Skip to main content
2025年7月6日06時46分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
混血児の母となって―澤田美喜の生涯

混血児の母となって―澤田美喜の生涯(11)扉の向こうに道が

2017年7月21日18時54分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:澤田美喜

聖公会の援助打ち切りは、ホームに決定的な打撃を与えるものだったが、それとともにアメリカ国内において心ある人々の同情を煽り立てる結果にもなった。澤田美喜という1人の日本人女性に対してあまりにもあくどい中傷や批判が浴びせられたので、かえってそれが一般市民の怒りを買うことになり、聖公会以外の教派に属する人々は、続々と激励の手紙や寄付金を送ってよこした。

また日本国内においても、美喜の孤児救済の事業が紹介されると、それが文化人の間に広い共感を呼び起こし、積極的に寄付金を送ってきたり、訪問してくれる人も出てきた。

しかし、その頃、美喜は過労から病床に就き、熱に浮かされていた。ホームの子どもたちは、泣きながら病床に集まり、彼女にすがりついて叫んだ。

「ママ、死んじゃいや!みんなのママ!」。その声がかすかに美喜の意識の底に届いた。子どもたちのために早く良くならなくては――と思いつつ、熱に喘(あえ)いだ。その時、彼女は誰かに手を強く握られたような気がして、目を開いた。そして、忘れもしない笑顔がそこにあるのを見た。

「ジョセフィン・ベーカー!」。あの良き友、黒人女優のベーカーが心配そうにかがみ込んでいるではないか。「どうしました? あなたが今倒れてしまったら、子どもたちはどうなるのです?」

ベーカーは美喜の手をなでさすると、ぶ厚い封筒を握らせた。それには、彼女が日本で行った興行の出演料がそっくり入っていたのである。そして、彼女はホームの子どもたちを集めると、キャンディーやチョコレートを配り始めた。

「私たちはいつまでもお友達です。忘れないで」。ベーカーは帰るとき、もう1度しっかり美喜の手を握りしめ、その際、2人の子どもを養子として引き取っていった。

やがて病気が回復すると、美喜は3カ月ほど資金集めにアメリカに講演に行くことにした。ありがたいことに、保育士や指導員、それに調理士や雑役夫などがたくさん来てくれて、留守を預かってくれることになった。

出発に先立ち、彼女は父の久弥のもとを訪ねた。彼は本郷の家を神学校に売り、千葉県成田近くの農場に引っ込んでいた。彼は「折半居住」の頃から米軍に嫌がらせをされたことが原因で心臓病を患い、床に就いていた。

美喜は3カ月だけ旅行すると告げたが、父はその心の中を見抜いたように言った。「もうアメリカに行っても、彼らを非難してはいけないよ。すっかり忘れて子どもたちのことだけを考えて仕事をしておいで」

美喜は、はっとした。実はアメリカの友人に父が進駐軍によって受けた恥辱と精神的暴力について訴えようと考えていたのだ。しかし父は、そのような悪感情を越えて、和解の方向に進まない限り、美喜の事業は成り立たないのだということを教えてくれたのであった。

アメリカに着くと、多くの教会やロータリー・クラブ、ライオンズ・クラブなどの人々が温かく迎えてくれた。美喜は講演、ラジオやテレビなどのキャンペーンに飛び回った。アメリカ国内において、彼女の仕事に対する理解は少しずつ一般の人々の間に広まっており、以前拒んだ人や中傷したりした人はそれを恥じ、新たな「エリザベス・サンダース・ホーム」に対する力強い協力者となっていた。

美喜はこれらの大衆に支えられ、混血児がアメリカに入国できるような1つの運動を始めた。各地を歩くうちに、子どもがほしいと願っているのに与えられない幾組かの夫妻を見て、子どもたちがこのような家庭に引き取られるように「養子縁組」制度を設立させようと考えたのであった。

国連に出向き、事情を話すと、最高責任者にようやく会うことができたが、彼はアーレン大佐という人物に紹介状を書いてくれた。驚いたことにこの人物は、日本国内の立川基地にいて、早速帰国した美喜は「養子縁組」の許可を取ることができたのであった。そして、それから程なくして、6人の混血児をサンフランシスコのある裕福な家庭に養子として送り出すことに成功した。

しかしこの時、父久弥の容体が急変したとの知らせを聞き、彼女は父のもとに飛んでいった。

「おまえ・・・何をぐずぐずしているのだ」。父は目を開いて微笑した。「こんな病人のことなど気にするんじゃない。おまえはこの仕事に身をささげたんだろう」

美喜は後ろ髪を引かれる思いで6人の子どもをサンフランシスコに連れて行き、迎えに来た養父母の手に無事託すことができた。そして、飛ぶように帰って来てみると、父久弥はすでにこの世の人ではなかった。

*

<あとがき>

混血児のためのホームを造るという神から託された事業は、最初から困難がつきまといました。美喜は資金調達のために駆け回った揚げ句、健康まで害してしまうし、何よりもつらかったのは、日本国内においてもアメリカにおいても、彼女の仕事を真に理解する者がなく、非難や中傷をぶつける人が数多くいたことでした。

しかし、苦難の扉をくぐり抜けたとき、そこに素晴らしい恵みが待っていました。アメリカの友人たちが再び励ましの手紙と献金を送ってくれるようになり、日本の社会の中でも少しずつ彼女の働きが理解され、文化人たちが主体となって支援をしてくれるようになったのです。

さらに喜ばしいことには、アメリカにおいて友人、知人たちが、混血児がアメリカに入国できるよう議会に働き掛け、「養子縁組」の制度を実現させてくれたのでした。私たちはしばしば重い扉の前でたじろぎ、希望を失うようなことがありますが、やがて神様がその扉を開けてくださるとき、その向こうにさらに素晴らしい世界を見ることができるのです。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:澤田美喜
  • ツイート

関連記事

  • 生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(1)動物の苦しみ

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 【聖書クイズ】ヨハネの黙示録で「冷たくもなく熱くもない」と言われた教会は?

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 苦しみというプレゼント 菅野直基

  • 聖書のイエス(12)「初めに、ことばがあった」 さとうまさこ

  • ワールドミッションレポート(7月6日):タイ 麗しきかな、良き知らせを告げる者の足は

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • 苦しみというプレゼント 菅野直基

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.