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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(3)施しの日

2024年10月2日17時15分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

ガイオは、彼自身の信念から月1回、「施しの日」と呼ばれる食事会を行うことにしていた。これは屋敷の大広間を開放し、そこから庭に長いじゅうたんを敷いて、500人近い生活困窮者を招いて食事をさせるものだった。

そして食事が終わると、すぐ近くにある野外劇場に彼らを連れて行き、自費で雇った音楽師に演奏させたり、芸人に芝居をやらせたり、踊りを披露させたりして楽しませた。招待された貧しい人たちは、この日ばかりは日頃の労苦を忘れて、まるで天国にいるような楽しい思いをした。

それからシケル銀貨1枚をもらって(シケル=銀の重さの単位。1シケルは労働者が一日働いて得られる賃金に相当する)、帰っていくのだった。彼らは口々に「ガイオ様とお屋敷の情け深い方々に神様の祝福がありますように」と言うのだった。

17歳になったニコラスは、養父に代わって「施しの日」のスケジュールを決めたり、食事の段取りをして、厨房の賄い人や雑役人たちに指示を出したりすることを任されていた。執事のアルキポも、家政婦スントケも、主人と同じようにこの日を大切に考えており、月一度のこの楽しみ会を、貧しい人たちのためにできる限り有意義なものにしようと力を尽くしていた。

準備ができると、ニコラスは自ら門の前に立ち、一人一人を迎え入れた。「よくいらっしゃいました。今日は思い切り楽しんでください」。そう言ってその手を握りしめ、中に案内するのだった。

足の悪い者には手を貸して、一番良い席に座らせてあげた。手の不自由な人には自分の手を添えて食物を口に運んであげたり、菓子や果物を小さく切ってあげたりした。

こんな時、彼らと一緒に子どもたちも入ってきて、菓子をねだったり、大声で騒ぎ始めた。すると客たちは彼らを叱りつけた。「こら! おまえたちはお招きにあずかったんじゃないから、外に出て遊んでいろ!」

この時、ニコラスは子どもたちがかわいそうでたまらなくなったので、こう言った。「子どもたちも同じように楽しませてあげましょうよ。さあ、こっちへいらっしゃい」。そして、彼らを別の部屋に連れて行くと、スントケに頼んで小麦菓子をたくさん焼いてもらった。

それを彼らに食べさせ、ヨーグルト入りの飲み物を与えてから、そこへ来たアルキポの息子ルキオに協力してもらい、子どもたちが喜びそうなことを考え出した。ルキオは既にオルンパという同郷の娘と結婚し、父親のアルキポと共に使用人が住む別棟の住居で生活していた。ニコラスは彼が大好きで、二人は主従というよりは仲の良い友達のようであった。

「ルキオ、今日は頼みがあるんだ」。ニコラスは彼に芝居で使うひげづらの男の面を渡して言った。「二人で寸劇をやろうじゃないか。いいかい、君は強盗の親分、私は油売り。話はこうだ――油売りが眠っている間に、強盗が忍び込む。そして金を奪って逃げようとした拍子に油の入ったつぼをひっくり返してしまう。そして目を覚ました油売りと立ち回りの末、強盗は降参し、もう二度と盗みは致しませんと言うので、油売りは赦(ゆる)してやり、金を与えて去らせる。――まあ、こういう話だ」

そして、ルキオを説き伏せると面をかぶらせ、子どもたちの前で寸劇を始めた。子どもたちはキャッ!キャッ!と笑って大喜びだった。それを見ているうちにニコラスは、何とも言えないほどの喜びが心の中に湧き上がるのを覚えたのだった。

そのうち、大人たちは野外劇場から引き上げてきて、それぞれ子どもたちを連れて帰っていった。

「ニコラス様。ありがとうございます」。一日中網の繕いをしている貧しい漁師は、子どもの手を引きながら、ペコペコと頭を下げた。「私らは日中働き通しなので、子どもの相手をしてやる暇がありません。こんなにうれしそうな子どもの顔を見るのは初めてです」

ニコラスはいつものように、この日招待した全ての人にシケル銀貨を一枚握らせて送り出した。

「ニコラス様」。その時、すすけた顔をした5歳くらいの男の子が言った。「僕のお母さんがね、いつもガイオ様と奥様とニコラス様の上に神様の祝福がありますようにってお祈りしているんだよ」

ニコラスは、思わずその子を抱きしめた。「ありがとう。君、何ていう名前?」「アデオダートスだよ」。子どもはそう答えると、もらった銀貨を握りしめて駆けていった。

*

<あとがき>

ニコラスの養父ガイオは、家宝としている『ヤコブの手紙』の教えをまさに全身全霊をもって実行しているかのようでした。彼は月1回「施しの日」と呼ばれる食事会を行い、生活困窮者を招いて食事を振る舞い、その後、野外劇場に招待して音楽や演劇を披露したのでした。

貧困のどん底にいる人たちは、この日をどんなに楽しみにしていたでしょうか。彼らは金一封をもらって家に帰るとき、口々に「ガイオ様とお屋敷の情け深い方々に神様の祝福がありますように」と言ったと伝えられています。

既に17歳の若者になっていたニコラスは、養父から「施しの日」のプログラムや食事の世話を任せられるようになりました。この時彼は、大人から相手にされない子どもたちを集め、お面をかぶって寸劇をして彼らを喜ばせたのですが、この特技は後に彼が伝道者となったとき、非常に役に立ったのです。

この後、彼はアデオダートスという少年と出会うのですが、これはその後の彼の運命を変えるものでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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