Skip to main content
2025年7月12日10時33分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
床屋談義

床屋談義(3)俺を持っている俺は、どこの誰だろう 臼井勲

2017年7月27日14時35分 コラムニスト : 臼井勲
  • ツイート
印刷
関連タグ:臼井勲

久しぶりに5代目小さんの「粗忽(そこつ)長屋」を聞いた。この落語は僕の最も好きな落語の1つである。小さんは多くの、いわゆる「粗忽もの」を得意としているが、その中でも出色のものだと思う。

普通あり得ないバカバカしい話ではあるが、小さんは、まくらに粗忽の小話を連ねていき、やがて本題の話に移っていく。この導入の部分が何とも楽しいし、自然と話に引き込まれていくのは心憎いばかりである。

ある長屋に、1人はまめでかいがいしい、おせっかいやきの粗忽者の八っつあん、もう1人は、無精でのんびりやの粗忽者の熊さんが隣り合って住んでいた。ある日、八っつあんが浅草の観音様にお参りしての帰り道で、人だかりに出くわす。何があるのか見ようとするが、群衆で前に出られない。

それなら、と這(は)いつくばって人の股座(ぐら)をくぐって前に出ると、行き倒れの死人である。番をしている人が「誰か、この人に見覚えのある方はいませんか?」との声で、八っつあんがよく見ると、何と熊さん(そっくりの人)なのである。

「あっ! 熊の野郎だ」の声に、番人も「よかった。この方の身内の人に来てもらって、遺体を引き取ってもらいたい」「いや、こいつには身内はいません。独りぼっちのかわいそうなヤツです。でも、当人に知らせて、引き取りに来させやしょう」

「困ったな、この人は。最後にその人に会ったのはいつ?」「今朝、会ったばかりだが、ボヤっとしていた」「じゃ違うよ。この人は昨晩から倒れているのだから」「いや、とにかく当人を呼んできて、確かめさせやしょう」「困ったな、この人は・・・」

やがて、八っつあんは長屋に戻り、熊さんを起こす。「驚くなよ。お前は昨夜(ゆんべ)、横町の路地で死んでるよ!」「そう言われても、死んだ気がしないよ。昨夜、酒屋で飲んで、酔っぱらっちゃって、どう帰ったかよく覚えてねえんだ」

「それ見やがれ。おメエは粗忽だから、死んだのも知らねえで帰って来たろう」・・・とやりとりが続いて、ついに熊さんも八っつあんの言い分に同意し、死んでしまったことに納得する。やがて、気の進まない熊さんを強引に現場に連れてやって来る。

「当人をつれて来やした」「すみません、ちっとも知らなかったもので、お世話になっています」「弱ったな! また訳の分からない人が1人増えてしまった。あなた、しっかりしてくださいよ。これはあなたじゃないんだから」と番人が止めるのも聞かず、八っつあんが「当人のものを当人が引き取ってどこが悪い。さあ持って帰るんだ!」と、熊さんをせかす。

熊さんが死人をつくづく見て「こりゃ俺だ。なんて情けねえ姿になっちまって・・・」と死人を持って行こうとするとき、思わず出るせりふが、この落語の落ちになっている。重要な言葉だ。

「兄貴、なんだか分からなくなってきちゃった。持たれているのは確かに俺だが、持っているこの俺は、どこの誰だろう?」

この落ちのせりふは、笑わせる、実にパンチの効いた言葉である。思わずウーンとうならせる、切れる言葉である。単なる「笑い」の奥に、人間存在について、心の奥底にこだまするような含蓄のある言葉である。

ソクラテスは、「汝自身を知れ!」を哲学の第一歩とした。デカルトの「我思う、故に我在り」が、近代的思惟の出発点になった、と言われている。思うに、私たちは「自分は何々である」とか、「俺は、本来こういう者だ」と思っているものの、ほとんどの部分は、それまでの人生の中で誰かに、直接か、書物や話や映像などを通して、誰かの思想やイデオロギーに洗脳、という言葉は語弊があるが、教えられ、思い込まされて、「自分とは、こういう者だ」とどこかで規定してしまっているところがあるのではないだろうか。八っつあんに思い込まされている熊さんのように。

ところがある時、それが崩される機(とき)がある。何かの拍子に、こんな考えをしている、こんな行動をしている自分が本当の自分なのだろうかと自問する刻(とき)があるかもしれない。「今まで自分だと思っていた自分をつくづく見て、確かにこれが俺だと信じてきたが、これを持っている、すなわち、疑っている、思惟している自分は、どこの誰だろう?」と。

新約聖書の3分の2を書き、キリスト教を形成する礎(いしずえ)を作ったといわれるパウロはある時まで、キリスト教徒は真理に敵する輩(やから)だと思い込んで、これを迫害し、彼らを捕らえては投獄していた。

ある時、同じ目的でダマスコ(ダマスカス)に向かっていたとき、真昼であったが、あのシリアの砂漠の焼け付く太陽より、もっと強烈な輝く光に照らされ、地に倒れた。すると、天から声があり、「なぜ私を迫害するのか」というイエス・キリストの声を聞く。

彼は突然盲目になり、手を引かれてダマスコに入った。そこでアナニヤというキリスト者に手を置いて祈ってもらうと、「目から鱗(うろこ)のようなものが落ち、見えるようになった」。これが一般にも使われている「目からウロコ」の起源にもなったパウロの回心の記事である。

やがて彼は、アラビヤの荒野に退き、ひたすら祈りと瞑想(めいそう)のうちに新しい自分を発見し、行くべき道を確信し、進み出した。ペテロをはじめ、かつて自分の敵であった人々と和解し、彼らから信頼され、使徒として送り出されていく。あのネロ皇帝によってローマで殉教の死を遂げる日まで、当時の地中海世界を隈なく巡回し、テント張りという職で自給しながら、あらゆる苦難辛苦をものともせず、キリストの福音を伝えていった。

そこには少しのブレや迷いもなかった。当時、すでに始まっていたオリンピック競技の選手のように、ゴールに向けてひたすら走ったのであった。

誰でも、熊さんのように他から規定され、そう信じ切っていた自分に、ある時「自分を運んでいるこの自分は、いったいどこの誰だろう」と自問する瞬間があるのではないだろうか。誰でもがパウロのような経験をするわけではなく、そういった経験をする人は少ないであろうと思うが、それでも、新しい自分を発見する契機として、そんな刻を生かしたいものである。

<<前回へ     次回へ>>

◇

臼井勲

臼井勲

(うすい・いさお)

1942年東京・深川生まれ。57年受洗。64年早稲田大学文学部西洋史科卒業。96年JTJ宣教神学校卒業。2007年から日本聖契キリスト教団の伝道師となり、現在、同教団新秋津キリスト教会伝道師。同教団の酒匂キリスト教会、平塚聖契キリスト教会で説教奉仕をしている。JTJ宣教神学校「イスラエル史」講師。「『物語り』から聖書を学ぼう」講師。聖句書道教室講師。平塚のルデヤ理容館店主。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:臼井勲
  • ツイート

関連記事

  • 床屋談義(2)「まっとう」について考える 臼井勲

  • 床屋談義(1)床屋と縁側 臼井勲

  • 聖書の中の気になる人物―イシュマエル(4)イシュマエルもイエス・キリストの型では? 臼井勲

  • 聖書の中の気になる人物―イシュマエル(3)アザゼルのやぎとは誰か 臼井勲

  • 聖書の中の気になる人物―イシュマエル(2)欧米人になぜ、イシュマエルの名がないのか? 臼井勲

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 見捨てない神 穂森幸一

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 第一のことを第一にする人生の祝福 菅野直基

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(7)共同体の重視 臼田宣弘

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.