安倍首相の「敗戦70年談話」を受けて(2) 村岡崇光

2015年8月20日10時39分 執筆者 : 村岡崇光 印刷

11 これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが、戦後日本の原点であります。

10では日本が外国人に与えた損害と苦痛が語られています。まさか、現在の日本の平和はそのおかげである、というのではないでしょう。たとえ日本人自身が被った損失、苦痛に限定しても、こういう発言は大東亜戦争を美化するものととられても致し方ありません。このような犠牲は払わなくても、平和は築けたはずです。

12 二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない

現政権が、日本を再び戦争のできる国にしようと目指していることは常識ではないでしょうか? だからこそ、既に長いこと反対運動が全国的に展開されているはずです。

13 事変、侵略(イ)、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない(ロ)。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界(ハ)にしなければならない。

 16にある「歴代内閣」の最初の村山富市首相は「侵略」という言葉をはっきり用い、安倍首相は過去において、先の戦争は侵略戦争ではなかった、と言わんばかりの発言をされたので、ここで「侵略」という言葉が用いられていることは評価します。しかし、外向けの英語版では“aggression”となっており、これは「攻撃」を意味します。正当防衛にも使えます。「侵略」は“invasion”であり、不法に他国の領土に軍隊を差し向けることです。満州事変以後の日本軍の行動はまさしくそれではなかったでしょうか? それを反省しているのではないですか? 下にもまだ例がありますが、首相側近あるいは外務省が情報操作をしているように見えます。

 安倍首相が本気でこういう発言をするのでしたら、自衛隊を解体する方向へ進むべきです。何のために武力を保持する必要があるのですか?

 「民族の自決」は他民族だけでなく、自民族も入っているはずです。でしたら、沖縄の辺野古の基地問題に対しては現地の民意を尊重してしかるべきです。

14 先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国を創り上げ(イ)、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家(ロ)としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

 最近、首相は、「私は支持率を見ながら政治をしているのではない」と発言されたのではなかったでしょうか? 民意をこのように傲岸(ごうがん)に無視するのは民主主義でしょうか? 国会での審議も尽くさず強行採決し、憲法の解釈はその時の内閣の合意で事足れり、というようなものは民主体制とはほど遠いと言えないでしょうか?

 武装した軍隊をもって他国に侵略しなかった、という意味では日本は過去70年間「平和国家」であったことは高く評価されるべきでしょう。しかし、心の、内心の平和を忘れてはなりません。15と22で述べていますように、大東亜戦争で日本が戦火を交えた国にも、アジア太平洋地域の多くの国にも、日本に対して今なお心穏やかでない人たちが何億といます。このままでは、その人たちは枕を高くして寝ることも、安らかに永眠することもできないのです。

15 我が国(イ)は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました(ロ)。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。

 ここに極めて重要な問題があります。英訳では“Japan”となっていますが、いずれの場合も、日本は「国」としては反省も、お詫びの表明もしていない、という事実があります。こういう場合、「国」としての意思表明は国民の代表である「国会」のみができるはずです。敗戦50年に当たって村山内閣はそれを試みたが、失敗し、国会としての意思表明はできず、村山談話に格下げされました。今回も、冒頭に「閣議決定」「内閣総理大臣談話」となっています。

村山内閣の時のいわゆる慰安婦問題の処理も、日本国としてではなく、政府からの多少の出資はあったとしても、基本的には一般市民からの寄付金を母体にしたアジア女性基金が実施しました。

ひとたび国会で決議されたならば、たとえ反対投票をした議員であっても、国会議員の立場で反対の意見を公言することは許されず、大臣であれ、ひらの議員であれ、そういう発言をした者は即刻解職、議員職を剥奪されるのが当然です。

安倍首相自身を含め、現閣僚の4分の3が、太平洋戦争を侵略戦争と認めず、憲法改正を主張する日本会議の会員であるとなると、この談話をどこまでまともに受け止めることができるのか、はなはだ疑問としなければなりません。

 多くの場合、その「反省とお詫び」は真剣な反省、誠実な謝罪として当該国によって受け止められてこなかったのではないですか? 安倍首相自身がお詫びをされたことがありますか? 借り物のお詫びをここで繰り返しても全く無意味です。4月の米国議会の演説でも、米国兵戦死者に対する「哀悼の念」は表現されていても、「バターン死の行進」による犠牲者のような日本の戦犯行為による米軍死者に対する「お詫び」の一言も無く、これでは他人行儀な「御愁傷様」のあいさつに過ぎません。

16 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。

17 ただ、私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々の辛い記憶は、これからも、決して癒えることはないでしょう

10と同じく、これでは責任放棄であり、犠牲者に真心から寄り添う姿ではありません。

18 ですから、私たちは、心に留めなければなりません。

続く

■ 安倍首相の「敗戦70年談話」を受けて:(1)(2)(3)

関連記事

クリスチャントゥデイからのお願い

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。記事の一つ一つは、記者や翻訳者、さらに編集者の手などを経て配信されているものです。また、多くのコラムニストや寄稿者から原稿をいただくことで、毎日欠かすことなくニュースやコラムを発信できています。

この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、読者の皆様にはぜひ、祈りと共に、毎月定期的にサポートする「サポーター」として(1,000円/月〜)、また単発の「サポート」(3,000円〜)によって応援していただきたく、ご協力をお願い申し上げます。支払いはクレジット決済で可能です。申し込みいただいた方には、毎週のニュースやコラムをまとめた申込者限定の週刊メールマガジンを送らせていただきます。サポーターやサポートの詳細、またクレジットカードをお持ちでない方はこちらをご覧ください。


論説の最新記事 論説の記事一覧ページ

新型コロナウイルス特集ページ

人気記事ランキング

おすすめのコンテンツ【PR】

コラム

主要ニュース