三浦文学の魅力と底力(4)その魅力の理由 込堂一博

2018年11月16日14時48分 コラムニスト : 込堂一博 印刷
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+三浦文学の魅力と底力(4)その魅力の理由 込堂一博
三浦綾子さん
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三浦文学の魅力はどこにあるのか、の問いに対して、そのテーマが明確であることが上げられます。「人はいかに生きるべきか」「生きるとはどういうことか」が、三浦文学の根底に流れています。インターネットを検索してみますと、「三浦綾子入門 三浦作品のどこがいいの?」というページに、三浦文学の「効能」について興味深いポイントが上げられていましたので、その要約をご紹介します。

三浦文学の効能

心が洗われる
三浦文学はとても感動的な作品が多く、何度読み返してもまた違った感銘を受けることがある。多忙な日々を送る現代人にとって、一種の清涼剤といえる。

優しい気持ちになる
三浦文学はとても心温まる話にあふれている。これはエッセーなどを読むとよく分かる。自分が上の立場に立った優しさではなく、相手と同じ視点に立つ優しさというものを強く感じる。

前向きに物事を考えられるようになる
三浦文学では、とてもつらい境遇に置かれている人々が多数紹介されている。しかし、その人たちは、決して苦難につぶれず、とても前向き。そういう人たちを見ると、自分の置かれている環境など大したことはないと思える。

謙虚な気持ちになる
上記の「前向きに物事を考えられるようになる」は、物事がうまくいっていないときに思える気持ちだが、「謙虚な気持ちになる」は、特に自分では調子が良いと思っているときに一番効能を発揮する。

泣ける・感動できる
上記4点では、「人生の教科書的存在」のような堅いことを挙げたが、三浦文学の効能としてこの「泣ける・感動できる」は欠かせない一つ。素直に泣ける、感動できるのが三浦文学。

氷点』入選直後、いち早く三浦綾子さんに直接電話をし、キリスト教月刊誌「信徒の友」に連載小説を書いてほしいと打診したのは、当時「信徒の友」の編集長であった佐古純一郎氏でした。文芸評論家であり牧師でもあった佐古氏は、編著『心を詩(うた)う作家 三浦綾子の世界』(主婦の友社)で、三浦文学の魅力を次のように分析しています。

北海道に生れ、北海道に育ち、おそらく北海道で死んでいくであろう三浦綾子さんの存在は、誇張でなく現代の奇跡の一つだ、と私は考える。まったくの病身で、いつも死線を漂うている存在である三浦さんにとって、夫の光世氏のあたたかい愛が、そのバイタリティの源泉になっていることを私は疑わないが、しかも、三浦さんと光世氏の間に流れているものは、単なる夫と妻の愛を超えて、何かしら聖なるものを感じさせるのである。三浦夫妻の姿を見るたびに私はあのミレーの「晩鐘」を想い浮かべるのである。信仰という力強い絆によってしっかりと結び合わされた男と女とのそれは生きた証人というべき存在なのである。

三浦さん夫妻の姿にミレーの「晩鐘」を想うと書いた私は、あの「晩鐘」の農夫とその妻が、晩鐘をききつつ、祈っている姿がまるで三浦さん夫婦の姿そっくりであることをいつも思うのである。もし『三浦綾子の世界』といういいかたがゆるされるなら、その世界をつくり出している根源はまことに「祈り」以外のなにものでもないといってよいであろう。三浦さんの文学は祈りの文学である。祈りによって創り出される文学である。

佐古氏は、三浦文学を「愛と祈りの文学」と総括して、それが三浦文学のたぐいまれな魅力であると洞察しています。確かに三浦夫妻の夫婦愛は、お互いが祈り合い、尊敬し合うところから生まれ出る夫婦愛です。宗教改革者マルティン・ルーターは、「家庭は国家の土台である」「すべての幸福と不幸の源は、家庭である」という名言を残していますが、三浦夫妻は、家庭や夫婦関係を非常に大切にされたことでよく知られています。そして、作品執筆前には、必ず祈ることを習慣とされていました。特に夫の光世さんは、ことあるごとに主への感謝ととりなし、願いの祈りを欠かさなかったキリスト者でした。このように夫婦仲が良く、執筆前に必ず祈る習慣を持つ作家夫婦は、世界中探しても稀有な存在ではないでしょうか。

三浦文学の魅力と底力(4)その魅力の理由 込堂一博
夫婦仲良く口述筆記で執筆中の三浦夫妻

さらに佐古氏は、三浦文学の魅力は、綾子さんの深い人間理解にあると、次のように指摘されています。

三浦さんの人間理解には2つの側面があるように思われる。それは、人間というものは、まことにどうしようもない、ギョッとするような、恐ろしい存在であるという認識と、どんなに人から悪くいわれるような人にも、必ずよいところがあり、一切の差別を越えて、人間というものは尊い存在なのだ、という確信である。表面的にだけ受けとると、この2つは矛盾するように思われるが、三浦さんの人間に対するやさしい凝視のなかでは、それはけっして矛盾ではないのであって、そのいずれもが人間の現実であるところに、人間という存在の有難さがあるのだ、とそんなふうに三浦さんは訴えているように思われる。・・・現実の人間の姿が、どのように汚辱にまみれていようとも、人は自分が人間として生れたということを大事に心に受けとめて、真実に人間になるためにこそ努力しなければならない、とそう三浦綾子さんは覚悟を決めている人なのである。なにがそういう覚悟を三浦さんの心に起させたのか、私はそれは「愛の力」であるといいたい。

三浦文学の根底に流れている「人間への愛」。読者はその愛に感動し、癒やされ、励まされ、生きていく勇気を与えられ続けています。(続く)

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込堂一博

込堂一博(こみどう・かずひろ)

北海道室蘭市生まれ。聖書神学舎卒業。現在、屯田キリスト教会協力牧師、三浦綾子読書会相談役。著書に『人生の先にある確かな希望(天のふるさと)』(イーグレープ)、『三浦綾子100の遺言』(フォレストブックス)、『終わりの時代の真の希望とは~キリストの再臨に備えて生きる!』(個人出版)他。

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