命の質を高める 安食弘幸(33)

2015年12月27日21時38分 コラムニスト : 安食弘幸 印刷
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「私は山に向かって目を上げる。私の助けは、どこから来るのだろうか」(詩篇121:1)

「われ、山にむかいて、目を挙ぐ」。これは、あの有名な太宰治が亡くなる直前に書いた最後の短編小説『桜桃』の題名の横に添えられていた言葉です。旧約聖書の詩篇121篇(文語訳)の言葉です。

太宰治ほど聖書を勉強した作家は少ないと思います。しかし、彼はこの聖句を抱いて玉川上水に入水しました。太宰は最後の最後まで、人生の目的や意味を考えたのです。そして彼の出した答えは自殺でした。

ソクラテスは「よく生きるのでなければ意味がない」と言いました。しかし、「よく生きるとは何か」について語っていません。人生の目的や意味をただ哲学的に、文学的に考えてもなかなか解決しません。

「よく生きる」とは「命の質を高める」と言い換えてもよいでしょう。どうすればそのような生き方が可能なのでしょうか。

1. 使命に生きる

人生の目的や意味を問うときに、私たちに命と人生を与えてくださった神という存在抜きに考えることは、空しい作業です。

ヴィクトール・フランクルという精神科医は、第2次世界大戦中、アウシュビッツ強制収容所で生き延びた数少ない人物です。彼が収容所から解放された翌年に行った三つの講演を本にしたものが『それでも人生にイエスと言う』です。その中でフランクルは言います。

「どんなに悲惨で惨めになっても、与えられた人生にイエスと言う。自殺したりせずに人生を肯定的に受け入れよう」

さらに彼は言います。「人は何かあっても生き続けなければならない。命が与えられたからには、この命を使う務めがある。だから、自分の使命が何かを考えなくてはならない」

彼自身がどうして極限状態の中を行き抜くことができたかというと、限界域の中で人間は何を考え、どのような心理状態になるかを記録しておくことが、医学に貢献するのではないかと考えたからです。彼は、これが精神科医の自分に与えられた神からの使命だと考えたのです。

2. 内なるものを求める

私たちは毎日忙しく生活しています。仕事をし、家事をし、学生は名門校を目指して勉強し、良い職業に就くため努力をしています。しかし、これらすべては皆、自分の幸福を目指すことにほかなりません。自分のことに終始しているのです。

有名なリンドバーグ大佐の奥さんのアン・リンドバーグも、またパイロットであり、かつ作家であり、社会学者でもあり、6人の子どもの母親でもありました。

しかし、55歳になったとき、ふっと立ち止まって「私のこれまでの人生は外にばかり目を向けてきた、これからは内に目を向けるべきだ」と思ったのです。

そして彼女は、2週間の休暇を取り、一人海に行きます。毎日、海岸を歩きながら瞑想し、夜は文章を書きました。

その時書いた本が、世界の名著とされている『海からの贈りもの』です。その中で彼女は「教会の礼拝の中で、神との対話を通して人は更生し、心の泉に再び水を湧かせる」と言っています。

忙しい日々の中で、1週間に1時間ないし2時間、礼拝堂の中でメディテーション(瞑想)することによって、人は自分を取り戻していくのです。

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安食弘幸

安食弘幸(あんじき・ひろゆき)

1951年、島根県出雲生まれ。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球関西六大学リーグの強打者として活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒。哲学博士。現在、日本キリスト宣教団峰町キリスト教会主任牧師。NHK文化センター「聖書入門講座」「カウンセリング講座」講師、JTJ宣教神学院講師、とちぎテレビ「ゴスペルジェネレーション」の説教者。また、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設で講演活動を行っている。

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