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「決してシリアを忘れていない」立教大の学生が企画「シリア・モナムール」上映会・講演会(1)

2017年1月21日10時26分
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関連タグ:シリア立教大学
「決してシリアを忘れていない」立教大の学生らが企画「シリア・モナムール」上映会・講演会(1)+
スクリーンに映し出された内戦前後のシリアの様子。内戦後(右)は、建物などが破壊され、美しい街の姿はない=12月23日、立教大学で

暮れも押し迫った2016年末、シリア国内は、5年以上にも及ぶ内戦の重大な局面を迎えていた。シリア北部の街アレッポが、アサド大統領率いるロシア軍をはじめとする政府軍に制圧されたのだ。国連が「今世紀最大の人道危機」と警鐘を鳴らす状態に陥っている惨状に、国際社会は何の手だても打てないまま、間もなく6年が過ぎようとしている。

このような状況に胸を痛め、行動を起こした大学生がいた。立教大学異文化コミュニケーション学部の山田一竹さんだ。昨年末、同大学構内において、シリア人映画作家オサーマ・モハンメド氏が描いた映画「シリア・モナムール」の上映と、フォトグラファーの八尋伸氏の写真展を同時開催。映画上映後には、アラブ文学者の山本薫氏による映画の解説、八尋氏による講演が行われた。

イベント後半には、日本政府から難民認定されたシリア人男性の講演、現地シリアで民間防衛隊「ホワイト・ヘルメット」として活動する男性とスカイプを通して会場とつなぎ、現状を聞くといった試みも行われた。

シリアからフランスに亡命したオサーマ監督は、「市民ジャーナリスト」たちの手によってユーチューブやSNSにアップされる動画を通して、故郷シリアの惨状を知ることとなる。安住の地に身を置きながらも、故郷からのメッセージに苦悩し続けていた監督は、SNS上でクルド人女性シマヴと出会う。

オサーマ監督とシマヴのメールや映像を通したやりとりを軸に、千人以上にも及ぶ「市民ジャーナリスト」の映像をつなぎ合わせた作品となっている。殺す側と殺される側、双方からの映像の記録は、時に目を覆いたくなるほどの惨状をまざまざと見せつけ、多くを語らない映像の一片一片をパズルのように組み合わせると、見た者の心の奥底深くに何かを訴える。衝撃的ながらも、戦時下で真っ先に失われる「愛」をなんとかつなぎ止めようとする人間の存在と美しさを表現している重要な作品だ。

本作は、カンヌ国際映画祭2014特別招待作品、ロンドン映画祭2014ベストドキュメンタリー賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭2015優秀賞など、数多くの栄誉ある賞を受賞している。山本氏によると、同作は、日本映画の影響を多大に受けているという。「シリア・モナムール」といったタイトルも、原爆の被害を受けた後の広島を描いたフランス映画「ヒロシマ・モナムール」から付けられている。また、「映画の中にも、随所に日本の影響を受けたと思われる表現があり、興味深い」と山本氏は話す。

日本政府から難民として認定され、現在、日本の大学に通うジャマールさんの講演が、映画上映後に行われた。ダマスカス出身のジャマールさんは、内戦前の美しいシリアの街と現在の写真を見せ、「戦争がどれだけのものを奪ったか、皆さんにもお分かりでしょう」と話した。「こうした戦争を避けるために私たちができることは、お互いがお互いを思いやり、助け合うこと」と話した。

「決してシリアを忘れていない」立教大の学生らが企画「シリア・モナムール」上映会・講演会(1)
講演するジャマールさん。日本政府から難民認定され、日本の大学に復学した。

ジャマールさんは、ダマスカス大学で英文学を専攻する学生だった。内戦の悪化とともに、父親は国外に職を見つけ、生活費を稼ぐようになり、彼は父親代わりとなって妹と母親を守る役目を担うことになった。「気楽な大学生が、大きな父親の役目を担うことは、決してたやすいことではなかった」と語る。

ついに彼の住んでいた地域も戦禍にのまれ、自宅を失うことになった。被災後、1週間はシリア国内の友人宅に妹と母親と一緒に身を寄せた。その後、エジプトに住む友人を頼って、国外へ脱出。エジプトには7カ月滞在した。「この7カ月は、大変過酷なものだった。大学に戻って勉強することもできず、働くこともできず、将来の見通しが立たないまま、ただ時間が過ぎていった。いっそのこと、爆撃を受けている祖国シリアに戻った方がマシなのでは、とすら思った」と語った。

その後、日本人と結婚し、日本で暮らしている叔父を頼り、日本へ入国。すぐに日本政府に対して難民申請をするが、最初の6カ月間は、働くことも学校へ行くことも銀行の口座を作ることすら許されない状況だった。「私の人生で、最も過酷な6カ月だったかもしれない」と話した。

それでも家族を支えなければいけない立場にあったジャマールさんは、違法的に日本の建設現場で働くことになった。気楽な学生だったジャマールさんが、いきなり建設現場に身を置くのは、危険も伴ったが、彼に選択肢はなかった。3カ月の間、けがをしながら仕事を続けるが、とうとう1週間の入院を伴う大けがをしてしまった。傷口からは破傷風を発症し、一時は足を切断しなければならないほどの危機にひんしたが、幸い、切断せずに済んだという。

申請から6カ月後、合法的に労働することが許可され、都内のカフェで1日14時間、毎日休みなく働いた。彼の原動力となったのは、やはり家族の存在だった。シリアに帰国した父に代わり、父の生活と自分たちの生活を支えなければならなかった。申請から1年半がたち、やっと難民として認定され、父を日本に呼び寄せることができたという。

父が日本に来てからは、地域のサッカーチームに所属してスポーツを楽しみ、英会話の教師としての仕事を得ることもできた。「難民として日本に住むことができて、私の人生は大きく変わった。日本政府にはとても感謝している」と話した。

そして、この講演の2日前、日本の大学への入学許可通知を手にしたという。

また、ジャマールさんが関わる支援団体として「White Heart for Syria」を紹介した。各方面から集められた支援金によって、シリア国内の本当に支援が必要な家庭に支援を届けるというものだ。

「シリアの現状は、本当に混迷を極めていて、なかなか説明するのは難しい。しかし、世界のどこで、これからの将来、何が起こるか分からない。私たちは変わる必要がある。ののしり合うのはやめて、お互いを愛し合いましょう。私たちにできることは、『互いに愛し合うこと』なのだと思います」と話した。(続きはこちら>>)

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関連タグ:シリア立教大学
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