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社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯

社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(6)新たな人生航路

2016年3月19日19時10分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:賀川豊彦

その年の5月。「イエス団」の教会から少し離れた日暮通(ひぐれどおり)4丁目にあるボタン工場から説教を頼まれて通ううちに、大道芸人の息子でその工場で働く職工の武内勝(たけうち・まさる)、芳夫(よしお)兄弟が話を聞いて教会に来るようになった。そして、勝はそのうち洗礼を受けてクリスチャンとなり、後に賀川の片腕として「イエス団」を支える働きをするようになる。

「新川は先生が来られてから、えろうよくなりました」と、くず拾いの男が言った。「殺人も減ったし、子どもたちも先生になつき、人の心が穏やかになりましたわ」。賀川の胸は熱くなった。そして、この愛する新川の人たちの生活を潤したいと、一膳飯屋(いちぜんめしや)「天国屋」を開くことにした。この時、中村栄次郎という人が協力を申し出たので、彼に一任したところ、この男は大変上手に店を回転させ、「天国屋」は大繁盛であった。

しかしこの時、植木屋の辰(たつ)という人がこの繁盛ぶりを妬み、中村が用いられたことに腹を立て、酒をあおって店に乗り込んできた。そしてテーブルを倒し、鍋を床に叩きつけ、2、30人分の皿や茶わんを粉々にした。それから、教会の台所の板を割って中に入り込み、斧で障子、棚、そして会堂のイスなどを叩き壊し、駆けつけた巡査に逮捕されたのだった。

中村は疲労から体調を崩して暇を取り、その後「天国屋」は赤字続きの末、ついに閉店せざるを得なくなったのである。この事業は失敗であった。

この頃、賀川は芝はるという女性と親しくなった。彼女は「福音印刷」の神戸工場で働く芝房吉の娘で、女工としてここで働いていた。賀川がこの会社の依頼でここに説教に来たとき、はるはその話に感動し、以来2人はいろいろな話をするようになった。そして、最低生活をする人々に奉仕がしたいという思いが同じであることを知ったのである。

その年のクリスマス。賀川は生活困窮者のために食事会を催し、教会堂に入り切らないほどの人々を招いた。このために近くの教会の青年たちが応援に駆けつけ、芝はるも印刷会社を休んで手伝いに来た。彼女は教会の婦人会の人々に交じって食事作りを手伝い、来た人たちに赤飯をよそってあげたり、お茶を注いであげたりと、まめまめしく働いた。

「おや? おみつさんはどうしたろう?」。突然賀川はそう言った。おみつというのは半身不随で寝たきりになっている女性で、人々が交代で面倒をみていた。賀川はクリスマスの祝会に彼女を招いてあげようと考えていたのだった。

「おみつさんなら、にわとり小屋に寝ておったよ」。この時、日曜学校に来ている子どもたちが教えてくれた。「垂れ流しになってしもたんやと。そいで、誰も面倒みる者がおらへんので、にわとり小屋に捨ててしもたらしいよ」

どうせ彼女はもうじき死ぬから―と人々は止めたが、賀川はにわとり小屋に駆けつけ、すさまじい臭気を漂わせている彼女を背負って自分の家に連れて行った。

するとはるは、早速教会から皆で作った吸いもの、かまぼこや煮物などのごちそうを運んできた。それから彼女の便の始末や着物の洗濯まで引き受け、自分の寝間着を持ってきて彼女に着せてあげるのだった。不思議にもこの時からおみつは「大腸カタル」が治ってしまい、普通の便をするようになった。

この日を境に、賀川と芝はるは急速に親しくなり、1913(大正2)年5月27日、「神戸日本キリスト教会」で結婚式を挙げた。司会はマヤス博士。司式は青木澄十郎(ちょうじゅうろう)牧師であった。東京や徳島からも多くの祝電が寄せられた。

2人は、この新川で日本最初のセツルメント事業を始めようと計画した。この地域を救うためには、日本からまずスラムというものがなくならなくてはならない。そこから始めるには、伝道のほかに教育、人事相談、職業紹介、無料宿泊、簡易食堂などの事業を行うためのそれ相当の知識が必要であることを2人は同時に痛感した。

それには専門知識を基礎から学ばなければならなかった。賀川は米国に留学することにし、はるも横浜の共立女子神学校に入学を決意した。彼の渡航に際してマヤス博士とローガン博士はそれぞれ100円ずつ献金してくれた。留守の間、武内勝が「イエス団」を守ってくれることになり、賀川は安心して全てを彼に一任した。

また、この頃、昔さんざん彼を虐待した義母のみちが彼を頼って神戸に出て来ていた。そしてなんと、彼女は乏しいへそくりの中から100円を渡してくれたのだった。

「体に気いつけてな」。彼女はポツンと言った。そしてこれが、彼女が口にする初めての優しい言葉であった。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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