イスラム教は敵ではない、しかし多くのイスラム教徒は敵だ

2015年12月14日15時02分 翻訳者 : 木下優紀 印刷
+仏でヘイト・スピーチ取り締まり強化 160カ所のモスク閉鎖の可能性
市中心部にあるパリ最大のモスク「グランド・モスケ・ド・パリ(パリ大モスク)」(写真:Esther Westerveld)

そう、イスラム教は敵ではない。しかし多くのイスラム教徒は敵だ。これは、米国が直面している致命的なジレンマで、遅れることなく取り組まなければならない課題だ。

サンバーナーディーノの障がい者施設で起きた恐ろしい出来事は、この問題を危機的なレベルにまで押し上げた。この危機を扱うのがさらに遅れると、政治的な正しさという偽の祭壇の上でほふられる無実の命が増えることになるだろう。

イスラム教は「ばらばらになった」ものだ。他の世界的宗教と同様に、イスラム教にも神学的、イデオロギー的に異なるさまざまな教派があり、信仰理解に対する熱意の度合いも異なる。

言い換えれば、一枚岩ではない。この言葉の証左は、最も過激な在り方でもあるイスラム聖戦主義(イスラムの首長制を武力によって世界中に導入することが目的)が、この瞬間に至るまでの間、殺害した非イスラム教徒の4倍の数のイスラム教徒を殺害していることだ。

なぜ彼らはイスラム教徒たちを殺しているのか。それは、そのイスラム教徒たちが、過激なイスラム聖戦主義やその見方がイスラム信仰の合法的な解釈と表現だとする彼らの教えに従わないばかりか、しばしば抵抗するからだ。

この状況は、KKKやほかのアーリア系白人至上主義の団体が、自らをキリスト教信仰の正当な表現と自称し、この狭いカルト的なキリスト教理解が唯一「真実の」キリスト教だと認めない人々を殺してきたことと似ている。

KKKは異様でカルト的な分派で、社会に対してほとんど、あるいはまったく影響を及ぼしていないという反論もあるかもしれない。現在ではそれが真実なことを、神に感謝する。しかし、過去、特に1920年代と30年代には、KKKがリンチのようなテロ活動を行い、南部のみならず米国において政治的、文化的影響を及ぼしていた時期が確かにあった。

全てのイスラム教徒がイスラム過激主義者というわけではないが、多くのイスラム教徒はそうだ。

世論調査では、全世界に約16億人いるイスラム教徒のうち10~20%、少なく見積もっても1億1千万人が、ジハードの遂行に暴力を用いることは、しばしば道徳的に正当化されてよいと考えていることが明らかになった。

2011年には、米国の約300万人のイスラム教徒のうち21%が、「過激主義」に対して「大きな、あるいは一定の支持が」米国のイスラム教徒の中にあると考えていることが分かった。「ピュー・リサーチ」が行ったその調査からは、米国のイスラム教徒の60%が米国内のイスラム過激主義について「とても懸念がある」「いくらか懸念がある」と答えている。興味深いことに、暴力が「しばしば許容される」「時々許容される」と考えているイスラム教徒は8%に過ぎず、86%は暴力を否定している。

サンバーナーディーノとパリでのイスラム過激派のテロ攻撃は、この危機が全世界において切迫していることを裏打ちした。これは文明の危機で、単純にイスラム諸国と欧米諸国の闘争ではない。これはイスラム信仰の魂のための、イスラム教の中での死をかけた闘争だ。

1月1日、エジプトのアブデルファタハ・アル・シシ大統領は、カイロのアズハル大学(アラブ諸国の中で最も重要な、イスラム教の教義と原則についての研究センター)を訪問し、勇気ある、そして歴史的な、形勢を変える講演を行った。シシ大統領はこのスピーチを聖職者、学者、イマーム(イスラム教の指導者)に直接語った。シシ大統領は彼らに対し、イスラム教の中での改革を導くよう呼び掛けた。

「私は、宗教学の学者と聖職者に向けてお話しします。私たちは、現在の状況について長く困難な検討をしなければなりません。・・・私たちが信奉している思想が、この国全体を懸念、危険、殺人、破壊をもたらす温床としかねないということは、到底受け入れがたいことです。私は『宗教』と言わず『思想』と言いました。アイデアと文章の集合体という意味です。何世紀にもわたって私たちが信奉してきたことは、・・・このこと(思想)が全世界の敵意となるというところまで来てしまいました。私はこの話を、ここアル・アズハルで、宗教的指導者と学者の前で行います。私が今日皆さんに話したことについて、アッラーが裁きの日に、あなたのご意向の真理の証人となってくださいますように。あなたが(この神学に)閉じ込められているなら、物事をはっきりと見ることはできません。真に廓清(かくせい)した神学に近づくためには、そこから脱して、外から見なければなりません。・・・もう一度言わせてください。私たちはこの宗教を改革する必要があります。大イマーム(グランド・シェイク)、あなたはアッラーの前に責任を負います。世界はそのままであなたの言葉を待ち望みます。イスラム諸国は引き裂かれ、破壊され、破滅に向かっているからです。私たち自身が、破滅に導いているのです」

エジプト大統領は、語っただけではない。1月6日、歴代のエジプト大統領で初めて、シシ大統領はコプト正教のミサに出席した。そして、エジプトのキリスト教徒に対する思いを語った。シシ大統領の政治に何を思おうとも、こうした行動は力強く勇気あるもので、一世代前のサダト前大統領のように暗殺されかねない行動だ。

またこのことは、5世紀前にマルティン・ルターが主導したような、意味のあるイスラム教内での「改革」の始まりのサインともなり得る。

イスラム教は、16世紀に中世のキリスト教が必要としたような宗教改革を強く必要としている。そしてそれは、ルターの宗教改革がキリスト教徒の手によってなされたように、イスラム教徒の手によってなされなければならない。

今こそ、イスラム教徒が過激派を非難し、神学的にも文化的にも孤立させることを目的とした100万人規模のデモを行うときだ。米国人は、イスラム教徒自らが、彼らの信仰の名において行われている野蛮な行動を弾劾する様子を、視覚的に見る必要がある。

そのような公然の批判に次いで、彼らのただ中で、過激派を特定し、孤立させ、無効化することにおいて、行政や治安当局との目に見える形での協力が必要だ。今こそ、穏健なイスラム教徒は、過激なイスラム聖戦主義とそれに関連することを、言葉においても行動においても拒否するという点で他の善意の米国人と共通認識を持つことによって、米国への忠誠を見せ、宗教的寛容さや人権に関する、欧米諸国が共有する理念への支持を表明するときだ。

さもなければ、米国は危険で物騒な時代に入ることになる。もし穏健なイスラム教徒たちが、共に住む米国人と、過激な聖戦主義に反対するという共通認識を持たなければ、この米国には残忍なテロ事件がさらに増えるだろう。このような攻撃がこれからも続き、罪のない犠牲者が増えるならば、すべての米国人に対し、秩序と治安の名において憲法に規定された価値ある自由を、差し止めたり放棄したりするように仕向ける圧力が高まるだろう。過去の経験と人間の性質を考慮すれば、結果として、イスラム教徒だろうと非イスラム教徒だろうと、すべての米国人の自由は小さくなる。

全ての善意の人は、過激なイスラム聖戦主義を拒否し、打ち破ることにそれぞれの軸を置いている。過激なイスラム聖戦主義が文明に対する致命的な脅威となっている事実を認めないことは、非常識で無意味であり、あらゆるところで人々が愛してきた貴重な自由を、もはや享受することができなくなることを意味する。

リチャード・D・ランド

リチャード・D・ランド(Richard D. Land)

1946年生まれ。米プロテスタント最大教派の南部バプテスト連盟の倫理宗教自由委員会委員長を1988年から2013年まで務める。米連邦政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF)の委員に2001年、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領から任命され、以後約10年にわたって同委員を務めた。2007年には、客員教授を務めている南部バプテスト神学校がリチャード・ランド文化参加センターを設立。この他、全米放送のラジオ番組「Richard Land Live!」のホストとして2002年から2012年まで出演した。現在、米南部福音主義神学校校長、米クリスチャンポスト紙編集長。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。一部、加筆・省略など、変更している部分があります。

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