安倍首相の「敗戦70年談話」を受けて(1) 村岡崇光

2015年8月20日10時37分 執筆者 : 村岡崇光 印刷

安倍晋三首相は8月14日、長く待たれた、敗戦70年に当たっての談話を内閣の合意を得て、内外に向けて発表しました。首相自身は日本語で語り、その英訳も同時に発表されました。

現在の祖国のおかれている状況に鑑みて、また今後の日本のあるべき姿を思いますと、重要な発言であると思いますので、私なりに読んでその真意を理解しようと努めました。その結果、考えたことをまとめてみましたので、僭越(せんえつ)ながらここに皆様にお届けしたく思います。

便宜上、左にアラビア数字を1から30まで振って、原文の区切り通りに分けてあり、私のコメントは全て節の終わりに随所に入れてあります。

平成27年8月14日

内閣総理大臣談話

[閣議決定]

終戦七十年を迎えるにあたり、先の大戦への道のり、戦後の歩み、二十世紀という時代を、私たちは、心静かに振り返り、その歴史の教訓の中から、未来への知恵を学ばなければならないと考えます。

百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました

その真偽のほどはともかく、ここで日露戦争を持ち出すことはいかにもちぐはぐです。大東亜戦争はアジアを欧米列強の植民支配から解放するのが大義名分であった、とにおわせているのでしょうか? 日露戦争以前に日本は台湾を植民地としていたことは忘れているのでしょうか? そしてその後、朝鮮を併合して植民地としました。

世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。

当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。

満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。

そして七十年前。日本は、敗戦しました。

戦後七十年にあたり、国内外に斃れたすべての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫の、哀悼の誠を捧げます。

前後の文脈から、安倍晋三首相は、ここでは日本人の犠牲者だけを指していることに注意したいと思います。

先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱の、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。

戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。

あまりにも多くの場合、死者、餓死者などは日本軍の意図的な殺害の結果であり、日本軍が現地住民の食料を略奪した結果であることが明記される必要があります。流れ弾に当たった犠牲者のこと、現地のゲリラに食料を供出した、あるいは巻き上げられたというようなことではありません。

10 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。

安倍首相は、4月の米国議会でも同じ表現を使いました。殺された人を生き返らせて遺族にお返しすることはできません。しかし、こういう投げやりの表現では無責任ではないでしょうか? そういった犠牲者の心の痛みを少しでも和らげ、あるいはもっと具体的には生活援助、医療援助などを提供することによってその重荷を多少とも軽くすることはできます。

続く

■ 安倍首相の「敗戦70年談話」を受けて:(1)(2)(3)

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<出典> 日本:厚労省、世界:WHOJohn Hopkins CSSE

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