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床屋談義

床屋談義(5)トイレについて雑考 臼井勲

2017年8月24日06時49分 コラムニスト : 臼井勲
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関連タグ:臼井勲

数年前、「トイレの神様」という歌が不思議な感動を与えてくれた。初めて店にいてFM放送から流れるこの曲を聞いたとき、ジーンと心に来るものがあった。

案の定、この歌は現代の日本人の心の琴線をくすぐる名曲になった。大阪のおばあちゃんと孫娘とのトイレ掃除を通しての交流が、聞く者の心をほのぼのとさせてくれる。

今では「トイレ」がその所を示す共通語になっている。僕の子どもの頃の「便所」とか「WC」、さらにその昔の「厠(かわや)」「憚(はばかり)」「手水(ちょうず)」「御不浄(ごふじょう)」「雪隠(せっちん)」などは死語になってしまった。

英語では「トイレット」と言うより「バスルーム」である。たいがい欧米では、浴室の中にトイレがある。それで、バスルームはその婉曲(えんきょく)的表現である。

現在では、トイレといえば水洗式が当たり前であるが、僕の子どもの頃は汲み取り式がほとんど、20年くらい前でも地方都市ではまだバキュームカーが町内を巡回していた。

ただ、東京は水洗化が早かった。中学生だった頃には、祖父母がいた深川では水洗になっていて、大きな木製の、床のボタンを押すと勢いよく水が流れた。

中学1年だった頃、忘れられないことがあった。その頃、父が店を新築し、ルデヤ理容舘と命名し、日曜日を休日にして、キリスト教の礼拝所として店を開放していた。米国の宣教師の方々が説教するために来てくださった。

ある日、礼拝後にメトカーフ宣教師から、トイレを使わせてくださいと言われた。考えればごく当然のことで、この必要は日本人もアメリカ人も同じ「ネイチャー・コール・ミー」なのである。

だが父は、この申し出に動転した。店は恥ずかしくなく新築したのだが、トイレは古い住居のものを使わねばならなかった。その家は店の隣にあり、平塚空襲の翌年に、祖父が工場の焼け跡の廃材を利用して建てた家で、その頃の家族が住む分には不足のないものであったが、客人、ましてアメリカからの客人をお入れするにはあまりにもむさくるしかった。

しかもトイレなどは・・・例の汲み取り式の、へたをするとお釣りが返ってくるという、床はギシギシ、天井は低く、子どもの僕らでも背伸びすると手が届くほどのもので、父は赤面しつつ、僕に「農業会館のトイレにお連れしなさい」と命じた。

その頃建ったばかりの農業会館は、平塚では戦後初の本格的な鉄筋コンクリートの3階建てのビルで、もちろんトイレは水洗であった。僕はメトカーフ宣教師を100メートルほど離れたそのビルへご案内した。

そして、それには後日談がある。今度はメトカーフ宣教師が夫人と小さいお嬢さんと一緒だった。そのお嬢さんがトイレだと言う。もう農業会館まで間に合わない。やむを得ずご夫人とお嬢さんをかの我が家のトイレにお連れする羽目になった。さすがに子どもの僕でもその場から逃げ出したい思いだったのを覚えている。

その頃の日本のトイレ事情はそんなもので、その頃の川柳に「文化の日 都(みやこ)大路を 肥え車」なんてのがあった。やがて日本もその後の著しい経済発展により、どの家も水洗トイレになった。僕らの子どもたちの小学校時代には、市内の水洗化は完了していた。

ある夏休みにその子どもたちを連れて、家内の恩師であるアネスン宣教師の手造りの、山中湖畔にあるロッジをお借りしたことがあった。そこのトイレはロッジから独立した小屋で、座式で便座は板に丸い穴が開いただけのもので、子どもたちは怖がり、「ボットントイレはやだ!」と言って行かない。仕方なく、部屋の中で洗面器にやらせて、トイレにあけに行ったことがあった。

宣教師の方々は、一方ではそんな原始的なトイレにも慣れておられ、あの頃、僕らが赤面するほど恥ずかしがることなどなかったのである。その頃の日本人は、敗戦により、過度に米国の文化、文明に対する憧れと、己が文化に対する劣等感を抱いていたのである。

トイレの文明度について、あらためて考えさせられる契機になったのは、1997年の秋、トルコに行った11日間のツアー旅行だった。これは、娘が結婚する前の親孝行で我々夫婦を誘ってくれたもので、僕にとっては最初の海外旅行だった。

そのツアーの中で、古代ローマ時代の都市エペソの遺跡を見学した。この街は、ローマに匹敵するほどの大都市であって、石造りでもありよく保存されており、立派に舗装された街路、円形劇場、公衆浴場、広場、それに図書館や民家まで往時の面影を十分に残していた。

その中でも、最も興味を覚えたのが公衆トイレであった。ちょうど大きなサウナ風呂のように、レンガでできた長方型の建物の内側の壁に沿って、コの字型に大理石の便座が並んでいて、その最中と前方が丸く切ってあって用を足せるようにできていて、建物の中央には噴水もあって、その水は遠方より水道橋で運ばれてくる上水道の水である。

便座の前方には、かまぼこ型に溝が切ってあり、そこをきれいな水が流れていて、手を洗うことができた。そして、便座の下方2メートル以上深い所を下水道が流れており、汚物を流し去る。上下水道が完備していた。

古代の人々は向かい合わせに座って、談笑しながらゆったりと用を足していたのである。トーガというゆったりした衣を着ていたので、まったく恥ずかしいことはなく、臭気もなく清潔で、室の中には樹木も植わっていて、至極快適な公衆トイレであったのには驚いた。

そして、このような公衆トイレは一種の規格品で、同じ型のものがローマ帝国内のどこの都市にも複数設置されていた。ローマ人の風呂好きと相まって、まことに清潔で快適な都市生活があった。これがローマ文明だった。

このローマ様式がそのままヨーロッパに受け継がれたわけではなかった。ごく近世になるまで、ヨーロッパのトイレ事情はすこぶる悪かったようである。ザビエルが日本にキリスト教を伝えた戦国時代の頃、彼は、日本人の風呂好きと、トイレの清潔さに驚いている。

横浜の三渓園内に、江戸時代の紀州侯の別邸が移築されてあるが、その中のトイレを見ると、広くて清潔感がある。水洗ではないが、下に砂が厚く敷き詰めてあり、その砂を替えることで実に清潔に保たれている。

それに比べ、ザビエルがフランスのパリ大学で学んでいたときの記録に、当時のトイレ事情が書かれている。パリの真ん中でさえトイレ設備がなく、紳士淑女といえど、用を足すときは室の中のおまるで済ませ、小用のモノは朝になると2階の窓から下の通りに撒(ま)いたという。だから、下を通るときはパラソルをさせと言っている。

そして、大のモノは裏通りに捨てられたそうで、雨が降るとそれが流れ出し、くさくて不潔なこと言語に絶していたとザビエルは記している。

それに比べれば、日本のトイレなど清潔そのもので、パリの街が整備されたのはナポレオン3世の時代、日本では明治の初め頃で、あのジャン・バルジャン物語の中に出てくるパリの大地下水道が造られた。水洗トイレが出てくるのはそれからであった。ヨーロッパ文明はこの点に関しては古代ローマのよい弟子ではなかった。

トイレの神様のことを伝えたなにわのおばあちゃんの方が、よほど日本のトイレ文化の正しい伝達者であると言えるのではないか。

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◇

臼井勲

臼井勲

(うすい・いさお)

1942年東京・深川生まれ。57年受洗。64年早稲田大学文学部西洋史科卒業。96年JTJ宣教神学校卒業。2007年から日本聖契キリスト教団の伝道師となり、現在、同教団新秋津キリスト教会伝道師。同教団の酒匂キリスト教会、平塚聖契キリスト教会で説教奉仕をしている。JTJ宣教神学校「イスラエル史」講師。「『物語り』から聖書を学ぼう」講師。聖句書道教室講師。平塚のルデヤ理容館店主。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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