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生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(13)世界をつなぐ友情の輪

2017年1月20日10時57分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

1945年1月。シュヴァイツァーは70歳になった。すると世界はラジオ放送や彼の事業を支援するために作られた「ランバレネ財団」を通じてそのことを知った。

しかし、本人はその日も――聖日であるにもかかわらず――朝はヘルニア患者の手術を行い、その後2、3人の心臓疾患の者の手当てをしていた。午後になっても患者は続いてやって来たので、結局彼は夜まで病院にいることになった。

BBC放送は、電報で彼に特別放送がささげられることを知らせてきた。その夜、病院中の患者や医師、看護師たちはシュヴァイツァー夫妻の周りに集まって来て、一緒に耳を傾けていた。開け放した窓の前でヤシの葉がわずかに風に揺れていたが、息の詰まるような暑さを少しも和らげてくれなかった。

と、突然ラウンドスピーカーから神学者ナサナエル・ミクレムの声が流れてきた。そして彼は、おもむろにアルベルト・シュヴァイツァーの伝記を語り始めた。それと同時に、シュヴァイツァー自身が吹き込んだバッハのオルガン曲のレコードがゆっくりと流れた。

それは、あらゆる障害を越えて、まるで大寺院の中にいて彼自身がオルガンを弾いているように生々しく響いたのであった。アナウンサーは言った。

「シュヴァイツァー博士は、今この瞬間、ランバレネの病院内でこれを聞いておられます」

その時である。全ての距離が取り払われ、ロンドンの放送局にいる友人たちとシュヴァイツァーを支えるアフリカ中心部にいる友人たち、そして世界中の聴衆が全く1つとなり、友情で堅く結ばれたのであった。

4カ月後に戦争が終わった。ランバレネは平和になったが、以前と同じように仕事は続いていた。患者たちは引きも切らさずにボートに乗って来るか、草の茂ったジャングルの小道を通ってやって来た。

シュヴァイツァーは、長くランバレネ病院に奉職していた医者や看護師たちに、ヨーロッパにおける半年の休暇を与えて帰郷させた。そのために彼自身が負う仕事が倍増したのである。彼はすでに年老い、長年風雨にさらされて皮膚も黄色くなっていた。

彼は病院の管理をし、薬品の注文書を書き上げ、患者の回診を行い、難しい病人の相談に乗り、手術に立ち会った。この時すでに視力が、日常生活には支障ないものの、執刀することはもはや不可能な状態だったので、若い手術医に任せ、自分はその補助を務めていたのである。

仕事はこれだけでなかった。建物の設計を企画し、桟橋を作り、壁を塗るセメントを混ぜた。水揚げポンプのモーターが止まると修理し、黒人たちが移植したミカンの木が枯れそうになると心配し、もっと良い土地に移させた。あのオイエンボが残していった種が、もうこのように立派な木になっていたのである。

夜になると、シュヴァイツァーは石油ランプの下で手紙の返事を書き、著述の仕事をする。『原始林の病院』『植民地アフリカにおけるわたしたちの仕事』はこうした中で書かれた。

彼の書斎兼寝室は、家の中の箱のような部屋だった。隅にはオルガン用ペダルのついたピアノが据えられ、棚の中にはカモシカが寝ていた。その他ベッド1台、洗面器1つ、机1脚が収められている。

客が来ると、彼は椅子の1つに座り、客がもう1つに座る。蛇や大きな害虫が入ってこないように、窓には細かい網目の格子がはめられている。棚には書物や返事を出していない手紙、病院の備品がごちゃごちゃに入っており、机の上には手書き原稿が広げられている。

寝室には忠実な番人であるペリカンがいて、訪問客の頭を軽くつつく。彼のそばを離れない猿の夫婦ロミオとジュリエットは、ベランダに住居をもらっている。最後にテクラという名のイノシシが部屋の内外を見回り管理する中、シュヴァイツァーは3匹の犬と3匹の猫と一緒に戸口の前で眠るのである。

1949年。シュヴァイツァーは夫人を伴って米国コロラド州アスペンに到着した。「ゲーテ生誕200年祭」を記念し講演してほしいと招かれたのである。ここで彼はスペイン、フランス、ノルウェー、イタリア、オランダ、米国の著名な科学者、哲学者、詩人と交わり、友好を深めることができた。

彼はゲーテ講演をフランス語で行い、2日後にはドイツ語で行った。終わったとき、数百万もの人々が彼を一目見ようと楽屋に押し寄せた。彼らにとって、すでにアルベルト・シュヴァイツァーは1人の講演者ではなく、生きる希望をもたらす者、荒野から出て来た預言者そのものであった。

戦争に引き裂かれた国々は今1つとなり、「生命への畏敬」の思想の種は確実にその芽を出したのであった。

*

<あとがき>

シュヴァイツァーが70歳になったとき、激務の中にあってわずかな休息も取れない彼を慰めようと、BBC放送はある企画をしました。その日も、聖日であるにもかかわらず、押し寄せる患者の診療に追われ、昼食も取らないまま夜まで彼は病院に残っていました。

そして7時になったとき、突然スピーカーからシュヴァイツァー自身が弾くバッハのオルガン曲が流れ出し、司会者が彼の伝記を語り始めたのです。まさに、最高の誕生プレゼントでした。彼はどんなにうれしかったでしょう。この後、彼はいつものように深夜まで著述をし、イノシシやカモシカ、猿、そして3匹の犬と3匹の猫と共に戸口のそばで眠ったのです。

今や「生命への畏敬」の思想はヨーロッパ全土からアジアにも流れ、米国のコロラド州で彼が講演したときには、何百人もの人々が彼を一目見ようと会場に押し掛けたそうです。まさに、荒野から出て来た預言者を見るために、人々が集まってきたように。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
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