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至高のカウンセラー 穂森幸一(187)

2021年7月15日19時26分 コラムニスト : 穂森幸一
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そこでふたりは話し合った。「道々お話しになっている間も、聖書を説明してくださった間も、私たちの心はうちに燃えていたではないか。」(ルカ24:32)

イエス・キリストが十字架にはりつけになり、キリストの弟子たちは指導者を失ったことで右往左往し、精神的にも落ち込んでしまいます。キリストが以前、説いておられた十字架の意味や復活のことなど完全に抜け落ちている状態でした。

2人の弟子は落ち込んだ状態のまま、エルサレムからエマオに向かっていました。暗い顔つきで話し合っている弟子たちに姿を隠された復活のキリストが寄り添われました。キリストは道中、2人の心を受け止めながら、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全体から分かりやすく解き明かし、その心を包み込まれました。これこそがカウンセラーとしての姿ではないかと思います。

私は幼少期に股関節に異常があったためなのか、3歳になるまで立って歩けなかったと言われています。その影響か運動能力が劣り、対人関係にも難があり、今日流の表現ではコミュニケーション障害だったと思います。小学校入学時に数も数えられず、自分の名前も書けないというのですから、どれだけの落ちこぼれだったのかと思います。

しかし、小学校4年の時、転機が訪れます。あまりにも学校の授業についていけないのを不憫に思った父親が家庭教師をつけてくれます。この先生は普通とは違う教え方を試みていました。宿題に四苦八苦していると、「宿題ができないのを気にしなくていいよ。できただけ学校に持って行きなさい。そして分からないところは分かりませんと教師に伝えなさい。先生の教え方にも問題があるんだから」と言うのです。

そして、まず本に親しむことを教えてくれました。「本は手に持って感触を楽しみなさい。文字を読もうと思わないで、まず挿絵や写真を眺めなさい。興味がありそうだったら読んでみなさい」と言っていました。勉強は部屋の中でするのではなく、動物園に連れて行ってもらって動物の生態について教えてもらい、名所旧跡を訪ねて、岩などに手で触れさせてもらっていました。また、時には大学の化学実験室で簡単な実験を見せてくれました。無色の2つの液体を混合したら、色が現れたり、ある薬品の上に別な薬品を振りかけたら火花がでたりする様子に興奮していました。

この家庭教師の独特の指導のおかげかいつの間にか読書が大好きになっていました。また、気が付けば成績も上がっていて、親も驚いていました。本の虫となった私はいつの間にか学校の図書館の本をほとんど全部読み、宣教師から寄贈されていた聖書にも触れることができました。

幼少期のコミュニケーション障害は大人になっても影を落としているというのを感じていましたが、なかなか適切なカウンセリングに出会うことがありませんでした。後に米国の教会で研修の機会が与えられたときに、主任牧師に自分の正直な状態を話しましたが、カウンセリングに対して恐怖心もあることを付け加えました。私の研修先の教会のメンバーにカウンセラーがいましたが、その方は隣町のキリスト教病院で働いていました。そして週1回、そのカウンセラーを訪ね、病院の職員食堂で一緒に食事をしてくるように言われました。時には4人のスタッフと一緒に食事をし、心の中にあるものを引き出してもらったように思います。ある時、カウンセラーがアル中患者のカウンセリングに同席するように求めてきました。他人を鏡として自分を見るためだったと思います。こういうことを3カ月近く続けました。

そして、グラスバリーという所にカウンセリングセンターがあるけれど近くにきれいな湖や森、牧場などがあって目の保養になるから行かないかと主任牧師に誘われました。そこの施設では、引きこもりや登校拒否の子どもたちが動物との触れ合いを通して治療を受けていました。

カウンセリングセンターに到着するとスタッフが出迎えてくれて、施設を案内してあげようと言ってくれました。そのスタッフと並んで歩きながら、牧場を見学し、森の小道や湖の畔を2時間ほど散策しました。歩きながらいろいろなことを尋ねられ、お話に夢中になっていたら、いつの間にか2時間経過していました。そうするとそのスタッフが「あなたのカウンセリングはすべて終わりました」と宣言したのです。今までのカウンセリングの締めくくりがこの2時間の対話だったのです。

恥ずかしながら、私はカウンセリングだと気付かないまま、ディープなカウンセリングを受けていたのでした。米国ではカウンセリング料は決して安くないし、ランチも何度もご馳走になっています。多額の支払いが発生するはずなのですが、「すべて支払い済みです」ということでした。

私は若い時に交通事故を経験していてその後遺症に苦しめられ、鎮痛剤をいつも所持していないと落ち着かない状態でしたが、教会に来ておられたドクターの好意で治療を受けることができ、全く薬にも頼らなくてもいいように回復できていました。これも信徒の方の好意により無償で受けさせてもらえました。

日本への帰国が近づいてきたときは、感謝の気持ちでいっぱいになり、どうやってお返ししたらいいのかと思い悩んでいましたが、日本に帰ってそこで奉仕することでお返しになりますというありがたい励ましを受けました。帰国してからは教会で講座を開くだけでなく、一般の人々のために結婚カウンセリングの分野でお仕えできたことを感謝しています。

エマオへの途上の弟子たちに寄り添われたキリストは至高のカウンセラーです。そして今日でも私たちに寄り添ってくださり、必要に応じて助けと導きを与えてくださいます。

ですから、私たちは、あわれみを受け、また恵みをいただいて、おりにかなった助けを受けるために、大胆に恵みの御座に近づこうではありませんか。(ヘブル4:16)

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◇

穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

株式会社カナルファホームページ
穂森幸一牧師のFacebook

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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