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社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯

社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(9)死線を越えて

2016年5月6日07時10分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:賀川豊彦

賀川が購買組合を作るために奔走していた頃、「改造」という雑誌の編集長、横関愛造(よこぜき・あいぞう)と大阪毎日新聞の記者、村島帰之(むらしま・よりゆき)が賀川の事業に共鳴し、彼の自伝を「改造」に連載したらどうかと話し合っていた。

早速申し入れたところ、賀川は大切にしまっておいた原稿を取り出して彼らに見せた。「これは自伝風の小説ですが、私の人生そのものです」

それは以前、あの島崎藤村が「出世するまで大切にしまっておきなさい」と言ったものだった。長い間眠っていた作品が、突然用いられる時が来たのである。

『鳩の真似』は『死線を越えて』とタイトルを変え、1920(大正9)年1月号から連載が始まった。すると、著名な作家やジャーナリストたちから「文章がまずい」「思想の寄せ集めにすぎない」といった手厳しい批判が浴びせられた。

しかし、それを上回る反響があったので、その年の10月、単行本として出版されることになった。すると驚くべきことに、初版が出るやたちまち5千部を売り尽くし、12月には8版を重ねた。

「この小説は、青年たちの心に希望の火をともし、暗い社会の中にあって貧しさと戦いつつ苦闘している学生の心を奮い立たせた」。各新聞はこぞって激賞し、賀川の名は一躍有名になった。

こうした時、川崎造船所と三菱造船所の労働者たちが、過酷な労働条件と苦しい生活に耐えかねて労働組合を作り、団体交渉権の確保を会社に求めた。しかし、会社側は応じないばかりか、交渉役の従業員を全て解雇した。

そこでついに川崎造船1万3千人、三菱造船1万2千人の職工は、同時にストライキに入った。1921年7月10日。2万6千人を超える労働者たちは「死ぬまで戦え!」「労働者最後の一戦」と書いたプラカードを立て、町を練り歩いた。彼らのために何度も会社と交渉を行ってきた賀川はこの日、先頭に立って歩いたが、決して暴力を用いないようにと彼らを諭した。

ところが、米騒動でこりた町の人々は、この大規模なデモ行進を見て、また店を壊されたり、放火されたりしてはかなわないと警官の出動を依頼した。

そして、ついに街角で警官隊と労働者は衝突し、流血の惨事となってしまったのである。多数の人々が逮捕され、賀川自身も投獄された。しかし、その間にも『死線を越えて』は売れ続け、ついに日本最高の記録を出した。

間もなく賀川は釈放。改造社の山本実彦(さねひこ)社長は多額の印税を払ってくれたので、賀川は川崎・三菱の労働闘争の後始末のために3万5千円、警官と衝突し投獄されている労働者の家族に毎月100円ずつ送金、鉱山労働組合費用に5千円、そして残った1万5千円をそっくり使って「イエス団友愛救済所」の確立のため、財団法人を組織したのであった。

1921年10月5日に日本キリスト教会の教職員会が京都で開かれると、奈良の旅館、菊水楼に十数名のクリスチャンが集まった。この時、賀川はキリストの贖罪(しょくざい)愛を土台とする新しいキリスト教の運動を起こす必要性を感じて呼び掛けた。

「今こそ私たちは、十字架で罪を贖(あがな)ってくださったキリストの愛を胸に、共に祈り、手を携えて伝道と社会事業に奉仕していこうではありませんか」

「イエスの友会」はこうして生まれた。そして、この団体は後に、災害に苦しむ多くの人に対し、涙ぐましい働きをするのである。

またこの年に、賀川はもう一つ記念すべき事業を起こした。労働者以上に搾取され、貧困にあえぐ農民を救済すべく「農民組合」を設立したことである。

彼は杉山元治郎に連絡をとった。この人は福島県で農村伝道をしていたが、社会運動をやりたいと考え、大阪に出て来た。そして、新川のスラムに賀川を訪ね、親しく語り合ってから、時が来たら一緒に事業を起こそうと約束を交わしたのだった。

2人は十分に計画を練り上げた。1921年8月。大阪北区絹笠町の大江ビルの一室に法学博士、小川滋二郎を中心として社会事業家数名が集まったので、杉山が出席して事業内容を発表。ちょうど村島帰之が新聞記者として出席しており、彼は大阪毎日新聞にこの記事を大きく掲げた。

反響は大きく、1922年4月9日、神戸下山手のYMCAで「農民組合創立大会」が開かれた。この年の末に、長男、純基(すみもと)を授かる。

ところで、かつて賀川と激論を交わしたあの社会主義者、大杉栄は、新川をたびたび訪ね、次第に賀川と親しくなっていった。ある日、彼は長女の魔子(まこ)を連れて遊びに来て、ファーブルの『昆虫記』を借りて帰った。

その時、なぜか賀川は嫌な予感を覚えたので忠告した。「大杉さん、軍部は社会主義者の弾圧を始めたから、どうか気を付けなさいよ」

大杉は笑って、大きな手を差し出した。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:賀川豊彦
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