Skip to main content
2025年7月3日23時18分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
床屋談義

床屋談義(4)「幸」の字で思うこと 臼井勲

2017年8月5日16時16分 コラムニスト : 臼井勲
  • ツイート
印刷
関連タグ:臼井勲

2009年の鳩山政権誕生でファーストレディーになられた幸(みゆき)夫人の言動が、当時話題を呼んだ。「幸」を「みゆき」と読むのは、「御幸」あるいは「御行」が「天皇が外出されること」で「みゆき」ということから来たと思われるが、普通は「さち」と読むのが自然である。

古語辞典を引くと、この「幸(さち)」は、神話の中の海幸(うみさち)の名前のように、海で漁をすること、またはその獲物のことをいうとある。そして、それが「しあわせ」をもたらすので、幸福の意味でもあるという。

その時の選挙では、「幸福実現党」から多くの候補者が出たことも印象に残っている。この「幸福を実現する」というのも、幸福とは獲得物であり、そこから得られる富を持つのが幸福ということになる。幸福とは、果たしてそれだけだろうか。

有名な詩に、「山のあなたの 空遠く 『幸』住むと 人のいふ」とあるが、この「幸(さいわい)」は、理想として追い求める、目に見えない心の希望、幸福感のような抽象的な世界を指すもののようでもある。「幸」とは何かと人に問えば、十人十色、百人百色の答えが返ってくるであろう。

ある時、漢字博士、白川静の『字統』でこの「幸」の字を調べてみた。驚いたことに、何とこの「幸」の字源は、手かせ(手錠)の形から来ているのだ。その説明は、罪を犯して手錠をかけられた状態にならないこと、ひどい目に遭わないで済むことを表しており、このことが広く「幸い」「しあわせ」の意味となったとある。手錠をはめられ、自由を奪われた状態、苦しく、悲惨、不自由、すなわち「不幸」といえるであろう。

昔、僕は結核で長期入院している母方の叔父を見舞ったことがあった。この叔父は戦争に行って、敗戦と同時にソ連に抑留された。1948(昭和23)年ごろにようやく解放され、帰国できた。

その後、日通に勤めて、主に美術品の梱包、輸送の分野を開拓した人だった。病魔により再びベッドにその肉体を縛られる状態になった。その病床で、叔父が今までの人生で一番幸福を感じた瞬間について話してくれた。「あのラーゲリ(強制収容所)から解放された朝、真っ青な大空の下で、せいせいと野糞をたれたときほど、幸せを感じたことはなかった」と。

確かに、足かせを解かれて自由になったとき、人は幸福を感じる。強力な抑圧や支配からの解放、これが幸せといえるのは本当だろう。しかし、人はその後自由になって何の束縛もなくなり、何もすることがなくなると、幸せ感が薄れていく。この頃、僕はこの足かせの状態こそが幸せであるという逆説も真なりと思うようになった。

エディ・マーフィの主演する映画で、彼が刑期を終えて出所するのを刑事が外で待ち構えていて、無理やり彼と自分の腕に手錠をかけ、結んでしまうというのがあった。ある事件の解決にぜひとも彼の協力が必要であるからという理由で、ムチャな話である。

どこへ行くのも、トイレに行くのもいつも一緒の生活が始まるというコメディー・タッチの物語である。初めはイヤで不自由でしょうがないが、一緒に悪者を追い詰めていくことにやがて生きがいを見いだしていく主人公の姿が描かれる。

意外と人は、誰かと何かと手かせで結ばれて協力させられ、協力していることを幸福と感じているのではないかと思うようになった。4歳の孫のモモちゃんを見ていると、とにかくママの手とつながれていることが一番の幸せなのである。

使徒パウロは、その手紙の中で「主において常に喜びなさい。重ねて言います。喜びなさい」(フィリピ4:4)と書いている。この手紙を出している彼自身はローマの獄につながれていて、しかも彼は自分を「キリスト・イエスの囚人」(エフェソ3:1)と紹介しているのである。

賛美歌の中に「主よ、われをば とらえたまえ、さらばわが霊(たま)は 解き放たれん」(讃美歌333)という1節があるが、この逆説的表現の中に、人間が持っている幸福感の不思議な消息があるように思える。

人間は、手持ち無沙汰でブランとした自由よりも、何か目に見えない理想や希望とか愛に、あるいは神に手かせをはめられて、行動を共にし、時に行動を強いられるときもあろうが、その方がむしろ自由であり、生きがいがあり、幸せを感じているのではないか。

僕の好きな人に、伊能忠敬がいる。江戸期の末ごろ、千葉の佐原の人で生い立ちは甚だ不幸だった。幼少で母を亡くし、貧しい父から他家に養子に出された。富裕な商家で庄屋を兼ねる家の権高(けんだか)でわがままな娘の婿になり、使用人同様に働いた。

彼は向学心旺盛で、厳しい1日の労働の後、家族が寝た後、菜種油を灯して書物を読んだ。それさえもある時、妻にとがめられ、油がもったいないと止められた。妻が亡くなって庄屋の主になり、その家業を成功させて子どもに跡を継がせ、楽隠居になったときには、すでに50歳を過ぎていた。

それで自由になった彼は江戸へ出て、天文学、数学を学んだ。師の高橋至時(よしとき)に頼まれた日本地図作成の仕事を引き受け、残りの生涯のほとんどをかけて、自前の費用と労力でその事業をほぼ完成させた。

彼には一生涯、常に足かせが結ばれていた。それから解放された後、ブラリとした生活は送らず、自ら新しい足かせを結んだ。生涯、それを結び続けた。彼の生涯は誠に幸せだったと僕は思っている。

<<前回へ     次回へ>>

◇

臼井勲

臼井勲

(うすい・いさお)

1942年東京・深川生まれ。57年受洗。64年早稲田大学文学部西洋史科卒業。96年JTJ宣教神学校卒業。2007年から日本聖契キリスト教団の伝道師となり、現在、同教団新秋津キリスト教会伝道師。同教団の酒匂キリスト教会、平塚聖契キリスト教会で説教奉仕をしている。JTJ宣教神学校「イスラエル史」講師。「『物語り』から聖書を学ぼう」講師。聖句書道教室講師。平塚のルデヤ理容館店主。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:臼井勲
  • ツイート

関連記事

  • 床屋談義(3)俺を持っている俺は、どこの誰だろう 臼井勲

  • 床屋談義(2)「まっとう」について考える 臼井勲

  • 床屋談義(1)床屋と縁側 臼井勲

  • 聖書の中の気になる人物―イシュマエル(4)イシュマエルもイエス・キリストの型では? 臼井勲

  • 聖書の中の気になる人物―イシュマエル(3)アザゼルのやぎとは誰か 臼井勲

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • ワールドミッションレポート(7月3日):コンゴ民主共和国 戦火の中、詩篇91篇にすがるキリスト者たち

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア語の世界(27)シリア語旧約聖書の各書名と1章1節の和訳 川口一彦

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.