私の語学学習経験と『古典ギリシア語入門』 CD付きの画期的な入門書

2019年12月13日10時31分 執筆者 : 臼田宣弘 印刷
+私の語学学習経験と『古典ギリシア語入門』 CD付きの画期的な入門書
池田黎太郎(れいたろう)著『古典ギリシア語入門』(CD付き)(白水社、2018年5月)

初めに、私自身の語学学習の経験について伝えしておきたいと思います。私は英語学習に挫折した者です。英語の学習については、中学生になるまで特別なことはしていなく、中学入学から始めました。英語の授業は、中学2年生まではとても楽しかったです。ところが3年生になると、まったく面白くなくなりました。英語を使うための学びではなく、受験のための学びになったからです。

高校に入学してからは、その傾向がさらに強くなりました。英文法の授業がありましたが、生きた学びではありませんでした。大学入試には意味があるかと思われましたが、私は大学進学の意思がない高校生でしたので、高校の英語の授業は自分にまったく関係ないものになりました。私はその段階で、英語の学習を放棄しました。このことを正当化することはできないと思います。もう少し、世の既成の流れの中に身を置ける人間であればよかったのではないかとも考えます。

高校卒業後、何か自分にふさわしいことを学べないかと模索して、音楽専門学校に進みました。この学校では、歌曲のためのイタリア語とドイツ語の学びがありました。これは私にとっては新鮮でした。イタリア語やドイツ語ができるようになったわけではないのですが、「歌うため」という明確な目的を持った実践的な語学学習ができたからです。

音楽専門学校を卒業後、少々の社会経験を経て、1986年に神学校に入学しました。当然のことですが、神学校には聖書原典を読むための、古典ギリシャ語と古典ヘブライ語の授業があります。当時の神学校で、この2つの授業が充実していたかというと、正直そうはいえなかったと思います。しかし牧師になって、聖書をひもときながら、毎週日曜日に礼拝説教をするためには、この2つの言語に、どうしてもかじりつかねばなりませんでした。両方とも神学校では単位だけは何とか取得したものの、実用レベルとはいえない状態でした。

以前、クリスチャントゥデイで韓国語の教本について書評を書かせていただき、その際にも触れさせていただきましたが、私は神学校卒業直後に訪問した韓国のとりこになり、独学での韓国語学習を始めました。そして、英語学習に挫折した私にとって、韓国語学習は語学学習への解放の機会となりました。何しろ隣の国ですから、短い休暇を利用して安い旅費で行くことができるわけです。年に一度は韓国に足を運ぶようになりました。韓国語という言語は、私にとって、生で触れることができる外国語となりました。

そのようにして韓国語学習を行いましたが、学習と同時に、私なりの語学学習観というのも形成されたように思えます。それは「聞くこと」と「使うこと」を中心とした学習です。これはあくまでも個人的な体験によるものであって、普遍化できるものではないかもしれませんが、その後私は、韓国語学習で得た学習観をもとにして、ロシア語などの語学学習を、聞くことと使うことを中心にして行っています。

しかし、牧師という職業柄、特にクリアせねばならないのが、神学校で中途になっていた古典ギリシャ語と古典ヘブライ語の学習でした。この2つは、牧師にとってやはり必要な言語なのです。2000年以後、ギリシャ語対訳聖書や、ギリシャ語・ヘブライ語のパソコン用ソフトが普及し、実はこの2つの言語をマスターしていなくても、聖書原典を「読める」ことはできるようになりました。しかし、実際に聖書を原典から読み解くためには、それだけでは不十分で、この2つの言語を本格的に学ぼうと思い、近年は特にヘブライ語の学習に時間を裂いてきました。その際、とても良い教材となったのが、『ニューエクスプレ古典スヘブライ語』(白水社)でした。この本は、CD付きの聖書ヘブライ語の学習書で、旧約聖書の良く知られた箇所が、ユダヤ人の朗読で収録されています。これを繰り返し聞くことによって、ヘブライ語に親しめるようになりました。

そして今は、古典ギリシャ語を学び直したいと考えています。ただ、神学校で学んだ「新約聖書の中のギリシャ語」という範疇(はんちゅう)ではなく、もう少し広く、一つの言語として、古典ギリシャ語になじみたいのです。古典ギリシャ語の対象は、新約聖書だけではありません。七十人訳といわれる旧約聖書の翻訳書も、古典ギリシャ語で書かれています。旧約聖書の中でも、雅歌のような寓意(ぐうい)的な書を読む際には、七十人訳聖書でのその書を読むことによって、隠されているものが見えてくる場合があります。

そんな折、手にしたのが、この『古典ギリシア語入門』(白水社)です。この本の大きな特徴は、古典ギリシャ語の学習書としては日本では恐らく最初のCD付きであるところです。CDには、例文の朗読などが収録されており、耳で慣れ親しむことができるのです。人称や動詞、形容詞の文法事項は、当然ながら新約聖書ギリシャ語の学習とも重なりが多いです。耳で聞くことによって、語尾の変化に適応していくことは、私の語学学習観にはなじみ、新約聖書ギリシャ語の学習にもプラスになります。この本と、付属のCDで学習することによって、より深い古典ギリシャ語の世界に入っていければと願っています。

■ 池田黎太郎(れいたろう)著『古典ギリシア語入門』(CD付き)(白水社、2018年5月)

臼田宣弘

臼田宣弘(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。愛知牧師バンドのメンバー(キーボード担当)

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