Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
コプト正教会を知るイスラム国(IS)

コプト正教会を知る(3)コプト正教徒殺害事件の背景 2015年のリビアでのテロ事件(後編)三代川寛子

2016年12月17日20時12分 コラムニスト : 三代川寛子
  • ツイート
印刷
関連タグ:コプト正教会三代川寛子イスラム国(IS)
チャールズ皇太子、キリスト教がその生誕の地から5年以内に消滅するだろうと警告+
イラク第2の都市モスルの教会にはためく過激派組織「イスラム国」(IS)の旗 (写真:ツイッターへの投稿より)

エジプトにおける改宗問題「カミリヤとその姉妹たち」とその余波

過激派組織「イスラム国」(IS)という組織は、類似の過激思想を持つ武装勢力と比較しても、シーア派のムスリムをも異端として排除の対象にしているなど、宗教・宗派に関する非寛容性が顕著である。もともとイスラム法においては、キリスト教徒やユダヤ教徒などの啓典の民を庇護民(ズィンミー)として位置付け、ムスリム側が庇護民の生命と財産および信仰の自由を保障することが定められている。それに反して出稼ぎ労働者のコプト正教徒の人々を「庇護民」ではなく「十字軍」として扱い、殺害する根拠となったのが、「カミリヤとその姉妹たち」であった。

動画「血で署名された、十字架の民へのメッセージ」で言及されている「カミリヤとその姉妹たち」とは、イスラムに改宗したとされるコプト正教徒の女性カミリヤ・シャハータおよびワファー・コスタンティンのことを指している。両者とも、コプト正教会の司祭の妻であり、イスラムに改宗したという噂(うわさ)が立ち、一時期コプト正教会の保護下に置かれた人物である。

いずれも、改宗への動機は離婚であったとされている。コプト正教会では離婚を認めるに当たって厳しい条件が課されており、司祭の妻ともなればさらに離婚が難しくなるため、婚姻そのものを無効にする最後の手段としてイスラムへの改宗が検討されたようである。イスラム法の規定では、イスラム教徒の女性はキリスト教徒の男性と婚姻関係を結ぶことができないため、キリスト教徒の夫を持つ女性がイスラムへ改宗すれば自動的に婚姻が無効になるというわけである。

ただ、エジプトも含む中東諸国において、改宗は個人の信仰の問題としては扱われず、宗教共同体間に緊張関係を生じさせ、改宗者を出した一族には社会的制裁が加えられるなど、社会的影響力の大きい行為であり、気軽に実行できるものではない。

なお、カミリヤは2011年5月にイスラムへの改宗を否定しており、ほとぼりが冷めるまではコプト正教会の保護監督下にあったものの、その後は元の家族と共に暮らしている。ワファーに関しても、教会の保護監督下にある間は全く消息不明であったため、コプト正教会によって殺害されたのではないかという噂すらあったが、現在は元の家族と暮らしているようである。

しかし、カミリヤおよびワファーの「改宗」は一部のムスリムの間では既成事実として扱われており、彼らの間でこの一件は「両者とも実際にイスラムに改宗したにもかかわらず、コプト正教会によって不当に拘束され、さらにキリスト教に再改宗させられた事件」と認識されている。それが上述の動画の「敵対的なエジプトの教会」および「カミリヤとその姉妹たちのための報復」という文言につながったのである。

カミリヤらの「改宗」を根拠に、キリスト教徒がISに攻撃されたのはリビアの事件が初めてではない。カミリヤの事件は2010年7月に発生したが、その3カ月後の2010年10月末にはIS(当時の自称は「イラクのイスラム国」)がカミリヤの一件の報復としてバグダッドのシリア・カトリック教会を襲撃し、それにより自爆犯も含め58人が死亡している。

シリア・カトリック教会は、シリア正教会から分離した東方典礼カトリック教会であり、コプト正教会とは直接的な関係はないのだが、キリスト教世界を一枚岩の「十字軍」とする論法により、イラクの教会がエジプトで起きた事件の報復の対象となったのであった。

また、イラクの教会が報復の対象になった理由として、ISが発行するウェブマガジン「ダービク」第7号(ヒジュラ暦1436年ラビーウ・アル=アーヒル月、 31ページ)には、2010年当時「イラクのイスラム国」にはエジプトに拠点がなかったため、代わりに勢力圏内の地域であるイラクのキリスト教徒を標的にした旨の説明がある。

また、同じ箇所には「彼(カミリヤおよびワファーの事件発生時のコプト正教会総主教シェヌーダ3世を指す)の教会がエジプトでイスラム教徒の女性を迫害するならば、彼は世界中で殺害されるキリスト教徒一人一人に関して直接責任を負うことになる」との文言も見いだされ、今後もカミリヤおよびワファーの事件を根拠にキリスト教徒に対する攻撃が行われる可能性を示している。

2015年の事件へのエジプト政府の対応と政治的背景

このリビアの事件に対するエジプト政府の反応は素早かった。動画が公開された翌日の2月16日には、エジプト空軍が報復としてリビアのISの訓練施設および武器保管庫を爆撃し、3人の幹部を含む60人のIS戦闘員を殺害した。

また、斬首事件の犠牲者の遺体は現在も所在不明であるものの、動画が公表された翌日に犠牲者の出身地であるミニヤ県のアル=ウール村で葬儀が執り行われ、それには首相および内務相ら4人の大臣、ミニヤ県知事、軍最高評議会のメンバーらが派遣されて参加した。

さらに、エジプトのシーシー大統領は、カイロのコプト正教会総主教座を訪れ、現総主教であるタワドロス2世に対して哀悼の意を表した。また、首相は犠牲者の遺族にエジプト政府の予算から補償金を支払うことを約束している。

このような、いわば手厚い待遇の背景には、コプト正教徒の間でエジプト政府の対応に不満が高まっていたことが挙げられるだろう。日本ではなかなか報道される機会が少ないが、リビアのISの事件の前からリビアでは、コプト正教徒が誘拐・殺害される事件が相次いでいた。

例えば、2014年2月にはベンガジ郊外で7人のコプト正教徒が誘拐され、翌日頭部を撃たれた遺体となって発見されており、同年12月にはコプト正教徒の一家がシルト市の自宅で殺害・誘拐されている。いずれの事件に関してもエジプト政府の反応は薄かった。

また、リビアのISの犠牲になった20人のコプト正教徒に関しては、2015年1月初めにエジプト人労働者の宿舎からコプト正教徒だけが選ばれて誘拐されたことが報道されていたが、この誘拐事件に関してもエジプト政府が解決に向けて十分な努力を払っていないとしてコプト正教徒の間で批判が高まっていた。

シーシー大統領は、イスラム主義組織ムスリム同胞団を支持母体とするムルシー前大統領を退陣に追いやった2013年7月のクーデターを指揮した人物である。そのため、彼にとって「テロとの戦い」を掲げてイスラム主義者を排除し、治安の回復を図ることは自らの正統性の根拠の1つともなっている。

また、リビアの事件の場合、海外における自国民労働者保護という側面もあり、コプト正教徒に限らず、リビアで武装勢力に拘束されるエジプト人労働者が後を絶たないため、素早く報復攻撃を行うことで国民の連帯意識を高め、「頼れる政府」として政権への支持を高める狙いもあったと推測できる。

<<前回へ     次回へ>>

◇

三代川寛子(みよかわ・ひろこ)

上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻より、2016年に博士号を取得。専門は、19世紀末から20世紀前半のエジプトにおけるコプト・キリスト教徒の文化ナショナリズム運動。現在、上智大学アジア文化研究所客員所員、オックスフォード大学学際的地域研究学院客員研究員。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:コプト正教会三代川寛子イスラム国(IS)
  • ツイート

関連記事

  • 日本初のコプト正教会開堂式 京都府木津川市で教派超え100人が参列

  • コプト正教会が東京で礼拝、司教が日本の教会指導者にメッセージ 京都で日本初の会堂使用へ

  • 「シリア難民の避難に積極的な意味 温かく受け入れて」と宗教学者の久山宗彦氏、難キ連セミナーで講演 テロリストの入国問題についてコメントも

  • エジプト大統領、「知恵と愛国心」でキリスト教徒を称賛

  • コプト正教会の祭司、教会出た後に射殺される 複数による犯行か

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • ヨハネの黙示録(3)御言葉と証し 岡田昌弘

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.