Skip to main content
2026年1月26日14時26分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
混血児の母となって―澤田美喜の生涯

混血児の母となって―澤田美喜の生涯(最終回)母の心

2017年8月22日06時34分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:澤田美喜

ホームは次第に大きくなり、グルー大使の寄付で建てたベビー・ハウスに続いて、幼児のための住居が3棟、ジョセフィン・ベーカーとアリス・ジョーンズ夫人からの贈り物である男子寮が2つ、丘の上に建てられた。また、カンタベリー大司教からの援助によって、見晴らしのよい丘の上の平地には、中学校と男子、女子の職業学校が建てられた。

そこをのぞくと、女の子は世の中に出ても困らないようにと、洋裁、料理、生け花、美容、編み物といったさまざまな技術を身につけるために、熱心に教師について学んでいた。また、木工作業をやっている男子の教室からは、つちの音が高らかに響いてくるのだった。

ホームの門を入った所には、教会、幼稚園、小学校が並び、ここにあの「ドクター・バナードス・ホーム」に勝るとも劣らない施設として、美喜の生涯かけた理想が完成したのだった。

ある時、美喜がアメリカの養父母の所を訪れると、母となった人がこう言った。「私はこの子を育て、深い愛情を持ちました。片腕を切られても手放せません。その愛情を私に譲ってくれた日本のお母さんに感謝のしるしを届けてください」

そして、小さなリボンのかかった箱を渡した。美喜はそれを大切に持って日本に帰り、早速生みの親に届けることにした。

その母は、ある料理屋で働いていたが、迷惑そうな顔をして、何の用かと尋ねた。「子どもさんのことで――」「もうあの子は手放しました。今じゃ遠くに養女に行って、あたしとは何の関係もありません」

しかし、美喜が育ての親から預かった箱を手渡すと、彼女は震える手で箱にかけられたリボンをほどき、中を開けた。すると、バラの花の造花と一緒に、木彫りの小さな額が出てきた。そこに、ラケットを抱えた健康そうな少女がにっこり笑っている写真がはめ込まれていた。

「これがあの子・・・」。母親はしばらく食い入るようにそれを見つめていたが、やがてぴたりと美喜の前に両手を突くと、額を畳にこすりつけた。それから、溢れる涙とともに、はるかかなたに向かって手を合わせた。

「アメリカのお母さん、ありがとうございます。ありがとうございます」。そうつぶやき、涙に濡れた顔を上げて言うのだった。「私の所に置いておいたら、この子はこんなに幸せになれませんでした」

そして、両手でしっかり額を抱えて子どもに語りかけた。「よかったねぇ、おまえ。アメリカで幸福になって。母さんはうれしいよ」

これが、母の心であった。子を思う母の気持ち――それは、世界中どこでも同じであり、どんな人の中にも母としての思いはあることを、美喜は思うのだった。

同じような例を、彼女は幾つも見た。生後1週間にもなる子どもが門の前に捨てられていたが、その子の懐に「情け深いお方へ。この子をお願いします――生活に疲れた母より」と書かれた紙切れが入っていた。そして、それは涙のにじんだ跡があり、筆跡も乱れていた。

また、駅に置き去りにされた乳児の懐にも、「このかわいそうな子の葬式に使ってくださいまし」と涙のしみだらけの手紙が押し込まれ、千円札が折りたたんで入っていた。どんな母でも、1度おなかを痛めた子を忘れることはできないのである。

初めはあざけりの気持ちで美喜のやることを見ていた人々も、ようやくその仕事の貴さを理解し始めた。また、国内においても人種的偏見というものが少しずつ薄れてゆき、マスコミも好意的に「エリザベス・サンダース・ホーム」のことを報道するようになった。澤田美喜は、1960(昭和35)年、アメリカでエリザベス・ブラックウェル賞を受け、1963(昭和38)年には37年度朝日賞を受賞した。

*

かくして、「エリザベス・サンダース・ホーム」は国内外のすべての人の共感を得、温かな支援のうちに大きく成長していった。ホームで巣立った子どもたちは、たくましく海を渡り、各国に移住して、そこでよき市民として明日の世代を担っていこうとしていた。

1980(昭和55)年5月。美喜はすべての仕事をなし終え、しばしの休息をとるために、マジョリカ島に旅行をした。しかし、過労の積み重なりから旅先で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。彼女の遺体は、あんなにも愛した混血児たちの手により静かに埋葬された。79歳であった。

*

<あとがき>

エリザベス・サンダース・ホームは、国内外の協力者に支えられ、ようやくその根を日本の荒地に下ろすことができました。混血児たちをアマゾンに移住させる傍ら、美喜は里親になってくれたアメリカの養父母の所を訪ねることを忘れませんでした。

そして、血はつながっていなくても、両親と子どもが共に本当に幸せになっている姿を見て心から満足し、神に感謝するのでした。そして、彼女は強い確信を与えられます。それは、いかなる事情があろうと、また生活上の理由から子どもを手放さざるを得ない状況になったとしても、子どもの幸せを願わない母親はいない――ということでした。この「母の心」こそ、世界中の女性に与えられている神からの贈り物なのです。

今回で「澤田美喜の生涯」は終わりになります。多くの方々の励ましとお祈りを心から感謝いたします。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:澤田美喜
  • ツイート

関連記事

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(11)扉の向こうに道が

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(10)試練は火のように

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(9)踏みにじられる幼い命

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(8)岩崎家の没落

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(7)太平洋戦争と愛する者たちの死

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(240)一神教と多神教の違いを軽率に扱いたくない 広田信也

  • 「罪のない最も弱い存在を殺す行為」 中絶反対を訴え行進、マーチ・フォー・ライフ

  • 「われわれは暗闇の中にいる」 抗議デモの拡大に伴うイラン人キリスト教徒の恐怖と孤立

  • 「ひふみん」で親しまれた加藤一二三氏死去、86歳 カトリックの将棋棋士

  • 神にあって歩む人生の生き方 万代栄嗣

  • 無料オンライン講座「キリストの基礎知識コース」第11期受講者募集 2月14日開講

  • ドニー・マクラーキン牧師の件で日本の皆さんに伝えたいこと

  • ワールドミッションレポート(1月25日):ジンバブエ 闇を照らす「紙の宣教師」

  • お薦めのボンヘッファー入門書3冊 映画を観て興味を持った人のために

  • ワールドミッションレポート(1月26日):タンザニアのマテンゴ族のために祈ろう

  • ドニー・マクラーキン牧師の件で日本の皆さんに伝えたいこと

  • 「ひふみん」で親しまれた加藤一二三氏死去、86歳 カトリックの将棋棋士

  • 世界最悪は北朝鮮、死者が最も多いのはナイジェリア 迫害国50カ国まとめた報告書発表

  • 無料オンライン講座「キリストの基礎知識コース」第11期受講者募集 2月14日開講

  • 「われわれは暗闇の中にいる」 抗議デモの拡大に伴うイラン人キリスト教徒の恐怖と孤立

  • お薦めのボンヘッファー入門書3冊 映画を観て興味を持った人のために

  • カトリックとプロテスタントが合同開催 キリスト教一致祈祷週間、18日から

  • 「信徒の友」「こころの友」などが休刊へ、日本キリスト教団出版局の事業整理・縮小で

  • 山上徹也被告に無期懲役の判決 安倍晋三元首相銃撃事件

  • 同志社前総長の大谷實氏死去、91歳 犯罪被害者支援に尽力

  • いのちのことば社元職員が不適切な会計処理、数千万円規模か 社長は引責辞任へ

  • いのちのことば社、元職員の不適切な会計処理巡る質問・意見への回答を公表

  • 米福音派の著名作家、フィリップ・ヤンシー氏が不倫を告白 執筆・講演活動から引退

  • 米のベネズエラ攻撃・大統領拘束に対する現地の福音派キリスト者の反応

  • ドニー・マクラーキン牧師の件で日本の皆さんに伝えたいこと

  • 「ひふみん」で親しまれた加藤一二三氏死去、86歳 カトリックの将棋棋士

  • 「信徒の友」「こころの友」などが休刊へ、日本キリスト教団出版局の事業整理・縮小で

  • 世界最悪は北朝鮮、死者が最も多いのはナイジェリア 迫害国50カ国まとめた報告書発表

  • 英ポルノ女優リリー・フィリップスさんが受洗 心からの回心?売名行為? 真意巡り議論

  • 日本聖書神学校、2026年度から「基礎科」新設

編集部のおすすめ

  • 上智大学キリシタン文庫が初の貴重資料展、キリシタン版や大友宗麟書状など30点を公開

  • 給食で子どもたちに笑顔と教育の機会を 最貧国マラウイを支援する「せいぼじゃぱん」

  • 日本聖書協会が恒例のクリスマス礼拝、聖書普及事業150年を感謝しコンサートも

  • 「神の霊によって、主はこの国を造り替えられる」 日本リバイバル同盟が「祈りの祭典」

  • 15人の演者でマルコ福音書を再現、観客をイエスの物語に引き込む「マルコドラマ」

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • Threads
  • RSS
Copyright © 2002-2026 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.