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イスラム国(IS)

モスル奪還、イラク首相が勝利宣言 破壊された市街と住民間の「信頼」

2017年7月11日18時43分 記者 : 内田周作
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関連タグ:イラクイスラム国(IS)国際キリスト教コンサーン(ICC)世界教会協議会(WCC)オラフ・フィクセ・トヴェイト
モスル奪還、イラク首相が勝利宣言 破壊された市街と住民間の「信頼」+
モスル旧市街で勝利宣言をするイラクのハイダル・アバディ首相=10日(写真:同首相のツイッターより)

イラクのハイダル・アバディ首相は10日夜(日本時間11日未明)、過激派組織「イスラム国」(IS)が拠点としていたイラク北部の都市モスルを解放したと発表し、正式な勝利宣言を行った。モスルは約200万人が住むイラク第2の都市だったが、ISが2014年6月に占拠し「国家樹立」を宣言。「首都」と称するシリアのラッカと共に、ISを支える2大拠点の1つだった。9カ月に及ぶ戦闘で市内は廃墟と化し、再建には多くの資金と時間が必要だ。一方、多様な宗教が共存する地域を襲った過激派の暴力は、それまで社会を支えてきた住民間の「信頼」にも大きな爪痕を残した。

「われわれは、モスルでダーイシュ(ISの蔑称)が樹立を宣言した偽りのテロ国家の失敗と崩壊をここで宣言する」。前日9日にモスル入りし、ツイッターで事実上の勝利宣言をしていたアバディ首相は、最後まで戦闘が続いた旧市街の解放を1日待ってから、正式な勝利宣言を行った。モスルの解放は、ISが占拠してから3年、米軍が支援するイラク軍などの有志連合が昨年10月に奪還作戦を開始してから9カ月を要した。アバディ首相は、イラク軍やイラク国民、また支援を受けた国々に感謝を表明。有志連合は声明で、「ISの壊滅に向けて決定的な打撃になった」と、モスル奪還がIS掃討で大きな意味を持つことを強調した。

一方、9カ月に及ぶ戦闘により、モスル市内は壊滅的な被害を受けた。人口が密集していた旧市街は、ISが住民を「人間の盾」にして最後まで抵抗した地区で、国連の推計によると、旧市街だけでも5千棟以上の建物が損壊し、500棟近くが破壊された。長さ180メートル、幅45メートルしかない小さな地区だが、再建には10億ドル(約1100億円)が必要とみられている。

モスル奪還、イラク首相が勝利宣言 破壊された市街と住民間の「信頼」
モスル西部の様子=3月27日(写真:Quentin Bruno)

モスルで取材をしている米ニューヨーク・タイムズ紙のラクミニ・カリマチ特派員はツイッター(英語)に、モスル市内の様子を写真や動画と共に投稿している。「米当局者は、モスルの戦いを第2次世界大戦の戦闘の激しさと比較していました。旧市街の光景は喜べるものではありません」。ISは空爆のターゲットになりづらいと考え、教会などに潜んでいたという。カリマチ特派員は、教会内部に転がる追撃砲弾や、自爆テロのために用意されたとみられる爆薬入りの子ども用のバッグの写真なども投稿した。

モスル奪還は、イラクのキリスト教徒たちにどう受け止められているのだろうか。キリスト教迫害監視団体の「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)は、「モスルの解放は、イラクの多くのキリスト教徒にとって確実に良い知らせ」であるとしつつも、将来は非常に不透明だと伝えている。

ICCによると、イラク北部のモスルやニネベ平原周辺は、キリスト教が2千年余りにわたって根付いていた地域だった。しかし、モスルのキリスト教人口は、03年には6万人だったのが、3万5千人にまで減ったと考えられており、市内にあった45の教会やキリスト教関連施設はすべてISに占領されたか破壊されたという。

ISのために、14年にイラクから避難したキリスト教徒のラベアさんはICCに、「モスルが完全に解放されたといいますが、政府は被害を受けた人々を助けるために何かをすべきです」「私たちの地域社会を再建するための費用を政府は負担するのでしょうか?」と問い掛ける。モスル近郊やイラクの他の地域では依然として戦闘が続いていることを指摘し、「モスルの解放は、イラクがISから完全に解放されたことを意味するものではありません」と言う。

モスル奪還、イラク首相が勝利宣言 破壊された市街と住民間の「信頼」
モスル市内の破壊された建物=6月13日(写真:EU / ECHO / Peter Biro)

また、首都バグダッドのカトリック司祭であるアルバート神父は、ISの占拠により、建物だけでなく、住民間の信頼も破壊されてしまったと話す。「モスルの住民の半数がISに加担しました」「2014年6月、キリスト教徒たちは(モスルの)市民がどのようにISを歓迎したのかを、たくさんの映像やソーシャル・メディアで見ています。どうして彼ら(ISを歓迎した市民)を信頼できるというのでしょうか」。イスラム教スンニ派が住民の多くを占めるモスルでは、シーア派主導の中央政府に対して不満が強く、反シーア派を掲げたISが現れた際、歓迎する人が多かったという。アルバート神父は、住民間の信頼が崩れ、共存することが難しくなれば、少数派のキリスト教徒は長期的な移住を考えざるを得ないと言う。

今年1月にイラクに代表団を派遣していた世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は10日、コメント(英語)を発表した。「非道で残酷なISの支配の縮小と排除を、正しい心を持つ世界のすべての人は確かに歓迎するべき」としつつも、これまでに計り知れない犠牲があったことに触れた。

そして、「武力自体は、ISの過激思想に打ち勝つことはできません。武力が唯一、または主なる対処法であるならば、モスルの解放は、暴力的な過激思想の新たな拡大と増大を生む手助けにしかなりません」とコメント。イラク政府や国際社会に対し、ISから解放された地域の再建のために、物理的なインフラ整備のみにとどまらず、すべての住民が平等に権利と尊厳を享受できる平和で安全な社会の構築に向け、努力するよう求めた。

関連タグ:イラクイスラム国(IS)国際キリスト教コンサーン(ICC)世界教会協議会(WCC)オラフ・フィクセ・トヴェイト
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