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すみれ時計

すみれ時計(6)とげのむち 星野ひかり

2022年5月26日14時40分 コラムニスト : 星野ひかり
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すみれ時計(1)結婚前夜 星野ひかり+

「なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである」(使徒26:14)

夫が仕事に出ている早朝から、帰ってくるまで、私は多くの時間をベッドに横たわって過ごしています。体が重くて力が行き渡らないのです。時折、だるい体を引きずって、冷蔵庫のお茶を飲み、お腹がすけばインスタントの食事をお腹に入れます。その合間に、自動掃除機のスイッチを入れれば、優秀なこの子が部屋中を勝手にきれいにしてくれます。

私のこの体の重みはなんなのか、とよく考えました。運動機能に障害が出るといわれる、薬の副作用もあるでしょう。しかし、何よりも今まで歩んだ暗い道のりが、澱(おり)のようにまとわりついて、私を動けなくさせているのではないでしょうか。

ベッドにあおむけになって、天井を見上げていると、あの日のみことばが迫ってきます。「なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである」。すると、みるみると、すみれ色をしたすみれ時計が現れて、私をあの赤く燃えた日にいざないます。私は、すみれ時計の針がゆっくりとさかのぼり、あの赤い日までめぐりゆくのを見つめました。

*

私はある寒い夜に、ホームセンターに自転車を走らせて、七輪と練炭を買い求めに行っていました。ほとんど寝たきりの私であったというのに、不思議とふくらはぎに力がみなぎり、立ってペダルを漕いでいました。練炭は一つがとても大きいのに、1ダースからしか売っておりませんでした。それは重たく、運ぶことにも難儀して、4つを除いてホームセンターの駐車場に置き捨てました。七輪と4つの練炭。それだけで荷台もかごもいっぱいでした。ずっしりと自転車は重くなりましたが、それでもペダルを漕ぐ力はどこからか湧き上がってくるのです。「死のう」「いよいよ終わりだ」

先ほどの食事の席でのことでした。私は父親と、ちょっとしたことで口論になったのです。すると、父親は小さな声で吐き捨てるように「この役立たずが」と言ったのです。私の心はめりめりと音を立てて張り裂けました。そして部屋に帰りおいおいと泣き、「その通りだ」と思いました。

いつまでも、自分をごまかすようにこんな暮らしを続けてきたけれど、ごまかしようのないほどに、私の人生は行き詰まっておりました。もうどこにも出口などない。そんな絶望が目の前に突き付けられたようでした。「家を出よう。一人で生きていってみせる」。大きなリュックに洋服や下着、薬や財布をパンパンに詰め込みました。ベッドの上には、先月に届いた聖書と、胸には十字架のネックレスがありました。それを最後に大切にリュックに入れると「もう二度とここには帰らない」そう唇をかんで家を出ました。

自転車を漕いで駅に向かいました。どこに行くか分からないので、とりあえず一番安い切符を買ってホームに立ち、空を見上げました。漆黒の空はまるで黒い画用紙のようでした。その画用紙が、びりびりと引き裂かれて私の顔面に落ちてきます。私はへなへなと腰を抜かして震えました。「どこにもいけない」。どこに行けるというのだろう。ここは世界の袋小路だ。

そして、その足で私はホームセンターに向かったのです。

家族が寝静まったころ、心は無のようになって、黙々と作業にかかりました。バスタブにお湯をため、洗い場に七輪と練炭などを運び入れます。七輪の中に練炭を入れると、火のついた新聞紙を入れて、練炭が赤く燃えだすまであおりました。裸になって浴室に入ると、養生テープでお風呂場の窓やドアをふさぎました。用意していた大量の睡眠薬や安定剤を水道水で胃の中に流し込むと、いよいよバスタブに身を沈め、眠くなるのを待つだけです。

お風呂は適温で、とても心地よく、明かりを消した浴室で少しずつもうろうとしながら、練炭が赤く燃えているのを見つめました。あとは深い眠りにいざなわれ ‘命が終わる’ のを待つだけです。それはあっけないほどに簡単なことでありました。心の中には、悔しい思いや悲しみ、不安が混じり合っていましたが、それよりも、「ずっとこの日を待っていた」という安心感のほうが大きかったことを覚えています。

もうろうとし始めた意識の中で、最近読んだ中で最も理解のできなかった聖書の言葉を思い巡らせておりました。そのみことばが、なぜかとても気になったのです。それは、サウロという若者が教会とクリスチャンたちを迫害し、意気揚々と馬を蹴っていたときに、天から響いたというイエス様の言葉でした。

「なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである」。とげのあるむち・・・いったい何のことだろう。もうろうとした頭で、考えておりました。その時、暗い浴室の天井から、真白い強い光が差し、言葉が聞こえてきたのです。

「とげのあるむちとはわたしである」

私は驚いてバスタブのお湯を飲んでしまいました。それでも言葉は響きました。「自分を傷つけようとすることは、自分を愛さないものは、また、人を愛さないものは、私を蹴るようなものである。とげのあるむちとは私であり、あなたはそれを蹴って、傷を負うばかりであろう」

私は心臓をつかまれたように動悸がし、溺れかけて、ほうほうの体でバスタブにしがみつきました。そしてバスタブからお湯をかけて、練炭の火を消しました。裸のまま、ふらふらと自室に戻り、ベッドに倒れて深い眠りに落ちました。

翌朝、親は大騒ぎをしたことでしょう。自殺未遂の痕跡がお風呂場に残っていたのですから。私はそんなことには気付かずに、何十時間も眠りほうけておりましたが、目覚めると何事もなかったように、お風呂場の七輪も消えており、親はよそよそしいほどに優しく、夕飯は豪勢でした。滑稽なほどに優しく振舞う父を見つめて、死ななくてよかった、と思いました。私の亡骸が浴室に横たわっていたら、父は一生泣き悲しみ、自分を責め続けたことでしょう。ただでさえ飲み過ぎなお酒の量も、いっそう増えるかもしれません。そうなることを半ば望んでいたはずでした。しかし、今はそんなことを考えていたことを恐ろしく思いました。

浴室に響いた声は、自分の思考が作り出したものなのでしょう。でもそこには、イエス様の力の働きが、必ずあったはずなのです。私はそう信じました。

とげのあるむち・・・それはイエス様であり、イエス様の教えであることを、イエス様が私に教えてくださったのです。聖書はよく分からないところばかりですが、イエス様が「愛」であり、そのイエス様(愛)こそが道であり、真理であり、命である(ヨハネ14:6)、ということだけは少しずつ理解し始めておりました。

どんな悪人でも赦(ゆる)される、愛のイエス様でありましょう。しかし、何でも無条件に赦してかわいがる溺愛が愛なのではないのでしょう。時に激しく叱責し、逆らおうものなら傷を負う、とげのあるむち、それがイエス様なのでしょうから。私は大切にしていた本『ユダの星』を庭に埋めて捨てました。

私の父も母も、それは完全ではありませんでした。それもこのような精神病者の娘を持ち、どんなに夢や希望がくじかれたことでありましょう。しかし、‘生きていけない’ といった強固な思いは少しずつ、‘生きなきゃいけない。そして幸せにならなければならない’ そのような思いに変えられてゆきました。それは自分のためというよりも、周りの人たちのために ‘きっと幸せになってみよう。それが、イエス様の道である’ そう考え始めたのです。

「なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである」。そのようにサウロに言った言葉には続きがありました。「さあ、起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたがわたしに会ったことをあかしし、これを伝える務めに、あなたを任じるためである」(使徒26:16)

私はそのみことばを、心に留めました。「私でも、立ち上がることができるでしょうか。イエス様。こんな弱い私でも、立ち上がり歩き出すことができるでしょうか」。そんなふうに、私は主に力を求め始めたのです。

私はひきこもりの、20代半ばでありました。

*

私はすみれ時計の中から、その頃の私を見つめていました。そして思い出しておりました。病の最中もそれは苦しいものですが、治りかけていくときが最も苦しいのだということを。病のうちは身を横たえて耐えていればよいですが、そこから立ち上がり、歩き出すことがどれほどに苦しくあることでしょうか。

罪の病も同じことです。罪の最中にいるときはどんなに楽なことでしょう。何をしても開き直っていられるのですから。しかし、罪から離れようとしてからが、とても難儀な道のりです。長い暗やみの生活で、心はねじ曲がっておりますし、人のせいにしたりして、楽なほうに逃げようとする人間本来の習性も、人一倍強くあるのですから。その戦いは、今なお継続中なのです。

とおい記憶の旅をして、ようやくベッドから起き上がりました。今日はちょっと頑張りました。夕食もいつもの簡単キットではありますが、お野菜をたくさん足して、味付けも凝らしてみようとしておりました。そんな台所に、夫の帰宅を知らせるチャイムが響き渡りました。私は子どものように玄関に駆け寄って、夫に報告を始めました。

「今日は少し頑張ったの。トイレ掃除もしたし、台所掃除もして、洗濯もして畳んでしまったの。それにお料理も、少し凝ったものを作ったの」。すると夫は眉間にしわを寄せて、悲しそうな顔をしたのです。「無理をしては駄目じゃないか・・・ゆっくり休むことが君の仕事なんだからね」

・・・難しいものです。神様も、「立ち上がって歩け」と言われたかと思うと、「あなたがたは、人を避けて寂しい所へ行って、しばらく休むがよい」(マルコ6:31)ともおっしゃられる。しかしどちらも、私を愛しておっしゃられる言葉です。立ち上がって歩くのも、一人静かに休むことも、どちらも私に必要であるが故、私を愛されているが故であるのですから。

私は、愛される喜びに満たされて、歌を歌いました。

♪主よ 主よ
私の主 イエス様
この地が 据えられた日に おられた方
私の名前を たなごころに刻まれて

世界は あなたとともに
うめいています 苦しんでいます
私も 心を絞り 泣いています

でも あなたが 夜ごとに
私のもとへきて ミルラの香りを携えてきて 慰めてくださる
あなたの 土埃の香りが 煙るわ

イエス様 あなたを お慕いしています
それは あなたが私を あなたの懐に隠して
苦しみの時に 守られたからです♪

(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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