戦後70年の広島から(1):国家とキリスト教・被爆証言の継承・平和の行進と祈り 70回目の8月6日前に広島にキリスト者集う

2015年8月6日11時09分 記者 : 土門稔 印刷
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カトリック幟町教会・世界平和記念聖堂(広島市中区)=5日

70年前に広島に原爆が投下された8月6日の前日である5日、広島市内ではカトリック幟町教会・世界平和記念聖堂(中区)などで、「広島司教区2015平和行事プログラム」として、さまざまな行事が行われ、カトリック信徒を中心に、多くのキリスト者が集まった。

午後1時からは、基調講演として、韓国・済州教区の姜禹一(カン・ウィル)司教が、「戦争は人間の愚かなシワザ」と題して講演した。

今年70歳になるという姜司教は、独立後、韓国の済州島では政府による左翼の弾圧(4・3事件)が行われ、その中で全人口の10%に当たる民間人3万人が虐殺されながら、政府の方針によって、50年以上も沈黙を強いられたという歴史に触れた。

また韓国のベトナム戦争への派兵や、現在の中東紛争などにも触れ、国家は個々人の人権を踏みにじるとし、キリスト者は人間の共同体である国家を超えた、究極の価値に向かう展望を持つことを追求するべきだと述べた。

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韓国・済州教区の姜禹一(カン・ウィル)司教

古代から現代まで、戦争は常に土地の争いをめぐって始まってきたが、旧約聖書のレビ記では、土地はあくまでも神が暫定的に人間に管理を任せただけであり、人の手に渡った土地もヨベルの年には元の持ち主に返すべきだと書かれているように、人間が永久に自分のものとする資格は無く、所有者は神ご自身だとした。

また、創世記26章2〜3節「わたしが命じる土地に滞在しなさい。あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあなたを祝福し、これらの土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する」と、マタイによる福音書8章20節にあるイエスの言葉「狐(きつね)には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない」を引用。イエス自身も、弟子たちも、根源的に地に属する者ではないと言い、キリスト者は土地への執着と所有欲を離れ、寄留者として、新しい天と地を追求して生きることが求められていると語った。

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原爆が投下された広島の当時の様子を話す原政信さん

午後3時からは分科会が行われ、原爆と沖縄、福島について学ぶプログラムが行われた。行われた分科会は、①広島被爆証言、②被爆したシスターによる証言、③韓国人被爆者による証言、④長崎被爆証言、⑤沖縄・高江のいまを知る、⑥5年目の南相馬、⑦子どもプログラム・紙芝居「夏の花」(原民喜原作)、⑧ユースプログラム「私たち若者は、どのように平和を実現していくか?」の8つで、子どもから高齢者まで多くの人が参加した。

広島被爆証言の分科会では、梶山聡子さんと原政信さん(共に幟町教会員)が、70年前の8月6日、原爆が投下された広島の様子を証言した。

陸軍の施設で働いていて被爆した梶山さんは、褐色に膨れ上がった死体で足の踏み場もなかったことや、港で何万もの死体を見たことを語り、「振りかえると、大東亜共栄圏という御旗の下に侵略していった後の悲惨な末路だったと思います」「年がたつにつれて、広島を壊滅した惨状が実感されず、薄れてしまうが、広島から核廃絶、人の平和を実現することが私の願いです」と述べた。

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原爆ドーム

当時中学2年生で学徒動員のため工場で働いていて被爆した原さんは、焼き場がなく、家族でまきを集めて死体を焼いたことや、夕方に壊滅した街を見たとき、「広島が火柱のようだった」とその日の様子を語った。また、「妹は33歳、兄も姉も60歳前後で亡くなった。私はいろんな病気を持ちながら、何とか生きてきた」と被爆によりさまざまな病に悩まされたことを話し、「今の私の話は、『ヒロシマの証言』として、平和記念資料館の地下にDVDになっています。たくさんの人に聞いてほしい。そして、核戦争がないようにやっていきたい」と話した。

午後5時半からは、原爆ドームと隣接した平和記念公園の原爆供養塔前で、日本聖公会との合同プログラム「祈りの集い」が行われ、カトリック大阪大司教区の前田万葉大司教と、日本聖公会の植松誠首座主教によって祈りがささげられた。

前田大司教は、「和をつなぐ 原爆ドーム 夏の空」と五七五であいさつし、「今年は戦後70年で世界中からたくさんの若者が広島に集まっています。今この国では、安保法案で、戦争をする国になるのではないかといわれていますが、若い人が『そうしてはならない』と祈りながら行動しています。共にお祈りしましょう」と呼び掛けた。

戦後70年の広島から(1):国家とキリスト教・被爆証言の継承・平和の行進と祈り 70回目の8月6日前に広島にキリスト者集う
カトリック教会と日本聖公会の合同で行われた「平和の集い」で話す、カトリック大阪大司教区の前田万葉大司教と日本聖公会の植松誠首座主教

植松首座主教は、「カトリックと共に平和行進ができることを感謝します。今日、広島の街を歩いてみて、たった一発の原子爆弾で大きな破壊が起きることを実感しました。しかし、海外に行くたびに宗教者ですら、原爆投下は戦争を終わらせるために正統な行為だったと言う方が多いのです。ですから、日本人が広島と長崎の惨禍を伝えることが大事です」と語った。

また、「原爆で家族全てを失った高齢の女性が、『私はこの70年間、自分は幸せになってはいけないと思って生きていた』と語っていました。そのような悲劇をなくすために、私たち宗教者も語り掛けていかないとならない。キリストの平和のため、私たちも代価を払うことを覚悟して共に行動し、祈りましょう」と呼び掛けた。

そして、参加者全員で賛美歌「キリストの平和」を歌う中、「国々の指導者を正しく導き、争いではなく平和を、分裂ではなく一致を求める心をお与えください」と、とりなしの祈りがささげられた。

戦後70年の広島から(1):国家とキリスト教・被爆証言の継承・平和の行進と祈り 70回目の8月6日前に広島にキリスト者集う
夕方に行われた平和行進。原爆が投下された平和記念公園の原爆供養塔前からカトリック幟町教会・世界平和記念聖堂までの約30分の道のりを行進した。

その後、平和公園内にある原爆供養塔前から世界平和記念聖堂まで「平和行進」が行われ、数百人が平和を願い、「アーメン ハレルヤ」「ウォーク イン ザ ライト」を歌いながら行進した。

戦後70年の広島から(1):国家とキリスト教・被爆証言の継承・平和の行進と祈り 70回目の8月6日前に広島にキリスト者集う
平和行進には多くの若者が参加した。

行進の半分以上は、子どもや若者たちが、ギターを持つ女の子の弾く旋律に合わせて歌った。

世界のみんな きょうだいさ 話すことばが ちがっても
主にむかう心は みんな同じ こどもだから
(賛美歌「アーメン ハレルヤ」)

足を止めて見つめるサラリーマン、不思議そうに見る女子高生、拍手をする年配の女性、そして「うるせーぞ」と罵声を浴びせる街宣右翼の男性。さまざまな反応の中、70年前、原爆が投下された平和公園の供養塔から記念聖堂までの約30分の道のりに、キリストの平和を求める行進の歌声が響き渡った。(続く

■ 戦後70年の広島から:(1)(2)(3)

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