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社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯

社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(11)軍国主義の到来

2016年6月7日18時54分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:賀川豊彦

1924(大正13)年に入ると、賀川は眼病をはじめさまざまな病気に煩わされ、上北沢に家を借りて療養を余儀なくされる。

しかし、彼はその年の11月から8カ月にわたり、世界一周の旅に出た。そして、ヨーロッパもアジアも戦争という暗い闇に脅かされていることを知った。

1925年7月30日。御殿場の東山荘で開かれた「イエスの友会」修養会で賀川は「百万の霊を神に捧ぐ」と書かれた横断幕を背にして、今こそキリストの贖罪愛を実践すべきときが来たと語り、「神の国運動」の開始を宣言したのだった。

その一つの試みが1927(昭和2)年2月に開校となった「農民福音学校」であった。賀川はここで農村の青年たちに福音を伝え、人格教育を行うと同時に立体農業――山林を生かして農作物を生産する方法を教えた。

この農業法は、やがて多くの農家を救うことになる。またこの年、吉田源治郎や馬淵康彦らが大阪に「四貫島セツルメント」を作ったので、「神戸イエス団友愛救済所」「本所キリスト教産業青年会」と共に賀川のセツルメント事業は3本の柱を地中に埋めることになった。

「キリストの贖罪愛を全身で実践しているクリスチャンが日本にいる」。世界の人々は彼の働きを知ると、こう言って驚嘆したという。米国においては「賀川豊彦を支える会」というのができ、会員の1人ヘレン・タッピングは以後、彼を援助し、最も親しい友人の1人となった。

1931(昭和6)年9月18日。満州柳条溝(りゅうじょうこう)付近で満州鉄道が爆破されるという事件が起きた。11月に入ると、日本軍は中国人が暴動を起こしたという理由のもとに、一斉に錦州を攻撃し始めた。出征兵士は殺意に目をギラギラさせて戦地に向かい、やがて日本に生々しい情報が流れてきた。

「貨車に家畜みたいに中国人が詰め込まれて運ばれてきたが、扉が開いたときには下の者は押し潰されて、半分は盲目になっていたと。軍隊はやつらを追い立て、橋の工事をやらせたそうだ」

「何も食べさせずに牛や馬のようにこき使って働かせた末に、動けなくなった者をひとまとめにしてガソリンをかけて焼き殺したと」

賀川は両手で耳をふさぎ、床にひれ伏して日本の罪を赦(ゆる)してくださいと祈った。

そんなある日のこと。立派な軍服を着た2人の軍人が訪ねてきた。最初賀川は、憲兵が自分を捕らえに来たのかと思った。

「先生、われわれをお忘れですか?」。思わず、賀川の顔が輝いた。それは日曜学校で彼にまつわりついていたあの鼻たれの熊蔵と虎市だったではないか。

「先生! 自分たちは軍隊に入ったのです」。熊蔵が誇らしげに言うと、虎市も続けた。「先生! 満州で大暴れしてきましたよ。やつらをこの銃剣で突き刺し、切り捨てて、日本の軍隊の力を見せつけてやりました」

賀川は、くたくたと彼らの前に膝をついた。「先生、どうしてよくやったと褒めてくださらないのですか」「久しぶりに休暇をもらったから、報告に伺ったのです。では、先生ごきげんよう」

そして、2人は敬礼をすると立ち去ろうとした。「ちょっと待て!」。賀川は、泣きながら駆け寄り、2人の軍服の裾をつかんだ。

「熊蔵! 虎市! 私は君たちに人殺しをせよと教えたことがあるか。何の抵抗もしないよその国の人たちの血を流させるために君たちの面倒を見たのか」

すると彼らは驚いたように顔を見合わせた。「なぜそんなことを言われるんですか。自分たちは日本を世界一の強国にするために昼も夜も戦っているんです」

そして、彼らはもう一度敬礼すると、永久に賀川の前から姿を消した。

1932(昭和7)年3月。日本軍によって満州国が建てられると、いよいよ国内には軍国主義の色彩が濃くなってきた。賀川は1922年創刊の雑誌『雲の柱』に毎号のように世に警告する文章を書いた。

「軍備において世界第一の国となるよりは、教育を重視し、徹底した民主主義に生きるべきである」「たとえ日本が世界一の強国となろうとも少しも誇れることではない。日本が本当に世界に誇れる国となるにはただ一つ、敵をも赦し、罪人を救うキリストの愛によって平和を守り抜くことである」

たちまち、賀川は日本中から批判や中傷の言葉を浴びせかけられた。「国賊! 非国民!」。しかし、このような中にあって賀川は、貧しい人たちが最低限の医療を受けられるために「医療組合」を立ち上げたのであった。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:賀川豊彦
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