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ナッシュビルからの愛に触れられて

ナッシュビルからの愛に触れられて(41)from gospel to Gospel 青木保憲

2020年6月12日10時42分 コラムニスト : 青木保憲
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関連タグ:青木保憲
ナッシュビルからの愛に触れられて(41)from gospel to Gospel 青木保憲+
ウェイン&エリザベス・グダイン夫妻

義弟との「最も小さなナッシュビルツアー」を終えた筆者は、京都の教会を退職し、大阪にある別の教会へ赴任することとなった。2014年のことである。そして以前から温めていた企画であるJAG(Japan Association for Gospels)を立ち上げた。2011年3月以来の交わりを続けてきたナッシュビルのクライストチャーチメンバーを中心に、前回取り上げたチャリティ・ロックハートさんなど、多くの米国ミュージシャンたちと日本人との交流をコーディネートすることを主な働きとするボランティア団体である。

早速その働きの機会がやってきた。それは10月(そして12月)のことである。実は、その年の8月にもナッシュビルツアーを行い(つまりこの年は渡米を2回したことに)、以前から連絡を取り合っていたゴスペルミュージシャンたちの来日を確定させていたのである。それは「ウェイン・グダイン夫妻」と、「エリシア・ブラウン」である。それぞれ10月、12月に来日することが決まっていた。そのため、本ツアーでは、その打ち合わせという意味合いもあった。ツアーそのものは、大学生を中心にして、子どもたちも参加するちょっと今までとは趣が異なる旅となったが、これまた実り多いひとときであった。アーミッシュ村や Lee 大学などに訪問することもできた。

さて、JAGに関することをしばらくレポートしたいので、10月のグダイン夫妻の来日から始めよう。

ナッシュビルからの愛に触れられて(41)from gospel to Gospel 青木保憲
同志社チャペルでの様子

グダイン夫妻は、厳密にいうとミシシッピー州出身のゴスペルシンガーである。古くはペンテコステ教会に属し、その神学校で音楽を教えていたという。その後、活躍の場が拡大し、今ではブルックリン・タバナクルのジム・シンバラ牧師とも交流を深めており、タバナクルクワイアには楽曲も提供しているとのことであった。

何より、京都の友人牧師が米国で学んでいたとき、グダイン夫妻が指導するクワイアで歌っていたというのだから、驚きであった!

私はグダイン夫妻に「この日本ツアーは宣教の働きであって、決して金がもうかるわけではない。それでもいいならぜひおいでいただき、主の福音を音楽でお伝えすることに徹してもらいたい」とお願いしていた。ご夫妻はそれを快く受け入れてくださり、基本的に渡航費と滞在費を自分で持つという提案をのんでくれていた。

2014年10月、秋深まる頃にグダイン夫妻はやってきた。数日前に成田空港から来日しており、かつての神学校時代の教え子たちの教会を回ってきたということだった。やはりそれなりの年齢になり、教え子たちが独り立ちして世界各国で牧師をしているため、世界旅行も「合法的に」行えるそうだ。

JR大阪駅に迎えに行った私たちは、60代のご夫妻のアツアツぶりにちょっと面食らってしまった。それくらい互いを愛し、その愛情表現を包み隠さず人前でも行えるポジティブな方であった。

今回のツアーは、姫路の友人教会へお連れし、その後私が新しく赴任した大阪の教会へ、さらに初の試みではあったが、同志社大学の神学部での授業にゲスト出演させてもらうことになっていた。クライストチャーチへのアテンド以来、2年ぶりに関西各地を回るツアーのコーディネートをすることになっていたのである。

彼らの強みは、何といってもゴスペルの指導である。すでにゴスペルを習っている方はもちろんのこと、初めてコンサートにやってきた方々をも巻き込んで、すぐに彼らを立たせ、手を叩かせ、そしてスイングしながら歌わせる、というこの一連の「指導」にわずか3分程度しかかけない。それで完全に聴衆の心を、そして体を思いのままに動かせるのだから、「本物のゴスペル指導者」である。これがその時の様子である。

同志社の学生たちは、いつもなら講義が行われる礼拝堂に入ってきて、いきなり米国人が陽気に話し掛けて歌い始めたのだから、びっくりしたことだろう。さらにその数十分後には自分たちも立ち上がり、そして一緒に歌うことになったのだから、反応はさまざまであった。

一通り、楽しく歌ったのち、奥さんのエリザベスさんがキーボードを凛とした響きで奏で始めた。これは「Lead me Lord(主よ、私を導いてください)」という楽曲で、彼らのオリジナルにして最大のヒットソングである。これを歌い出したとき、驚くべきことが起きた。それは集っていた学生たちの幾人かが、涙を流し出したことである。やがてご主人のウェインさんが「皆で主に向かって歌いましょう」と招き、再び立ち上がった学生たちは、そのまま歌い出すことになった。

このクラスの担当者にして、今回時間を与えてくださったS教授も「これはすごいね。こんなの初めてだね」と何度も繰り返して、驚きの声を上げていた。

この経験から、私は一つのことを学んだ。それは、歌を通して福音は伝えられるということである。これがやがてJAGの標語「from gospel to Gospel」となっていく。小文字の gospel は、音楽ジャンルとしてのゴスペルのこと。大文字の Gospel は、聖書が語る「福音」のこと。音楽としてのゴスペルを通して、聖書が語る「福音」が人々の中に浸透していく——。

このやり方を洗練することが、一つの指針となっていったのである。

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◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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