バチカン、マカリック元枢機卿の性虐待報告書発表 歴代教皇の対応も詳述

2020年11月17日23時11分 印刷
+セオドア・マカリック
元シントン大司教のセオドア・マカリック元枢機卿=2008年(写真:World Economic Forum)

バチカン(ローマ教皇庁)は10日、未成年者に対する性虐待などにより聖職を剥奪された元ワシントン大司教のセオドア・マカリック元枢機卿(90)に関する調査報告書(英語)を発表した。ローマ教皇フランシスコの指示によって作成されたもので、バチカン国務省が2年かけてまとめた。報告書には90人以上の供述が記されており、約450ページにわたる膨大なものとなっている。

報告書は、3代前の教皇パウロ6世から現教皇フランシスコに至るまでの歴代教皇の対応も詳述されている。それによると、パウロ6世が1977年、当時司祭であったマカリック氏をニューヨーク大司教区の補佐司教に任命した際には、まだ疑惑は報告されていなかった。その後、次代教皇のヨハネ・パウロ2世は81年、マカリック氏を東部ニュージャージー州のメタチェン司教に、86年には同州のニューアーク大司教に任命した。この時点においても信ぴょう性のある疑惑は報告されておらず、マカリック氏の司教としての働きを称賛する声が多かったという。

しかしその後、87年にマカリック氏がある司祭と性行為を行い、自身にも性行為を行おうとしたと、元メタチェン教区所属の司祭が告発。92~93年にはマカリック氏が「おいたち」に性虐待を行ったと告発する匿名の手紙が、米国カトリック司教協議会や駐米教皇大使、米国内の複数の枢機卿らに送られた。この他、メタチェンとニューアークの司教館で若い成人男性と、またニュージャージー州のビーチハウスで成人の神学生とベッドで共に寝ていたことも確認された。

これらの疑惑は、当時のニューヨーク大司教ジョン・オコナー枢機卿が99年10月、書簡にまとめて駐米教皇大使に送付。ヨハネ・パウロ2世にも報告された。これを受け、ヨハネ・パウロ2世はニュージャージー州内の司教4人に対する書面による聞き取り調査を指示。この調査は2000年5~6月に行われ、マカリック氏が若い成人男性と共に寝ていたことは確認できたものの、そこで性行為が行われていたことを明確に示す報告はなかった。

一方、マカリック氏は00年8月、オコナー枢機卿の申し立てに反論する書簡を、教皇の特別秘書であった司教に送付。マカリック氏はその中で「この70年間の人生において、老若男女を問わず、聖職者や信徒と性的関係を持ったことは一度もない」と疑惑を全面否定した。また、神学生とベッドで寝たことは「軽率」であったと認めたものの、性行為は否定。匿名の手紙については、政治的動機によるものだと一蹴した。報告書は直接の証拠はないとしつつも、ヨハネ・パウロ2世は、ポーランド時代に司教らを貶めるため虚偽の疑惑が使われたことを経験しており、その経験がマカリック氏の主張を受け入れることに一定の影響を与えた可能性があるとする見解を示している。

この他、マカリック氏の性行為を告発した司祭は、その司祭自身が10代の少年2人に対して虐待行為を行っており、信頼できる情報提供者としては扱われなかった。

マカリック氏はこうした疑惑が指摘されていながらも、00年11月にはワシントン大司教に任命され、01年2月には、教皇に次ぐ地位にある枢機卿に任命された。

次代の教皇ベネディクト16世が05年4月の就任当初に知り得ていた情報は、ヨハネ・パウロ2世が保持していたものとほとんど変わらなかった。しかしその後、マカリック氏の性行為を告発していた司祭に関する新たな情報が発覚。教皇庁は急きょ、後任のワシントン大司教を探し、マカリック氏に自発的な辞任を求めた。これを受け、マカリック氏は06年5月にワシントン大司教を辞任する。

ベネディクト16世はマカリック氏の処遇を迫られることになるが、教会法に基づいた処分は行わず、マカリック氏の良心に訴え、目立った行動を控え、移動を最小限にするよう指示する決定を行った。この指示は06年に口頭で、08年に文書でマカリック氏に伝えられた。こうした方法はベネディクト16世も承認していたが、マカリック氏の不正行為に対する事実認定に基づいた処分ではなく、聖職の行使を禁止するものでもなかった。一方、マカリック氏はその後も活発な活動を継続。一部は教皇庁も承認するものだった。

その後、メタチェン教区の別の司祭が、91年にマカリック氏との間で明らかな性行為があったと訴えるが、調査は行われなかった。またマカリック氏が高齢であったことや、引退した身であったことから、13~17年までの間、マカリック氏に対する06年と08年の指示について、教皇庁側が言及することはほとんどなかったという。

現教皇フランシスコは13年3月に就任してから17年まで、マカリック氏の疑惑に関する文書は誰からも提示されなかった。ワシントン大司教就任前に疑惑が取り沙汰されたことは知らされていたが、疑惑はすでにヨハネ・パウロ2世の時代に検証されていると考え、またベネディクト16世の時代にはマカリック氏が積極的に活動していたことを知っていたことから、再検証の必要を感じていなかったという。

しかし17年6月になって、マカリック氏が1970年代初頭に未成年者に対して性虐待を行っていたとする告発が出てくる。この告発が信ぴょう性のあるものだと判断されると、教皇フランシスコは直ちにマカリック氏に枢機卿の辞任を要求。マカリック氏は08年8月に枢機卿を辞任した。さらにバチカン教理省は19年2月、マカリック氏が職権を濫用し、未成年および成人と第6戒(姦淫〔かんいん〕してはならない)を破る罪などを犯したとして、聖職者としての地位を剥奪する処罰を決めた。

公営のバチカン・ニュース(日本語版)によると、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は声明で「(報告書の)量と多数の資料、その内容からも分かるように、これは真理の追究に動かされたものです」とコメント。「苦しみには、希望の眼差しが伴います。このようなことが二度と繰り返されないためには、より効果的な規則とともに、心からの回心が必要です。福音を告げる、信頼に足りる司牧者たちが必要です。これらは『わたしを離れては、あなたがたは何もできない』というイエスの言葉に信頼しつつ、ただ聖霊の恵みによってのみ可能であることを、私たちはしっかり自覚しなくてはなりません」と語った。

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