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脳性麻痺と共に生きる

脳性麻痺と共に生きる(32)恐怖のプール 有田憲一郎

2017年7月29日07時48分 コラムニスト : 有田憲一郎
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関連タグ:障がい

プールが大好きで、夏前の5月6月ぐらいになると「早く夏にならないかな」と学校のプール開きが楽しみになる子どもの姿があります。プールが始まると大いにはしゃぎ、9月のプール納めの時には「終わっちゃった。また来年か」と寂しさを感じる。そんな思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

養護学校(現在の特別支援学校)でも夏になると、週に数日のプール授業がありました。僕が通っていた養護学校では小学部、そして中学部と高等部が一緒のプールの授業を行っていました。

僕のように体が不自由で、硬直や緊張が強い人にとって、プールに入ると余計な力が抜けやすく、体がリラックスでき、スムーズに動かすことができたりします。そういう意味では、プールはリハビリの1つとも言えますし、純粋にプールに入れることを楽しみにしている子は多くいます。

その一方で、水が怖くてプールが嫌いな子も少なくはありません。実は僕も、プールが嫌いな子の1人でした。ただ単に初めから嫌いだったわけではありません。プールが嫌いになった大きな出来事があり、今でも忘れることがありません。

小学1年生の夏の暑い日のことでした。「今日はプールの日だね。みんな、楽しみだね。入ろうね」。先生方は僕たちの体温を計り、体調をチェックし、水着に着替えさせてくれ、それぞれの浮袋を膨らませてくれました。「プールで泳ごうね」と先生に連れられ、プールサイドに行きました。

子どもたちは浮き輪を付け、先生が付いてプールに入ります。1人の先生が数人の子を担当し、順番でプールに入れてほぼワンツーマンで泳がせます。重度な障碍(しょうがい)の子が多くて1人で泳げる子も少なく、僕も含めほとんどの子が浮き輪を付けて泳いでいました。

僕が1年生の頃は養護学校も少なくて児童数も多く、1度に1人の先生が数人の子に付いて泳がせなければなりませんでした。

「プール、入ろうか」。先生に抱えられ、浮き輪を付けてもらいプールに入りました。25メートルの大きく深いプールで、僕は体を軽く支えてもらい、揺らしてもらいながら、「憲ちゃん、楽しいね。先生が支えているから、力抜いてリラックスして。足と手、もっと動かそう」と言われ、両手足を動かして楽しんでいたのを思い出します。

その時、他の子を見ている先生が「先生!ちょっとだけ〇〇ちゃんも見ていてください」と、僕のことを見ていた先生に頼んできました。僕に付いていた先生は「分かった」と返事を返していました。理解もしていなかった幼い子どもの僕でしたが、先生同士のそんなやりとりを40年たった今でも覚えています。

返事をした先生は「憲ちゃん。ちょっとだけ〇〇ちゃんのところに行ってくるから。すぐに先生、戻ってくるから、しっかり浮き輪につかまって待っていてね。手、離さないでね」と言って、数メートル離れた〇〇ちゃんのところに行ってしまいました。当時は考えることもほとんどできませんでしたから、言われるまま浮き輪につかまり、僕はただ浮いて遊んで楽しんでいました。

先生が離れると、周りで他の子を見ている先生方が、少し離れた場所から僕の様子を見てくれていました。小さい体の僕は、1番小さい浮き輪を使っていてもサイズが合わず、体格に比べて少し大きめの浮き輪しかなかったのだと思います。

しばらく僕は、他の子のところに行ってしまった先生の姿を目で追いながら、浮き輪につかまっていました。僕から離れたところで先生は、僕に背中を向けて違う子のサポートをしています。「すぐに戻ってくるからね」と言って離れた先生は、なかなか僕のところに戻って来なかったのです。

浮き輪につかまっている腕と手は、時間を追うごとにズレ、浮き輪から離れそうになります。この時、僕は自分で身の危険を感じました。自分の意志や考える力もありませんでしたが、その瞬間「おぼれる」「死んでいくのか」「死にたくない」という考えが脳裏に浮かんだことを覚えています。慌てて必死でつかまり持ち直そうとしますが、手が離れ、僕の体は浮き輪から抜け落ち、一瞬にして深いプールに沈んでいったのです。

周りで他の子を見ている先生方が僕の様子も見てくれていたと思いますが、僕から目を離した一瞬の出来事だったのでしょう。浮き輪から抜けたことを周りに気付かれず、僕は沈んでいきました。

誰にも気付かれず、また助けてもらえずプールの底に沈んでいきました。息もできず、もがき苦しみ、無我夢中で先生の足をつかんだことを今でも忘れることができません。

僕は足をつかんだ先生に気付いてもらい、助けられたのです。その後の記憶はまったくありません。あの時、もし先生の足をつかむことができていなかったら、どうなっていたか分かりません。そう考えるだけで恐ろしくなってしまいます。この出来事が大きなトラウマとなり、それ以降、僕はプールが嫌いになってしまいました。

以前にも書いたように、僕は養護学校を2回転校しています。転校すれば、そんな出来事があったことなど知る人は誰もいません。しかし、環境が変わっても「プール」と聞いただけで、僕にはあの記憶がよみがえります。

夏自体は大好きな僕ですが、学校で配られるプールの予定表を見るのにも、ちょっとした苦痛を感じていました。できることなら入りたくないと願っていた僕は、「雨、降って中止にならないかな」と心の中で思いつつも、願いはなかなか届かず、プール日和が続き・・・。プールの日になると、いつもお腹が痛くなっていました。

プールサイドで待たされている僕を「お待たせ。憲ちゃんの番だよ」と、先生が迎えに来ます。学校も変わり、何があったかも知らない先生は、「なに、怖がっているの? そんなに怖がらなくても、先生が付いているから大丈夫。入ろう」と言って、僕に浮き輪を付け、プールに入っていきます。

プールに入り「体の力抜いて。緊張しないで、楽にして」などと声を掛けられましたが、あの出来事があった僕は、毎回あの恐怖におびえ、体がこわばり、本来であれば体がスムーズに動かせるはずなのに、逆に体の硬直や緊張が増していたことを思い出します。

中学部になると、担任の先生が僕に「水に慣れるように、これに顔を浸ける練習をしよう」と、洗面器にプールの水を入れ、顔に水を付ける練習をさせてくれました。僕はなかなか顔を水に浸けることができず、プールのたびに練習をし、ようやく少し水に顔を入れることができるようになり、「やった!できた」と先生と喜び合いました。

「洗面器に顔を浸けられるようになったんだから、今度はプールで練習しよう」。先生は僕にそう言います。しかし洗面器とはわけが違い、プールの中に入ると、頭の中であの恐怖がよみがえるのでした。

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◇

有田憲一郎

有田憲一郎

(ありた・けんいちろう)

1971年東京生まれ。72年脳性麻痺(まひ)と診断される。89年東京都立大泉養護学校高等部卒業。画家はらみちを氏との出会いで絵心を学び、カメラに魅力を感じ独学で写真も始める。タイプアートコンテスト東京都知事賞受賞(83年)、東京都障害者総合美術展写真の部入選(93年)。個展、写真展を仙台や東京などで開催し、2004年にはバングラデシュで障碍(しょうがい)を持つ仲間と共に展示会も開催した。05年に芸術・創作活動の場として「Zinno Art Design」設立。これまでにバングラデシュを4回訪問している。そこでテゼに出会い、最近のテゼ・アジア大会(インド07年・フィリピン10年・韓国13年)には毎回参加している。日本基督教団東北教区センター「エマオ」内の仙台青年学生センターでクラス「共に生きる~オアシス有田~」を担当(10〜14年)。著書に『有田憲一郎バングラデシュ夢紀行』(10年、自主出版)。月刊誌『スピリチュアリティー』(11年9・10月号、一麦出版社)で連載を執筆。15年から東京在住。フェイスブックやブログ「アリタワールド」でもメッセージを発信している。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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