り対応することを目指して運営して参りました。

〇〇保育園では、これまで園の理念に従って、可能な限り全ての乳・幼児を受け入れることを保育の根幹として歩んでまいりました。従いまして、〇〇保育園には様々なお子さんがいらっしゃいます。体力のある子、気管が弱い子、熱を出しやすい子、様々です。また、保護者様のご家庭の状況も様々です。

従いまして、〇〇保育園では、社会福祉の理念に従って保育園を運営するために、当園の状況に合わせ独自に保護者の皆様にお願いすることもこれからあるかと思います。その時に、しっかりと説明できるように、まずは、私たちは自分たちの保育を見直すことに着手をいたしました。改善については、順次行っていきますし、それについては逐一ご報告していきますので、ご協力をお願いいたしますとともに、お気付きの点などがありましたら、園長、主任までお気軽にお伝えくださいますようにお願いいたします。私たちは何よりも説明責任を十分に取れるように保育を改善して参りたいと思っております。

今のところ、〇〇保育園では、園児・保護者・職員に感染者が出ない限り保育を続けていくことを確認しております。しかし、国や県、市の方針によれば、感染者が1名でも出た場合には、2週間の休園をしなければいけないことになると通達がありました。従いまして、保護者の方々には、自分には関係ないと思わずに現在の制限を受け止め、不要不急の外出を控え、三密(密閉、密接、密集)の状態を避け、感染予防にご協力くださりますようにお願いいたします。

今までの皆様からのご協力に感謝をしつつ、さらにこれからも保育を続けていけるように、保護者の皆様のご理解・ご協力をいただけましたら幸いです。

まずは、このような内容のお知らせを配布することが良いでしょう。この場合、施設の独自性などをしっかりと確認しておく必要があります。何を大切にしながらここまで来たかということが、利用者との共通意識として共有されることが大切です。

新型コロナウイルス感染症についての施設対応

新型コロナウイルス感染症に対しての有効な対応策は、現段階では国や都道府県が推奨していることを実施する以外に手はありません。逆に言えば、施設側のオリジナリティーはほぼ限られており、国や都道府県が推奨している対策をどれだけ高い精度で実施できるかが問われると思うべきです。さて、ここで重要なのは、利用者に対する情報提供です。情報提供では、国や都道府県(場合によっては市町村)からの情報を細かく提供していくことです。

トレースできるようにすることの大切さ

感染者を出さないことはもちろん大切ですが、もし、仮に感染者が出た場合に、その先の感染を防ぐための手立てや、事業の継続、休業の形態、再開の仕方を考えることも大切になります。そして、その時に必要になってくるのが、感染経路の特定です。

それはつまり、日常からウイルス感染の足跡をたどれるような仕掛けを作っておくということです。こう言うと何か怪しからんというようなご批判や、「責任を明確化すればいいってことでしょ?」という風に言われることも多いのですが、そうではなくて、求められるのは説明責任を果たすための仕掛けということになります。つまり、何を考えてそうしたのかということが説明できるようにするということです。

潜伏期間が2週間ともいわれている新型コロナウイルスです。今から万全の感染防止措置をしたとしても、明日発症する人は、すでに2週間前には感染していた可能性があるのです。当然、感染していることが確認されると、行動履歴は2週間以上にわたって調査する必要が出てきます。刑事ドラマなどでおなじみですが、「2週間前、あなたは何をしていましたか?」とか、「2週間前、あなたは誰と会いましたか?」「この2週間の間に行ったところを教えてください」などと聞くことになります。しかし、そう聞かれたとしても覚えていることなど高が知れています。国や都道府県の調査でも暗礁に乗り上げてしまわざるを得ないのが、この2週間という潜伏期間の長さによるものです。個人なら致し方ないとしても、組織としてはそれでは通用しません。要は原因を特定できるようにしておくということです。

例えば、歯磨きの確認をするために使う染め出し剤をご存じの人も多いと思います。同様の発想で、手洗いの効果を可視化する動画がネットで配信されています。これをまねて、さまざまな業務を検証してみましょう。つまり、何気ない日常の行動をしっかりと評価するということです。そして、そこで明らかになった改善を実施し、その実施が達成された日をしっかりと記録しておくこと、そして、その改善がしっかり行われているかどうか確認する仕組みは、業務では必須であると覚えてください。情報が共有された日、業務手順が変更された日などをしっかりと記録しておくべきなのです。

利用者と共にこの難局を乗り切る

運営側がどんなに素晴らしいマニュアルを用意しても、それが実効性を持つかどうかは、現場の職員と利用者との協調にかかっています。運営側から職員や利用者に対して情報を積極的に提供し、それを土台に協力を得るということを強く意識しましょう。もし、批判し合う関係になってしまえば、そもそも健全な運営にさえ支障を来し、危機管理どころではなくなってしまいます。一丸となって危機に対応するために必要なのは、何と言っても情報共有なのです。

デス・アドバンテージ(不利)を知ろう

感染症との闘いは、潜伏期間との闘いであるといっても過言ではありません。特に新型コロナウイルスの場合には、潜伏期間が少なくとも2週間(一説には3週間以上)という長さであり、インフルエンザの2〜3倍の長さです。

こうなってくると、今、症状がなかったとしても油断はできません。今日、感染しても、症状は2週間先くらいに出るということになります。また、無自覚感染者が相当数いることも分かってきました。このことは、感染症対策は2週間後の事態を予測することからしか始まらないことを意味します。逆に言えば、今日、完全自宅待機などの対策を打ったとしても、その後2週間以内については、すでに感染し潜伏期間中にあった感染者の発症は食い止められないのです。発症者を100パーセント出さないようにすることは、基本的に無理であるということを、まず自覚しなければなりません。

2週間後の状況を予測する

まず感染症対策は、集団感染が始まってからでは止めようがないことを知っておかなければなりません。感染症対策の基本は「今、無自覚感染者がこの集団にいる」ということにならなければいけません。その一方で、事業を継続する観点からは「今は、この中には感染者はいない」という前提に立った対策でなければなりません。

感染拡大を防ぐという作業は、潜伏期中の感染者がこの2週間以内に発症し、さらにその感染者との濃厚接触による2次感染が発生する状況(いわゆるクラスター化)に陥ることを十分に想定しておかなければいけません。現在のところ、感染者が発見された時点でクラスター感染を食い止めるために、2週間の業務自粛を求められるのが通例ですが、入所系の施設の場合には業務を停止することは物理的に不可能です。従って、自分を含めた無自覚感染者が感染を広げないようにすることを留意し続けなければなりません。

残念ながら、私たちの通常の感覚では、現状維持バイアスという心理的な構造を持っているため、「このままでいけるんじゃないか」「うまく行っているはず」などという心理状態に陥りやすいのが通例です。このため、しっかりと悲観的な予測を維持する担当などを決めておく必要があります。

イエス・キリストという土台

先日、私のところには、「ある教会の信徒の方が感染していることが判明し、その影響で2週間、教会の関係する施設の閉鎖を要請された」という情報が入ってきました。ウイルスにとっては、クリスチャンも教会も関係がないという当たり前の事実が、災害などでも絶やさずに守り続けた「当たり前の礼拝」の前に立ちはだかっています。

礼拝とは何か、信仰生活とは何か、という私たちがごくごく当たり前のこととして証ししてきたものに対して、新型コロナウイルスは、大切な課題を突き付けていると思います。私たちは、主に倣う者であると同時に、私たちそれぞれが神の神殿であるということに再び思いを巡らせたいと思います。

「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」(ローマ12:15)と語ったパウロは、一方で「兄弟たち、わたしはこう言いたい。定められた時は迫っています。今からは、妻のある人はない人のように、泣く人は泣かない人のように、喜ぶ人は喜ばない人のように、物を買う人は持たない人のように、世の事にかかわっている人は、かかわりのない人のようにすべきです。この世の有様は過ぎ去るからです」(コリント一7:29~31)と述べています。また、エゼキエルは「時が来る。その日が到来する。買う者も喜ぶな、売る者も悲しむな。怒りが、国の群衆すべてに及ぶからだ」(エゼキエル7:12)と語っています。

さらにパウロは、下記のように述べています。

「わたしは、神からいただいた恵みによって、熟練した建築家のように土台を据えました。そして、他の人がその上に家を建てています。ただ、おのおの、どのように建てるかに注意すべきです。イエス・キリストという既に据えられている土台を無視して、だれもほかの土台を据えることはできません。この土台の上に、だれかが金、銀、宝石、木、草、わらで家を建てる場合、おのおのの仕事は明るみに出されます。かの日にそれは明らかにされるのです。なぜなら、かの日が火と共に現れ、その火はおのおのの仕事がどんなものであるかを吟味するからです。だれかがその土台の上に建てた仕事が残れば、その人は報いを受けますが、燃え尽きてしまえば、損害を受けます。ただ、その人は、火の中をくぐり抜けて来た者のように、救われます。あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいることを知らないのですか」(コリント一3:10~16)

イエスに倣うために

私たちは、信仰という土台の上に、何をもって何を立てようとしているのか、が問われているように思います。お気付きかもしれませんが、各施設の理念とは、教会における信仰です。ローマ・カトリックのフランシスコ教皇は、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、「(感染した人々に)会いに行く勇気を持つ」ように呼び掛け、それを受けたイタリアの聖職者たちがこの新型コロナウイルス感染症の患者を見舞い、臨終に立ち会うなどしたと伝えられます。そして、その際に患者から感染し、70人以上(3月26日時点)の聖職者が命を失ったと報じられています。

一方、プロテスタント系を中心に、多くの教会が礼拝の動画配信などを行い始めています。どちらが悪いとか、愚かだとか、優れているとか、劣っているという話ではありません。教会はそれぞれの伝統に立って戦いながら、今、新しい地へと旅立つように促されているように思います。

この困難な時だからこそ、「あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいることを知らないのですか」というパウロの言葉をしっかりと胸に歩んでいきたいと願います。

できることこそ大切に

今回は、保育所など通所系の社会福祉施設を題材に感染症対策の一端を考えてみました。私は、職員だった人間です。今、「もし自分が感染したら」「もし感染を見抜けなかったら」「もし気付かずに感染拡大を招いてしまったら」という悩みで押しつぶされそうになっている職員の方々も多いと思います。国や自治体が苦労している通り、現場の職員お一人お一人も、ものすごいプレッシャーやリスクをひしひしと感じておられると思います。

しかし、危機管理においては、何か特別なことをするのではなく、こんな時だからこそ、基本に立ち返ることが大切なのです。手洗い、清掃の励行、情報交換の質の向上、情報収集の確保、運営の透明性など、日常で疎かになっていたことをしっかりと取り返すことから始めるしかありません。

もうすでに、私たちの中には、業務に対する土台が据えられています。そこにどのように立ち返るかということは、「自分ができることをどれだけ大切に、真剣になって、実施できるか」という問いを持つということなのです。「私が尊敬する先生は、先輩は、こんな時はどうしていただろう?」と考えること、そこが出発点でしょうし、そして、学校や現場で教えられた「基礎」の意味を味わいながら、しっかりと徹底していただくことで、この苦しい時代を乗り越えていってくださればと願っております。お働きの上に、主の祝福と守りが豊かにありますようにお祈り致します。

千葉敦志

千葉敦志(ちば・あつし)

1970年宮城県生まれ、青森県在住。日本基督教団正教師(無任所)。教会付帯施設の認可保育所の施設長として、保育所の認定こども園化を実施。施設長として通算10年間、病後児保育事業などを立ち上げたほか、発達障害児や身体障害児の受け入れや保育の向上に努め、過疎地域の医療的ケア児童の受け入れや地域の終末期医療を下支えするために、教会での訪問看護ステーション設置などを手掛けた。児童福祉の制度研究とその実践および講演活動を行っている。現在はこれまでの経験に基づいて「保育所等訪問支援事業」を行う保育支援センターを立ち上げ、乳児・幼児・児童の福祉の底上げ、施設の支援に奔走している。

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